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第七十七話 「欠落」

Author: 4時間移動
last update Last Updated: 2025-12-09 21:44:24

 セーラとマリアは革命軍のキャンプにパトラを残し、物言わぬカイの遺骸を背負って神界へ向かおうとしていた。

 荷をまとめ、短い別れを告げたその瞬間。

 ──ザザッ。

 曇天の空に、画面の乱れたノイズが走った。

 薄い雲を裂くように、知らない都市の光景が一瞬だけ重なる。

 高層ビル。混雑した交差点。夕暮れの街並み。

 空のどこにも無いはずの場所が、空に投影されていた。

『……速報……』

 空のノイズの端に、日本語の文字列が滲むように浮かんでは消えた。

「また……現実世界の……映像?」

 マリアが息をのむ。

 次の瞬間、映像は砂嵐に崩れ落ち、

 雲の切れ間に異常なシステム文字がちらついた。

『外界ログ干渉検知:神界層との境界が不安定です』

 風が吹くと同時に、それらは何もなかったように霧散した。

「どういう……?」と問う暇もない。

 カイの遺骸の重みが、いま戻るべき場所を思い出させる。

「行こう。今は……カイが先」

 セーラとマリアは顔を上げ、光の階段へと歩き出した。

 現実の異変に目を奪われながらも、止まることはできなかった。

 そうして辿り着いた神界。

 霧のような光が漂い、再構築中の世界は不安定な息遣いをみせていた。

「ここなら……カイを……また蘇生できるかもしれない」

 セーラの声は掠れ、だが覚悟に満ちていた。

「でも……天使たちは…誰もいないのね……」

 マリアは小さく呟く。背中のカイの冷たさが、二人の胸を重く押さえつけた。

 神界は無言の重みを帯び、白く冷たい光が微かに差し込む。

 空間のざわめきが耳に届き、二人の心拍に微妙な違和感を残す。

 霧のように淡く光る神界の門。

 再構築途中の神界は、以前の輝く宮殿ではなく、破片化した法則や断片化した演算式が空中で狂ったように煌めいていた。

 セーラは光を見つめ、唇を噛む。

「……ここまで来ても、神界の制約は消せない……」

 ルシフェルプロトコル……唯一神の力さえ縛る法則。

 それを破ることは何人たりともできない。

 光が肌を刺すように冷たく、心を重く沈める。

 二人はダメ元で光の円にカイを抱き上げる。

 肩にかかる重みは冷たく、鼓動も呼吸も感じられない。

「カイ……戻って……」

 セーラは深く息を吸い、胸の奥の痛みに耐えた。

 マリアも静かに呼吸を整え、全神経を集中する。

 だが光は瞬くだけで、カイの身体に反
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