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第20話

Autor: 魚ちゃん
明里は夜8時過ぎまで研究所に残っていた。

凪が異動になったため、いくつかのデータについて確認が取れず、二人は一時間以上も音声通話をしていた。

そして通話を終えて初めて、潤からメッセージが来ていることに気づいた。

そこにはただ一言、【家へ戻ってこい】とだけ書かれていた。

家?

家とは、安らぎの場で、温かく、和やかで、幸せな場所であるはずだ。

だが、そこは彼女の家なのだろうか。

かつて明里は、潤のいる場所こそが自分の家だと思っていた。

しかし今、潤が彼女にもたらすのは、苦痛と傷だけだった。

もう、帰る家などなかったのだ。

荷物をまとめて階下へ降りると、そこにはまた潤の姿があった。

今の明里は彼を見ても、喜びはなく、ただ胸が痛むだけだった。

前回、潤が迎えに来て、プレゼントを渡し、甘い言葉で自分をなだめた。

そして家に帰れば、自分は彼の求めるままに情熱的に応じてしまった。

潤はきっと、自分のことを扱いやすい女だと思っているのだろう。

扱いやすいどころか、安っぽい女だと。

だから、彼はまた来たのだ。

だが今回は、明里は脇目もふらず、まっすぐ自分の車に乗り込んだ。

潤は彼女の車の横に立ち、窓を叩いた。「降りろ!」

明里はためらうことなく、エンジンをかけた。

バックミラーには、潤が固く唇を結び、眉をひそめているのが見えた。

それはいつもと変わらない、冷たく冷ややかな表情だった。

まるで、明里の理不尽な振る舞いを無言で非難しているかのようだった。

明里が車を走らせてからしばらくして、潤の車がすぐ後ろについてきていることに気づいた。

彼女は力が抜けたように笑った。胸の奥からこみ上げる切なさに、押しつぶされそうだった。

それでも、明里は二宮家へと戻った。

この時間、湊夫婦と隼人夫婦も在宅していた。

明里が車を停めるとすぐに、潤の車も入ってきた。

彼女が車をロックして家に入ると、潤もすぐ後ろにいた。

明里は振り返りもせず、口も利かず、玄関で黙って靴を履き替えた。

真奈美は潤の姿を見ると、いくらか声のトーンを落とした。「よくもまあ、戻ってこれたものね。悪いことをしたっていうのに、反省の色もなし。村田家ではそういうふうに教わったのかしら?」

明里は真奈美の言葉には応えず、潤を振り返った。「私に謝罪させるために連れ戻しに来たの?わ
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