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2話

Auteur: 東雲桃矢
last update Date de publication: 2026-05-08 04:46:32

「レイス、子供に手をあげるなんて、何を考えてる!」

「それも私の子に。いくら男児を産めずに冷遇されてるからって、最低!」

「私はその子に触ってない。エドワードは私のアンナを突き落としたの!」

 事実を必死に訴えるが、ふたりは軽蔑の目でレイスのアンナを見下ろす。

「エドがそんなことするわけないだろ」

「あなたがやったんじゃないの? 女に産まれた自分の子を恨んで」

「違う! 私はそんなことしない! アンナを愛してるの!」

「痛いよぉ」

 エドワードがまた嘘泣きをすると、ふたりは大袈裟に心配する。

「まぁ、なんて可哀想なの! 急いで冷やさなきゃ!」

「医務室に行こう」

「待って! アンナを」

 ゲイリーは憎しみのこもった目でレイスを見ると、拳を思いっきり振り上げた。剣術のために鍛錬を重ねた成人男性の拳は重く、悲鳴を上げることすら出来ない。レイスは抱きかかえていたアンナと共に、床に倒れる。

「い、ぐぅ……! アンナ!」

「いい加減にしろ。そんなの、死んでも俺には関係ない」

 ゲイリーの言葉に唖然とする。彼がアンナに愛情がないことは知っていたが、まさかここまでとは思わなかった。

「何を言ってるの? あなたの子でしょう!?」

「うるさい。王族に女など、役に立たん。エド、将来結婚するにしても、ああいった女はやめておけ」

「そうよ。惨めに喚いて、みっともないわ」

「はい、父上、母上」

 ゲイリーはエドワードを抱き上げ、3人は医務室に向かう。途中、通りかかった執事に何か伝えるのが見える。だが、今のレイスにとって、そんなことはどうでもいい。

「ごめんなさい、アンナ……。お母様が不甲斐ないから……」

 固く目を閉じたアンナを再び抱き上げ、今度こそ医務室に向かう。そんなレイスに、執事のバルトとふたりの衛兵が近寄ってくる。

「お退きになって。アンナを医務室に運ばないといけないの」

 立ちふさがる3人を睨みながら言うと、バルトはアンナの腕を引っ張った。幼いアンナの体は、再び床に叩きつけられてしまう。

「アンナ! なんてことするの!? あなた、それでも執事!? いいえ、それ以前の問題よ! 人の命をなんだと思っているの!?」

「騒がしいですぞ、レイス王妃。フレアージュ家は、この程度の躾もできないのですか。淑女たる者、いつ何時、毅然と構えていませんと」

 バルトの言葉に、衛兵達はクスクス笑う。

「我が子が死にかけてるのに、淑女の心得なんて気にしてる余裕あるわけないでしょう!? お退きなさい!」

 レイスが声を上げると、3人は馬鹿にするように笑う。

「私を馬鹿にしたいのなら、好きにすればいいわ。王妃として命令する。今すぐそこを退きなさい」

 バルトは片手を上げ、衛兵達に合図する。衛兵達はレイスの後ろに素早く回り込むと、彼女を羽交い締めにした。

「ちょっと、何するのよ! 離しなさい、無礼ですよ」

 レイスがいくら暴れても、鍛え抜かれたふたりの衛兵相手では、どうしようもない。

 バルトはレイスを挑発するように、アンナの襟首を片手でつかみ、持ち上げた。

「やめなさい! アンナを離して!」

「仰せのままに」

 バルトはニヤリと笑い、手を離す。重力に従い、アンナはまた、床に叩きつけられた。

「アンナあぁっ!」

 必死に手を伸ばそうとするが、衛兵達が阻止する。

「アンナ、アンナぁ! この悪魔! あなた達、人じゃないわ!」

 レイスが怒れば怒るほど、3人は調子に乗り、ニタニタ下品な笑みを浮かべるだけ。

「これの処理は、こちらでしておきますので」

 バルトは再びアンナの襟首を持ち上げる。

「処理って何!? アンナはまだ死んでないの! 退いて、医務室につれてくんだから!」

 必死に声を張り上げ、抵抗するレイスに、バルトはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。通りかかった侍女や他の衛兵も、レイスを見下し、嘲笑う。

「大声をあげて、淑女として恥ずかしくないのですか?」

「アンナを返して!」

「衛兵、王妃様はご乱心です。寝室に連れて行っておやりなさい」

「はっ!」

 衛兵達はレイスを引きずり、寝室に向かう。

「アンナ、アンナぁ! いやああっ!」

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