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6話

作者: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-05-11 09:00:23

 令和日本、とある高校の昼下がり。皆が真面目に授業を聞いている中、ひとりの女子生徒、火野玲海は居眠りをしている。

 両親が出張で家を空けていることをいいことに、メスガキ系VTuberれみぃ☆として、夜遅くまでゲーム配信をしていたのだ。人気のゲームをプレイすることもあるが、数学好きの彼女は、数学が用いられたゲームをプレイすることが多い。メスガキのキャラと数学好きというギャップが受け、今は登録者数が6000人以上いる。

「アンナ!」

 悪夢にうなされていた玲海は、飛び起きる。

(なに、今の夢……。すごくリアルだった……。ううん、それだけじゃない)

 ファンタジーな世界の王妃、レイス・フレアージュとしての記憶が、玲海の中にある。

「火野さん。この物語の主人公は、アンナではなく、亜美ですよ」

 国語の教師は冷たい視線を玲海にむけ、クラスメイト達はクスクス笑ったり、ため息をついたりしている。

「す、すいません!」

「数学が得意なのはいいけど、国語の授業もしっかり聞きなさい。コミュニケーションに必要なのは、数字ではなく言葉ですよ」

 国語の教師、安藤は厭味ったらしく言うと、黒板に書きかけの文章の続きを書く。

 玲海は数学は得意だが、国語が苦手だ。特にひとつの物語から学ぶタイプの授業だと、必ず朗読がある。日当たりのいい席で朗読を聞いていると、つい眠ってしまうのだ。

 安藤はそれが気に食わないのか、玲海に強く当たりがちだ。だから玲海も、安藤と国語があまり好きではない。

(レスバ力は私の方が上だってーの!)

 教科書で口元を隠し、舌をつきだす。昔から、リアルよりネットの友達が多い。そしてSNSをしていると、非常識な大人と遭遇することも多く、彼らにうざ絡みされる。今でこそブロックしておしまいだが、当時は正論パンチを繰り出し、言い負かしていた。それがたまらなく気持ちよかった。

 最も、リアルでそんなことをしたら「生意気だ」と目をつけられて面倒なことになるのでやらないが。

(なんなんだろう、この記憶……)

 頭を抱え、ため息をつく。寝起きで真っ先に走馬灯のように駆け巡った記憶は、愛娘のアンナが殺され、仇を討つも、処刑されてしまう記憶。

 今、じわじわとレイスの記憶が断片的に浮かんでくる。

(なにこれ、私って異世界からこの世界に転生してきたの? いやいや、ラノベじゃないんだから)

 「玲海ちゃん、大丈夫?」

 小声で声をかけられ、我に返る。そちらを見ると、友人のルカが心配そうな顔でハンカチを差し出してきた。

「ありがとう、大丈夫。けど、なんでハンカチ?」

「泣いてるから」

「え?」

 こっそり手鏡を見てみると、確かに涙が流れていた。

(どうして……)

 分からないことだらけで未だに混乱しているが、ひとまずルカにハンカチを借りて涙を拭く。

 残りの授業もレイスの記憶が少しずつ浮かんできたせいで、結局授業に集中できなかった。

「あー、もう。イライラする……」

 帰宅途中、れみぃ☆のアカウントで、数十分後に急遽配信をすると告知した。お気に入りの数学ゲームをプレイして、気晴らししたかった。

 帰宅すると、玲海は制服のままパソコンをつけ、配信準備をする。

「こんれみぃ☆ こんな時間に来るなんて暇なのぉ? ざぁこ♡ ざこニート♡ 社会のお荷物♡ いい歳して無職とかなっさけなぁい♡」

 挨拶がてらリスナーを煽ると、さっそくゲームを始めていく。今日プレイするのは、マスデス。魔物の首にぶら下がった数式を解いて倒していくというものだ。

 数式を解きながら、コメントにメスガキ構文で返していく。数式を解いていくと、思考がクリアになっていき、レイスの記憶が浮かばなくなってきた。

(あー、やっぱ数学最高。頭の整理にうってつけだし、皆褒めてくれるし)

 すっかり落ち着きを取り戻し、気分が良くなったところで配信を終える。外はすっかり暗くなり、空腹を覚える。時計を見るともう20時過ぎだ。

「はぁ、お腹空いた……。コンビニでいっか」

 警察に出くわしたらめんどくさいことになると思い、スウェットに着替え、スマホをポケットにねじ込んだ。

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