تسجيل الدخول令和日本、とある高校の昼下がり。皆が真面目に授業を聞いている中、ひとりの女子生徒、火野玲海は居眠りをしている。
両親が出張で家を空けていることをいいことに、メスガキ系VTuberれみぃ☆として、夜遅くまでゲーム配信をしていたのだ。人気のゲームをプレイすることもあるが、数学好きの彼女は、数学が用いられたゲームをプレイすることが多い。メスガキのキャラと数学好きというギャップが受け、今は登録者数が6000人以上いる。
「アンナ!」
悪夢にうなされていた玲海は、飛び起きる。
(なに、今の夢……。すごくリアルだった……。ううん、それだけじゃない)
ファンタジーな世界の王妃、レイス・フレアージュとしての記憶が、玲海の中にある。
「火野さん。この物語の主人公は、アンナではなく、亜美ですよ」
国語の教師は冷たい視線を玲海にむけ、クラスメイト達はクスクス笑ったり、ため息をついたりしている。
「す、すいません!」
「数学が得意なのはいいけど、国語の授業もしっかり聞きなさい。コミュニケーションに必要なのは、数字ではなく言葉ですよ」
国語の教師、安藤は厭味ったらしく言うと、黒板に書きかけの文章の続きを書く。
玲海は数学は得意だが、国語が苦手だ。特にひとつの物語から学ぶタイプの授業だと、必ず朗読がある。日当たりのいい席で朗読を聞いていると、つい眠ってしまうのだ。
安藤はそれが気に食わないのか、玲海に強く当たりがちだ。だから玲海も、安藤と国語があまり好きではない。
(レスバ力は私の方が上だってーの!)
教科書で口元を隠し、舌をつきだす。昔から、リアルよりネットの友達が多い。そしてSNSをしていると、非常識な大人と遭遇することも多く、彼らにうざ絡みされる。今でこそブロックしておしまいだが、当時は正論パンチを繰り出し、言い負かしていた。それがたまらなく気持ちよかった。
最も、リアルでそんなことをしたら「生意気だ」と目をつけられて面倒なことになるのでやらないが。
(なんなんだろう、この記憶……)
頭を抱え、ため息をつく。寝起きで真っ先に走馬灯のように駆け巡った記憶は、愛娘のアンナが殺され、仇を討つも、処刑されてしまう記憶。
今、じわじわとレイスの記憶が断片的に浮かんでくる。
(なにこれ、私って異世界からこの世界に転生してきたの? いやいや、ラノベじゃないんだから)
「玲海ちゃん、大丈夫?」
小声で声をかけられ、我に返る。そちらを見ると、友人のルカが心配そうな顔でハンカチを差し出してきた。
「ありがとう、大丈夫。けど、なんでハンカチ?」 「泣いてるから」「え?」
こっそり手鏡を見てみると、確かに涙が流れていた。
(どうして……)
分からないことだらけで未だに混乱しているが、ひとまずルカにハンカチを借りて涙を拭く。
残りの授業もレイスの記憶が少しずつ浮かんできたせいで、結局授業に集中できなかった。
「あー、もう。イライラする……」
帰宅途中、れみぃ☆のアカウントで、数十分後に急遽配信をすると告知した。お気に入りの数学ゲームをプレイして、気晴らししたかった。
帰宅すると、玲海は制服のままパソコンをつけ、配信準備をする。
「こんれみぃ☆ こんな時間に来るなんて暇なのぉ? ざぁこ♡ ざこニート♡ 社会のお荷物♡ いい歳して無職とかなっさけなぁい♡」
挨拶がてらリスナーを煽ると、さっそくゲームを始めていく。今日プレイするのは、マスデス。魔物の首にぶら下がった数式を解いて倒していくというものだ。
数式を解きながら、コメントにメスガキ構文で返していく。数式を解いていくと、思考がクリアになっていき、レイスの記憶が浮かばなくなってきた。
(あー、やっぱ数学最高。頭の整理にうってつけだし、皆褒めてくれるし)
すっかり落ち着きを取り戻し、気分が良くなったところで配信を終える。外はすっかり暗くなり、空腹を覚える。時計を見るともう20時過ぎだ。
「はぁ、お腹空いた……。コンビニでいっか」
警察に出くわしたらめんどくさいことになると思い、スウェットに着替え、スマホをポケットにねじ込んだ。
お茶も終えると、ゲイリーの手を惹かれ、中庭に出る。だが、中庭は真っ暗で、どこに何があるのかよく見えない。甘く優しい香りがすることから、花が咲いていることが分かる程度で、それ以外はよく分からない。「ゲイリー、暗くて見えないわ。光魔法で照らしましょうか」「いいや、ここで魔法を使うのは俺だ」 ゲイリーは詠唱を唱え、指を鳴らす。すると、花々がふたりのまわりから順に、一斉に光りだす。淡く輝く花々は、愛しい人を幻想的に照らした。「すごいわ! こんなに美しい花園、見たことがない……」 辺り一面、光の花。現世のものとは思えない美しさに、レイスは心を奪われ、うっとり眺める。「レイス」 ゲイリーはレイスの名を呼ぶ。その声は少し震えていた。「なにかしら?」「俺達は、政略結婚だったな」「え? えぇ、そうね」 今更結婚のことを持ち出されて、困惑する。レイスはじっとゲイリーを見つめ、次の言葉を待った。「あの頃の俺は酷かった。横柄で、男尊女卑で、考えが古くて。君のことも、下に見ていた。決まりだから仕方なく結婚してやる、感謝しろ。なんて、最低なことを考えていたよ」「えぇ、あの頃のあなたは、酷かったわ」「君は恐れることなく、俺に歯向かってきていたな」 思い出し笑いをするゲイリーに、少し恥ずかしくなる。「当時は、仕方なくと思った。けど、今は違う。君と結婚して、本当に良かったと思っているよ。君のおかげで俺は王になれた。何より、愛し合う喜びを教えてくれた」「ゲイリー……」 ゲイリーは懐から小さな箱を出すと、開けて見せる。中には指輪が入っていた。「あの時渡した結婚指輪には、意味なんてほとんどない。改めて、結婚指輪を贈らせてくれ。これは君を想って選んだんだ」「どうしよう、嬉しいわ……」「さぁ、手を出して」「はい」 手を出すと、ゲイリーは元々嵌めてあった指輪を外し、新たな結婚指輪をレイスの指に嵌めた。指輪はぴったり嵌り、レイスの華奢な指で光り
シャーリィ達をエンゲリーに届けて半月。頻度は減ってきているとはいえ、レイスは未だに悪夢に苛まれていた。ゲイリーに話して楽にはなったが、夢のせいか、時々ゲイリーとバルトに恐怖を抱く。メリンダに雰囲気の似た女性を見かけると、不安になってしまう。「こんなに幸せなのに……」 レイスは東屋に座り、ゲイリーと遊ぶアンナを見つめる。少し離れたところで、バルトが微笑ましく見守っていた。「前に、進まないといけないのに……」 何度も自分にそう言い聞かせ、思い込んできた。それでも悪夢が、前世が、レイスをじわじわと蝕んでいく。「そろそろ公務の時間だな。バルト、アンナを頼む」「はい、陛下」 ふたりの会話で我に返り、立ち上がる。この後他国の王族が城に来ることになっているのだ。「いこう、レイス」「はい」 レイスはゲイリーと共に、客間へ向かった。 夕方、公務を終わらせたレイスは、紅茶を飲んでため息を付いた。レイスにとって、外交ほど苦痛なものはない。自分のものと偽った功績を褒め称えられるのだから。「レイス、今いいか?」「あなた、どうなさったの?」「出かけないか? 気分転換も必要だ」 ゲイリーは、レイスが外交に苦手意識を持っていることをよく知っていた。だから気遣ってくれたのだろう。「いいわね、行きましょうか」 ゲイリーのエスコートで外に出ると、既に馬車が用意してあった。馬車に揺られながら、隣に座るゲイリーを見上げる。「どこへ行くの?」「さてな」 言葉こそ短いが、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。きっと彼なりに何か考えてくれたのだろう。「アンナが一緒じゃないなんて、変な感じがするわ」 プライベートで出かける時は、いつもアンナを同行させていた。思えば、アンナが産まれてから、ふたりで外出したことはなかったかもしれない。「たまにはふたりというのもいいだろう」「そうね。なんだか懐かしいわ」 目を細めて思い出すのは
シャーリィを孤児院に預けてから半年後。レイスは馬車に揺られ、孤児院を目指した。 シャーリィがゲイリーを襲った罰としてレイスが下した罪は、孤児院で半年間奉仕することと、その後の追放。今日は彼女を国外追放する日だ。 いつもならお菓子や玩具をもって行くが、ことがことなだけに、そんな気は起きなかった。 孤児院に着くと、子供達と楽しそうに追いかけっこをしているシャーリィの姿が目に映る。(これは、私が彼女に下した罰だものね) 心の中で自分にそう言い聞かせ、馬車から降りる。レイスに気づいた子供達が一斉に駆け寄ってきた。「王妃様! 遊ぼ!」「私と遊ぶの!」「みんなで遊ぼーよ」 自分を囲んではしゃぐ子供達に、胸が締め付けられる。「ごめんね、みんな。今日はシャーリィお姉ちゃんを連れて行く日なの」 いくら事前に伝えていたとは言え、子供達が泣き出してしまうのではないかと懸念したが、子供達は顔を見合わせ、大きく頷いた。「お姫様だもんね」「でも、お別れ会はさせて」「お願いお願い!」「えぇ、もちろんいいわ」 レイスが了承すると、子供達は飛び跳ねながらはしゃぎ、シャーリィの腕を引っ張って施設内に向かう。シャーリィの顔は青白かった。 レイスも誘われて一緒に行くと、子供達は歌を歌ったり、劇を披露したりした。最初は暗い顔をしていたシャーリィだったが、頑張る子供達を見て、笑顔になっていく。「おまたせー!」 職員と数名の女の子たちがケーキを持ってきた。チョコレートプレートには、ぐにゃぐにゃした文字で、『シャーリィ大好き』と書かれていた。「こんなに素敵なケーキを用意してくれるなんて……」 シャーリィは泣き崩れ、子供達は慰めるようにシャーリィに抱きつく。(とても心苦しいわ……) 半年という短い期間だったが、シャーリィと子供達の間には強固な絆が感じられる。それを引き離すのは心苦しいものだった。 皆でケーキを食べた後、子供達はそれ
「ズルというのは、自分が得をしようとしてするものだ」「私は、自分を守るためにしたの。できるだけ知名度と支持率を集めて、あなたに酷いことをされても、民衆に守ってもらえるように……。だから、これはズルだと思うの」「いいや、守るためなら、ズルとはいわない。それに、バカ正直に前世の記憶だと言いながら発表してたら、誰も聞き入れなかっただろう。何より、お前の数々の発表で、ルシアーナは大きく発展した。レイス。お前は王妃としても、母親としても、妻としても、立派だ」「ゲイリー……」「それに、魔剣士になったり、乗馬が上達したりしたのは、お前の努力だ。前世では、どれもうまく行かなかったんだろう?」「そう、そうね……」 ゲイリーの言葉に、今まで抱えていた罪悪感が消えていく。自分とアンナを守るためとはいえ、他人の知識を自分が発案したかのように振る舞うのは、心が痛んだ。大きな棘が抜けたような気分だ。「レイス……」 ゲイリーはレイスを抱きしめる。安心したからか、睡魔がやってきて、あくびが出てしまう。「ごめんなさい……」「いや、いい。眠くなったんだろう?」「えぇ、なんだか、安心してしまって……」「それなら、寝よう」「そうね、おやすみなさい」「なぁ、レイス」「何かしら?」 ベッドに入ろうとして呼び止められて振り返ると、ゲイリーが好奇心で輝いた目でレイスを見つけていた。「さっき言ってたニホン? の話、また聞かせてくれないか?」「えぇ、喜んで。次は絵を描きながら説明するわ。絵に自信はないけど」「楽しみにしてる」 ふたりはベッドに入り、抱き合って眠った。 今度はレイスも悪夢を見ずにぐっすり眠れた。 翌日、レイス、ゲイリー、アンナはサンドイッチを持って敷地内の池に来た。最近公務で娘との時間が取れなかったからと、ゲイリーが提案したのだ。「わぁ、おみず、きらきら!」 まだ3歳のアンナは、きらきら輝く水面に興味津々。ゲイリーはそん
「私とアンナは、バルト達に引き離されたの。私は、寝室に閉じ込められて……。扉の隙間から入れられた魔便りを見たら、バルトがアンナを、麻袋に入れて、焼却炉に入れてる映像で……」「レイス……」 ゲイリーはどう声をかけていいか分からず、アンナを強く抱きしめ、背中をさする。自分や使用人の中にある残虐性を覗いてしまった気がしておぞましい。だが、そのおぞましい記憶を、目の前にいるレイスはずっと抱えてきた。そう思うと彼女の健気さがより愛おしくなる。「……たの」「え?」「動いてたの……。麻袋が、焼却炉に入る前に」 それは前世でアンナが焼かれる苦しみの中で死んでいったことを意味する。「すまない、レイス……」「いいえ、今のあなたは、悪くない……」「まったく記憶にないとはいえ、お前を傷つけてきた自分が許せない……。レイス、お前が望むのなら、別居したっていい。バルトが怖いのなら、解雇する」「いいえ、いいのよ。今のあなたも、バルトも、悪い人じゃないから」「無理してないか?」「えぇ、してないわ」「それならいいが……。今度からは、つらいことがあったら全て話してほしい。支えていきたいんだ」「あなた……」 真摯なゲイリーに胸を打たれたレイスは、最後の秘密も彼に打ち明けるべきだと思った。長年隠してきた、もうひとつの記憶を。「実は、もうひとつ、打ち明けたいことがあるの」「なんだ?」「私には、他の記憶もあるの」「他の? 違うパターンのレイスの人生ってことか?」「いいえ、まったく別人の記憶よ。それが私を支えてくれたの」 胸に手を当て、彼女を想う。孤独と戦い続けた好奇心旺盛な少女、火野玲海のことを。「こことはまったく別の世界。ニホンっていう国の女子高生……。15歳から18歳が通う学校の生徒の記憶よ。火野玲海っていう、とても強い女の子。その記憶があったから、私はここまでやってこれた」「ニホン……。ジョシコウセイ……。どれも聞いたことがない単語だ…
真夜中、レイスはうなされていた。「うぅ、やめて……」「レイス……」 彼女のうめき声で目を覚ましたゲイリーは、レイスの手を握る。ゲイリーが知る限りでは、レイスは王位継承式があった日から、毎晩のようにうなされている。「いったい、何がお前を苦しめているんだ?」「ゲイリー、メリンダ、やめて……!」 自分とメリンダの名がレイスの口から出たことに驚き、起こそうと伸ばした手が止まる。「何故、俺とメリンダの名を?」 ゲイリーは困惑した。自分が彼女の悪夢に出ていることにも、メリンダの名前が出たことにも。メリンダは数年前に投獄され、それっきり顔も見ていない。それにメリンダは、未だに地下牢にいる。「アンナを、返して……。バルト、やめて……」「アンナ? バルトが、一体何を……。レイス、起きろ! 起きてくれ!」 不安になってレイスを揺り起こすと、彼女は飛び起きた。「はぁ、あぁ……」「またうなされていたぞ、レイス」 ゲイリーはサイドテーブルの水差しからグラスに水を注ぐと、レイスに差し出す。「ありがとう、ゲイリー……。毎晩ごめんなさいね……。落ち着くまで、寝室は別にしましょうか」「いや、いい。それより、どんな夢を見たんだ?」 ゲイリーの問いに、レイスは押し黙る。まさか、前世でゲイリーとメリンダに酷いことをされたなど、言えるわけがない。魔法こそある世界だが、前世がどうという話を信じているのは、一部のオカルト好きくらいだ。「俺とメリンダの名前を呼んでいた。それと、バルトも」「え?」「俺達にやめてと言い、アンナを返してと……。何がお前を不安にさせている? バルトに何をされた?」「違うの……」「どう違うというのだ? レイス、頼むから話してくれ。心配なんだ」 ゲイリーの心配そうな顔に胸が苦しくなる。(あぁ、私……。いつの間にかゲイリーを好きになっていたのね……。こんな顔、させたくない) レイスは自分の気持
それからレイスは、最低限の公務と、魔法の練習代わりに、発光石に魔力を込めた。発光石自体は比較的安価で、子どものお小遣いでも買えるような値段だ。 レイスが魔力を込めた発光石は、電球を買えない平民達に、黒塗りのカップと共に配られた。発光石の光はそこまで強いものではなく、黒塗りのカップを被せてしまえば、ほとんど気にならない。 暇つぶしを主な目的とした慈善活動は平民達から大変喜ばれ、レイスの支持率はまた上昇していった。 月日が流れ、破水し、陣痛が来た。それはゲイリーとふたりでお茶をしている時に起きた。ゲイリーはバルトに医者を呼ぶように言いつけ、レ
月日は順調に流れ、レイスが18歳になると、彼女はゲイリーと結婚した。 この時既に、レイスは魔剣士として認められ、学会経由で世界に名を轟かせていた。その知名度や支持率は、ゲイリーを遥かに上回っていた。レイス側の出席者も、学者や剣士が多く、ゲイリー側の出席者達は軽くどよめいていた。 ここまで来るとゲイリーのメンツ潰しもいいところではあるが、この男にはこれくらいがちょうどいい。 すっかり紳士になったゲイリーとの生活は、前世の記憶と比べると遥かに快適だった。ゲイリーも使用人達も、レイスに嫌がらせをすることがない。今のレイスにはある意味王族よりも力
「レイス、子供に手をあげるなんて、何を考えてる!」「それも私の子に。いくら男児を産めずに冷遇されてるからって、最低!」「私はその子に触ってない。エドワードは私のアンナを突き落としたの!」 事実を必死に訴えるが、ふたりは軽蔑の目でレイスのアンナを見下ろす。「エドがそんなことするわけないだろ」「あなたがやったんじゃないの? 女に産まれた自分の子を恨んで」「違う! 私はそんなことしない! アンナを愛してるの!」「痛いよぉ」 エドワードがまた嘘泣きをすると、ふたりは大袈裟に心配する。「まぁ、なんて可哀想なの! 急いで冷やさなきゃ!」「医務室に行こう」「待って! アンナを」 ゲ
知恵と豊穣の国、ルシアーナ。数多の学者を輩出しているこの国は、学業と農業が盛んで、男女問わず学び舎に通い、様々なことを学んでいる。学費がずば抜けて安いことから、他国から移住し、勉学に励む者も大勢いる。 四季折々の野菜や果実も安値で手に入り、活気もあるため、世界1恵まれた国と言われている。 そんな恵まれた国の城内で、王妃と娘が、出かける準備をしていた。「アンナ、忘れ物はない?」「はい、お母様」「それじゃあ、行きましょうか」 薄桃色の淡い長髪を美しく束ね上げた王妃のレイスと、同じく薄桃色の髪を持つ愛らしい姫、アンナ。ふたりは今日から、森の奥にある別荘に移る予定だ。 世界1幸せな国







