LOGIN完成したゲームは、ネットのゲーム配信プラットフォームを使って、無料で遊んでもらおうということになった。
インディーズタイトルとして集金できる方法も検討したが、山本中会長が「利益を追求するのは、プロになってからで良い」と言ったので、誰も反対しなかった。
その会長のセリフは『プロのゲーム開発者を目指す』という、強い決意の表れだと感じた。
配信を開始すると、予想外の反響があった。
シンプルなゲーム性、中毒性のあるテンポと難易度が受けたのだろう。
数名のゲーム系配信者の目に留まり、彼らに紹介されたこともあって、あっという間に数千本のダウンロードに届いた。ユーザーからの評価もそこそこ良く、想定よりもバズったと言って良いだろう。
俺たちが作ったゲームが、見知らぬ誰かのPCの中で動き、楽しんでもらえている。 その事実に、胸が熱くなった。 その夜、さくらさんも呼んで、サークルメンバーとささやかな祝賀会が開かれた。完成したゲームは、ネットのゲーム配信プラットフォームを使って、無料で遊んでもらおうということになった。 インディーズタイトルとして集金できる方法も検討したが、山本中会長が「利益を追求するのは、プロになってからで良い」と言ったので、誰も反対しなかった。 その会長のセリフは『プロのゲーム開発者を目指す』という、強い決意の表れだと感じた。 配信を開始すると、予想外の反響があった。 シンプルなゲーム性、中毒性のあるテンポと難易度が受けたのだろう。 数名のゲーム系配信者の目に留まり、彼らに紹介されたこともあって、あっという間に数千本のダウンロードに届いた。 ユーザーからの評価もそこそこ良く、想定よりもバズったと言って良いだろう。 俺たちが作ったゲームが、見知らぬ誰かのPCの中で動き、楽しんでもらえている。 その事実に、胸が熱くなった。 その夜、さくらさんも呼んで、サークルメンバーとささやかな祝賀会が開かれた。 メンバーも多くないこのチームは小さな居酒屋に席を取り、これまでの苦労話や、今後の夢を語り合う。「やっぱり会長はゲーム業界目指すんですか?」「いやぁ~どうしようか……と悩んではいるよ。叔父さんがゲーム業界の人って言ったけど、色々大変だっていう話は聞いているからね……でも、今回こうやって身内以外にプレイしてもらって生の感想を貰った達成感得ちゃうとね……」「全然迷ってないじゃん……悩んだふりしてもう決めちゃっているんでしょ?」 普段は大人しめの中村山くんがアルコールの力もあってかツッコミがキツイ。「どうなんだろうな……実際プロの現場ってこんな少人数じゃないだろうし、そんな中でどれだけ自分たちの思い通りのものを作れるのかとか……まあ、今回だって羅璃君が焚きつけなければ僕らは無為に時間を消費するだけだったしな……」「そうだそうだー羅璃様に感謝シロー!!」 羅璃は相槌打ちつつさくらさんと話し込んでいた。 俺はグラフィッカーの寺社杜さんと今どき
後日、さくらさんの母親からさくら経由で、千明が高校に復帰したこと、そして軽音部に入部したこと、さらにはさくらと同じ大学を目指すことを決めたと教えられた。「大学進学とか翔平さんができるなら、私にもできそう」 千明は、そう言ったらしい。 俺は複雑な気分になった。 俺は、羅璃にここ半年で半ば強制的に引っ張り上げられたようなものだが…… しかし、千明にとっては、それが大きな一歩になったのだとしたら、素直に喜ぶべきだろう。 さくらさんは、千明が自分で何かをやろうと決めたことを、心から喜んでいるようだった。 ある日、さくらさんが俺のアパートを訪れ、羅璃に手作りのカップケーキを渡した。「羅璃さん、本当にありがとうございました」 さくらさんが深々と頭を下げる。「千明さんが、自分から前向きになって……上之園さんも父も女子高校生の気持ちを動かすことは難しく、同世代とは言えないまでも、若い人の行動が良い影響を及ぼすことの証明になったと……私も自分を解放するためにバンドを始めましたが、その力や行動で良いことばかりがあるわけではないと改めて反省しました……羅璃さん、気づかせてくれて本当に感謝しています」 羅璃は、満面の笑みでカップケーキを受け取ると、自慢げに食べ始めた。「しょほへー、見てみろぉよ! 羅璃は感謝されてるんだぞぉ!んぐんぐ……」 いや流石に食べ終わってからしゃべれよ…… 羅璃に煽られて、俺は少しだけ複雑な気分になる。 お礼は、羅璃にばかりで俺にはないのか、と。 すると、さくらさんが、小さなラッピングのクッキーを俺に差し出した。「あの、翔平さんにも……あります」 羅璃がもらったカップケーキと比べると、明らかに小さい
後日、なぜか千明が俺の通う大学のオープンキャンパスに参加していた。 もちろん、さくらさんと羅璃も同席だ。 この企画は、羅璃が「この際、推しが普段どんなことしているのか、実体験してもらおう」と言い出したものだ。 最初は、「羅璃が千明と一緒に住んで、翔平がグータラ大学生なだけではないと知ってもらおう」とか、恐ろしいことを言い出したのだが、さすがに「犯罪だからやめてくれ」と懇願する羽目になった。 千明自身は「どうせ家には帰っていない」と開き直っていたが、さくらさんがなんとか説得して、オープンキャンパスに落ち着いた形だ。 まずは講義の見学。 法学部の講義室に足を踏み入れた千明は、学生たちの真剣な眼差しや教授の難しい専門用語に、最初から戸惑っている様子だった。「ねぇ、羅璃さん、これ、何言ってるか全然わかんないし、つまんなーい~……ウチ思うんだけど……『勉強なんか意味ない』『学歴社会は終わった』ってネットでも見るし~友達も皆言ってるんだよね~だるぅ~って」 千明が、俺の隣で小さな声で羅璃に囁く。 羅璃は、フッと笑って肩を竦めた。「しょーへー、千明に大学の意義を教えてやれよ」 俺は、羅璃に促され、千明に話しかけた。「まあ、いきなりは難しいよな。でも、千明ちゃんはさ、『勉強なんか意味ない』とか『学歴社会は終わった』とか、ネットとか友達から聞いたことそのまま言ってるだけだろ? それって……本当のことかな?」「え~どういう意味ですかぁしょーへーさん?」「今俺と会話している千明ちゃんは日本語で話が通じ合っているよね?」「え?当たり前じゃん」「でも……じゃあ、すいませんさくらさん……」 さくらさんに話を振る。 さくらさんは意を得たと頷き突然英語で話しかける「I'd like to ch
女子高校生千明がさくらさんに駆け寄っていくのを見て、羅璃がニヤニヤしながら千明に話しかけた。「で? 千明の推しは誰なんだよ? やっぱりサクラ?」 千明は頬を染めて頷いた。羅璃は、そんな千明を見て、満足げに俺の方を振り返った。「なあ、千明、羅璃の推し活のことを教えてやるよ~ 翔平?!羅璃の推しは誰だと思う?」 俺は一瞬言葉に詰まった。羅璃の推し? もしかして……さくらさんとか? 羅璃は俺の煩悩の具現化のはずだし、推しとかあるのか? 羅璃は、混乱している俺の様子を見て、フッと笑った。「そんなの、しょーへーに決まってんだろ?」 羅璃の言葉に、千明は「え?」と声を上げた。 俺と羅璃を交互に見て、目を丸くする。 羅璃は、そんな千明に向かって、わざとらしい声で言った。「こんな冴えないオッサン、千明は推せないだろ?」「オッサンは無いだろ! せめてお兄さん……!」 俺は、思わずツッコミを入れた。羅璃は、俺の反応を楽しんでいるようだ。「羅璃の推し活舐めんなヨ~ しょーへーはな……欲望含めたすべての煩悩を解脱しちゃって、正月に死ぬところだったんだぞ…… それを推し活……活力ぶっこんで羅璃がここまで復活させたんだぞ。」「え?俺死ぬところだったの?」初耳だ……「生きたいって言うのは煩悩だぞ、しょーへー……逝きたいってのも煩悩だけどな」「さっきライブで逝きかけたけどなー」回想する俺。 ニカリと笑う羅璃。「そんな冗談いえるなら、今は大丈夫ってことだ……どう、千明。これがギャル
近くの……と言っても、周囲の喫茶店はライブ参加者で埋まっていた。 結局駅前まで移動して、落ち着いた雰囲気の店に入った。 入り口前で奥さんはどこかに連絡していたが、すぐに合流し、店の奥にある席に五人が座る。 俺、羅璃、宮司、奥さん、そして女子高生。 これは一体何の集まりだろうか? 緊張する俺とは対照的に、羅璃は楽しそうに周囲を見回している。 仏頂面していた宮司さんを、奥さんが肘で軽く小突いた。 宮司さんは帽子とサングラスを外し、開口一番、深々と頭を下げた。「この度は、さくらのことで済まなかった」 その言葉に、俺は恐縮して身を縮める。 宮司さんは顔を上げ、羅璃のほうをちらりと見た。「羅璃殿の存在は、いまだに信じられないことだ。 神職に就いてから、あそこまで周囲に認識させるほどの存在を持つ事象に遭遇したのは、生まれて初めてでな……この退魔を成し遂げたなら歴史に名を残せるかと、その功名心に抗えなかった。我ながら、恥ずかしい限りだ」 宮司さんの言葉は、率直な反省の言葉だった。 だが、羅璃はそんな宮司さんを茶化すように言った。「寝食忘れて神職ついて……今日はこの前のリベンジか?」 なんかラップ?ダジャレ入れてる……怒っているというより面白がっている様だ。 宮司さんは、何とも困った顔をして沈黙する。 どうでもいいけど、パーカーのぶかぶかパンツは今回用に用意したのかもしれないが 似合ってないな……と少し前の自分を差し置いて思ってしまった。 ただ、場に合わせようと必死に宮司さんが用意したのだと思うと、ちょっと微笑ましい。 あの時の宮司としての正装を身に着けて威厳を持つイメージからは想像できない。 そんな宮司さんに代わって話し始めたのは、こ
サークルのゲーム制作も順調に進み、俺は背景画のデザインに集中していた。 羅璃の助言と、皆に必要とされているという感覚が、俺の「ダルい」という感情を薄れさせ、代わりに充実感を与えてくれていた。 そんな中、ミサト先輩から次のライブのチケットを渡された。 俺と羅璃の物語を歌った新曲が披露されると聞き、心からライブを楽しみにする自分がいた。 ◇ そして、遂にライブ当日になった。 会場は前回と同じ、三軒茶屋のライブハウスだった。 前回は初めてのライブハウスに圧倒され、ただ呆然とするばかりだったが、今回は少し違った。 慣れというのは恐ろしい。 開場時間に合わせて到着すると、すでに多くのファンが列をなしていた。 今回は先輩達「白い堕天使」がトリという事で、他のバンドも観る余裕があった。 俺は体力がないので、後ろの方でドリンクをチビチビ飲みながら、様々なバンドの演奏を聴いていた。 どのバンドも熱気がすごくて、観客もそれぞれのバンドに熱狂している。 羅璃は、最初から全力で最前列に行ってはしゃいでいた。 赤い瞳を輝かせ、頭の角を揺らしながら、全身で音楽に乗っている。 彼女こそが、このライブハウスの熱狂を体現しているようだった。 ミサト先輩達のバンドの出番が近づくと、会場の人が増え始めた。 俺は、ドリンクを片手に、人の波を眺めていた。 その中に、ふと、慣れない感じのサングラスにキャップを被った中年の男性と、場違いな気品を纏った女性がいることに気づいた。 その二人は、明らかにこのライブハウスの雰囲気に馴染んでいない。 不思議に思って見ていると、サングラスの中年男性が、不意にこちらに気付き、あっという顔をした。(あ……宮司さん……!) 俺は、一瞬でその男性が天宮司さんのお父上、宮司さんであることを悟った。 普段着でもないだろう……パー