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・Chapter(12) バーベキュー

last update Huling Na-update: 2025-06-25 21:34:41

スターバックスで紗季と合流した瑞穂と多香子は、その足ですぐさま私鉄の切符売り場へと向かった。

「あっ、瑞穂ちゃん、多香子姉さん。

コーヒー飲まないの?

せっかく、席取っておいたのにー」

「いいよ、もう。時間だから」

舌足らずな口調で問い掛ける紗季の言葉を瑞穂は受け流すと、財布から小銭を出し、路線図を見ながら切符を買う。

「姉さん買わないの、切符?」

財布も出さず、ただ突っ立ったままで二人が切符を買う様を見ている多香子に向かって、瑞穂は振り返り、尋ねる。

「あっ、アタシこれ。ICカードだから大丈夫」

多香子はバッグからパスケースを取り出すと、そこに入っているICカードを手帳のように瑞穂に対して見せた。

多香子と紗季を加えた三人で、瑞穂らは改札をくぐると、タイミング良くホームに滑りこんできた各停に乗車した。

「バーベキュー、イケメンいるかなぁ」

「今日は飲むよ、トコトンね」

目を輝かせながら語る紗季と、気合いの入った多香子の言葉に、瑞穂は「二人とも、気合い入ってるね」と笑う。

各停に乗車して、10分。

喫茶店のあったターミナル駅から4駅で、三人は電車を降りた。

同時に瑞穂はバッグからスマートフォンを取り出すと、LINEアプリを立ち上げる。

『古田さん、高畑です。

今、駅に着いて指定された④番出口に向かうところです』

古田にメッセージを送信すると、瑞穂は辺りを見回し、案内表示を探す。

「ここで降りる、って事は、バーベキューは穴子公園でするっぽいね。

テニスで一回来た事あるけど、バーベキューで穴子公園に行くのは初めてだわ」

改札をくぐり、④番出口に向かって歩きながら、多香子が言葉を発する。

「アタシは全く初めて」

「アタシも」

その多香子の言葉に、瑞穂と紗季の二人は返答すると、三人揃って階段を降り、迎え人である古田を待った。

市内の、ほぼど真ん中。

本社ビルが幾つも立ち並ぶ、オフィス街。

そのオフィス街の中心に、市が「憩いの場」を提供しようと考えたのか。

戦後、復興土地区画整理事業によって軍需工場だった土地は、公園へと見事に様変わりを遂げ、市の目論見通り、疲れた企業戦士や、子供を連れた母親など、公園は市民のオアシスとして機能していた。

「ミニストップのソフトクリーム、美味しそうだなぁ。

瑞穂ちゃん、ちょっと買ってきていい?」

「ダメに決まってんだろ」

コンビニを目にして、
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