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・Chapter(13) 杉浦マイ

last update Dernière mise à jour: 2025-06-26 20:29:34

「そう、ですけど……」

瑞穂も相手の出方をうかがうように、恐る恐る言葉を返す。

「和田さんのバーベキューに参加するのって、今回が初めてですか?」

女性は質問を続ける。

その質問に、瑞穂は「そうです」と小さく頷いた。

「あっ、私と一緒だ」

自身との共通項を見出だしたからか、女性は微笑すると、さらに瑞穂との距離を縮めてきた。

「私も今回、初めてで不安だったんです。

だから、仲間がいて良かった、と思って……」

「そうなんですね」

──どうやら、悪い人じゃなさそうだな。

女性の様子から、胸中で思った瑞穂は、深呼吸する事で心のガードを解いた。

「和田マネージャーの、高校の時の同級生ですか?」

そして、続く形で瑞穂は女性に対して尋ねる。

「あっ、違います」

女性は手を振る事で、瑞穂の弁を否定した。

「私、年齢は和田さんより下です。

実は兄が野球部でして、その関係で今日のこのバーベキューにお誘いしてもらったんです」

女性は再び微笑を浮かばせると、柔らかな物腰で言葉を続けた。

「正直、男性ばかりのバーベキューってイメージでしたから、少し不安だったんですね。

兄や、お誘いしていただいた和田さんからは、大丈夫大丈夫、って言ってくれてたんですけど、当日まで不安で……。

でも、来てみて良かったです。

確かに、雰囲気は楽しそうですし、私以外にも初めての人が何人かいましたから、気が楽になったっていうか……」

「みーずほ、カルビ焼けたらしいよ。

取ってきてあげようか?」

その時、顔を赤くした多香子が、大股で歩み寄ってきながら、瑞穂に対して訊いてくる。

「あっ、じゃあお願い」

瑞穂は頷くと、「ついでに、この人の分もお願い!」と、女性を指差しながら付け加える。

応えた多香子は踵を返すと、「ヨッシャー!」と、謎の雄叫びを上げながら、和田マネージャーの元へ向かっていった。

「……面白い人ですね」

多香子の雄叫びをあげる様がツボに入ったらしく、女性はうつむくと、声を殺して笑った。

女の瑞穂から見ても、上品で心が惹かれるような笑い方であった。

「酔うと、いつもああなんですよ」

無邪気とも言える女性の様子に、瑞穂はすっかりと気を許すと、苦笑を浮かばせながら女性に対して語り始めた。

·

「もちろん、ああいう面だけじゃなく、頼りになる面もあるんですけどね。

二人で歩いてて、ちょっとややこしい男連中に絡まれたら、
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