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第906話

作者: 北野 艾
信じられないというように詩織が呆れると、柊也は声を出して笑った。「俺だって神様じゃない、ただの男だぞ。片思いくらいするさ」

「そういう意味じゃないわ。当時のあなたの立場や環境なら、好きになったら堂々と追いかけて、告白すればよかったじゃない。わざわざ陰からこっそり見つめるような真似、あなたらしくないわ」

そこまで言ってから、詩織はハッとして付け加えた。「でも……それには一つ条件があるわね。相手が成人していること。未成年相手の恋愛は犯罪だもの」

柊也は少し考えるような素振りを見せてから、静かに答えた。「俺が彼女に出会った時、彼女はまだ……未成年だったからな」

その言葉に、詩織はピタリと動きを止めた。

彼女の記憶のタイムラインでは、柊也と初めて出会ったとき、彼女はすでに成人していた。

つまり、柊也が「未成年の頃から片思いしていた」相手というのは、間違いなく自分ではない、別の誰かだということになる。

どういうわけか、その事実を突きつけられた瞬間、詩織の胸の奥にじわりと苦いものが広がった。

誤魔化すように視線を窓の外へ逸らし、彼に弄ばれていた自分の髪の毛を不意に引き抜く。

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