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第239話

作者: marimo
last update 公開日: 2026-07-27 20:24:52

その頃、「八〇七号室」では、心春が和真の胸に顔を突っ伏して泣きじゃくっていた。

静かな和室には、心春の嗚咽だけが途切れることなく響いている。

部屋の隅では間接照明が柔らかな明かりを灯し、窓の外からは虫の鳴き声がかすかに聞こえてきた。

そんな穏やかな夜とは対照的に、心春の心は激しく揺れ続けていた。

和真は優しく心春を抱きしめ、心春が泣くに任せていた。

無理に言葉を掛けることも、涙を止めようとすることもしない。

今はただ、心春が安心して泣ける場所になろうと決めていた。

心春の背中を優しくなで、和真は何も言わずに心春を抱きしめる。

その手は一定のリズムでゆっくりと背中をさすり続け、幼い子どもをあやすような温かさがあった。

心春は止まることのない涙を拭いもせず、和真の腕の中で安心感を求めていた。

怖かった。

信じたいのに、不安だった。

和真を失うことだけは考えたくない。

そんな思いが胸の中で渦巻き、涙となってあふれ続ける。

しばらく泣いたあと。

心春はやっと顔を上げた。

目元は真っ赤に腫れ、頬には涙の跡が残っている。

和真はそんな心春の顔を見て、フッと笑った。

「心春、鼻水と涙で顔がぐちゃぐ
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    その頃、「八〇七号室」では、心春が和真の胸に顔を突っ伏して泣きじゃくっていた。静かな和室には、心春の嗚咽だけが途切れることなく響いている。部屋の隅では間接照明が柔らかな明かりを灯し、窓の外からは虫の鳴き声がかすかに聞こえてきた。そんな穏やかな夜とは対照的に、心春の心は激しく揺れ続けていた。和真は優しく心春を抱きしめ、心春が泣くに任せていた。無理に言葉を掛けることも、涙を止めようとすることもしない。今はただ、心春が安心して泣ける場所になろうと決めていた。心春の背中を優しくなで、和真は何も言わずに心春を抱きしめる。その手は一定のリズムでゆっくりと背中をさすり続け、幼い子どもをあやすような温かさがあった。心春は止まることのない涙を拭いもせず、和真の腕の中で安心感を求めていた。怖かった。信じたいのに、不安だった。和真を失うことだけは考えたくない。そんな思いが胸の中で渦巻き、涙となってあふれ続ける。しばらく泣いたあと。心春はやっと顔を上げた。目元は真っ赤に腫れ、頬には涙の跡が残っている。和真はそんな心春の顔を見て、フッと笑った。「心春、鼻水と涙で顔がぐちゃぐちゃだよ」その言葉に心春はハッとし、慌てて顔を隠そうと手で顔を覆おうとした。こんな顔を見られたくない。恥ずかしさでいっぱいだった。しかし和真は、その手をギュッと握りしめ、心春の顔を覗き込む。心春が顔を背けても、和真は心春を離そうとしなかった。逃げ場をなくすためではない。ちゃんと目を見て、自分の気持ちを伝えたかったからだ。和真は心春の耳元に顔を寄せ、そっとつぶやいた。「ごめんね、心春を泣かせるつもりはないんだ。ただ、全く覚えがないから、心春が怯える必要はないよ。俺が愛しているのは心春だけだから、心春は堂々としていて」一言一言を噛み締めるように話す和真の声は、とても穏やかだった。その言葉には嘘も取り繕いもなく、ただ心春への愛情だけが込められている。心春は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で和真の顔を見た。その瞳には、まだ不安は残っている。それでも、和真の真っ直ぐな眼差しを見ているうちに、少しずつ心が落ち着いていくのを感じていた。すると和真が、テーブルの上にあったティッシュを一枚取り、優しく心春の顔を拭ってくれる。頬を伝う涙を丁寧に拭き取り、目元をそっと押さえる。「

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