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第六章「臨界点」

Auteur: 佐薙真琴
last update Dernière mise à jour: 2025-12-07 06:53:50

 CERNのオファーから一週間。

 菜々美は返事を先延ばしにしていた。

 研究所の同僚たちは全員、このチャンスを逃すべきではないと言う。指導教授も、強く勧めてくれた。

 だが、菜々美の心は揺れ続けていた。

   *

 ある土曜日の午後、菜々美は珍しく研究所に行かず、家にいた。

 蓮はキッチンで菓子作りの練習をしていた。

 リビングには甘い香りが漂っている。

 菜々美はソファに座り、論文を読んでいた。だが、文字が頭に入ってこない。

「緒方さん、タルト焼けましたよ」

 蓮が皿を持ってきた。

 美しいフルーツタルトだった。

「食べてみてください」

 菜々美はフォークを手に取り、一口食べた。

 サクサクの生地。なめらかなカスタードクリーム。フルーツの爽やかな酸味。

「……美味しい」

「本当ですか?」

 蓮の顔が輝いた。

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