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第3話

Auteur: 今越し
結婚の贈り物にしては、かなり違和感を覚える。まるで「合わない相手とはすぐに別れたっていい」と言われているような……充は一体何を考えて、これを自分に?

しかし、本人に電話をして直接尋ねる勇気はなかった。

複雑な気分のまま部屋に戻り、靴箱ごとクローゼットの奥深くにしまい込む。クローゼットを閉めようとしたとき、棚の真ん中に置かれた大きな抱き枕が目に入った。

それは、潤が以前付き合っていた女性のために買ったものの「おまけ」だったが、大人になった彼からもらった初めての贈り物だった。

由理恵はそれを宝物のように大切にし、汚れるのも嫌で使うこともせず、ただ棚に置いては眺めていた。抱きしめてキスをしたことだってある。しかし、このおまけの抱き枕こそが、知らぬ間に由理恵の価値を下げ、愛される資格のない、軽んじられて当然の女に仕立て上げていたのだ。

自嘲気味に笑った由理恵は、その抱き枕を床に投げ捨てた。さらに、潤に関連するものをすべて探し出す。マフラーや帽子といった小さなものから、宝石やブランドバッグなどの高価なものまで、手当たり次第に集めた。

二つの大きな箱から溢れるほどになった。これは長い年月をかけ、由理恵が潤を愛した日々であり、嵐のような青春そのものだった。

箱にガムテープで封をすると、隣の収納部屋へ片付けた。すべてが終わる日に返却する決意をして、由理恵は2日間、穏やかに休息をとった。

朝、目覚まし時計の音で目を覚ます。

【今日はウェディングドレスの試着。結婚式まであと20日】という通知を見て、眉をひそめた。

何か理由をつけて断ろうか、あるいは延期してもらおうかと悩んでいると、突然ドアが開いた。完璧なスーツ姿の潤が、笑みを浮かべ、落ち着いた様子で入ってきた。

「なんだ?そんな目で俺を見て」潤の声は穏やかで、数日前のことなどなかったかのようだった。

由理恵は布団を引き上げ、寝起きの顔を隠す。「まだ顔も洗ってないのに」

「別に今までだって何度も見てるだろ?」潤は大股でベッドに近づくと、声を潜めた。「それに、服を着ていない姿だって、知っているしな」

ついに、本性を現す気になったのか?

由理恵は不意を突かれ、固まった。「それって、いつの話?」

潤の深い瞳には、からかいの笑みが浮かんでいる。「もちろん子供の頃の話さ。昔はずっとうちに入り浸っていたし、おねしょをしたことだってあるだろ?忘れたのか?」

張り詰めていた緊張が、ふっと和らいでいくのを感じた。

由理恵は自分を責めた。こんな状況でさえ、潤のペースに簡単に乗せられてしまうなんて。

とっくにわかっていたはずだ。この男は、底意地の悪い最低の人間だってことを。あの夜のことも、まるでこっちだけの記憶みたいに封じ込めて、自分は何もなかった顔でのうのうと過ごしている。そのくせ裏では、じわじわと彼女を弄び、逃げ場をなくすように追い詰めてくるのだ。

だが、こっちはすでに子供を堕ろしている。

もう二度と、潤の汚い手段に心をかき乱されたり、傷ついたりすることはない。

「そういうことなら、私もあなたの体を見たことあるわ」由理恵はあえて屈託なく笑い、布団をはねのけた。「今から着替えるから出て行ってくれない?ここにずっといたら、彼女さんに誤解されるわよ」

そう言って、由理恵はウォークインクローゼットへと向かった。

下着からコートまで念入りに選び、潤の存在を無視するように振る舞う態度に、彼は眉をひそめた。

勘違いかもしれないが、由理恵が変わった気がする。以前よりも少し攻撃的になり、少し自我が出て、大人しいだけの女じゃなくなったようだった。

自分の渚への態度を見て、焦っているのか?

潤の瞳から冷たさが消え、興味深げな光が宿る。

少し棘があったっていい。

いつも言いなりの女なんか、好む男はいないのだから。

面白がらせてくれて、かつ自分を愛しているのなら、なお好都合だ。

朝食は北条家で済ませ、食後、二人はドレスショップへ向かった。

由理恵が3ヶ月も前から大金をはたいて用意したドレスだ。文句なしに素晴らしく、メイクも加われば、かなりのものだろう。

代金は払い済みで、品物も届いている。着ようが着まいがもうそれは由理恵自身が決めることだ。彼女は期待を胸に、メイクスタッフに連れられて準備を始めた。

潤のためではない。自分自身のために、美しい姿でありたい。

ところが、準備を終えて戻ってみると、そこに飾っていたはずのドレスが消えていたのだ。

その代わりに目に入ったのは、ウェディングドレスを身に纏い、鏡の前で嬉しそうに回っている渚の姿だった。

「潤、似合ってる?

こんなに素敵なドレス、今日を逃したらもう二度と袖を通すチャンスなんてないもん。

この後はちゃんと北条さんに付き添ってあげて。私はあなたの幸せを見るだけで十分だから。それに、結婚式当日は、泣きも騒ぎもせずにちゃんとお祝いするから……」

愛する女性からこんなにも健気で深い愛を語られ、感動しない男などいるのだろうか?

もちろん、潤だって例外ではない。

冷たかった彼の瞳が、一瞬にして赤く熱を帯びる。「渚……」

渚も感情を溢れさせた。「ごめんなさい、潤。私たちが出会うのが遅すぎたみたい。それに、実家も釣り合わないから、あなたと一緒になることはできないの……」

見つめ合う二人を前に、周囲のスタッフたちは無言で視線を落とした。

由理恵も同じように黙り込み、存在を消すのが正解だと分かっていた。しかし……

「潤。遠藤さんと、1日たりとも離れたくないの?

だったら、20日後の結婚式は遠藤さんが花嫁になればいいよ。このドレスは、私から二人へのささやかな結婚祝いってことで……どうかな?」

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