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第2話

Author: みそ煮
last update publish date: 2026-02-20 15:48:40

瀬奈が一馬を連れてやってきたのは、神宮司家の近くにある記念公園だった。

暖かい春の風が吹き抜け、瀬奈は何だか懐かしい気持ちになった。

「幼い頃、ここで湊斗とたくさん遊んだわね……」

湊斗は最初から瀬奈を嫌っていたわけではなかった。

二人は同い年で、同じ小学校に通っていた。中学に入る前までは、お互いの家を行き来してよく遊んでいた。

いつからだろう、二人の関係が変化したのは。

中学に上がり、別々の中学校へ通うこととなった二人は、これまでよりも会う頻度がかなり減った。それでも瀬奈の湊斗への想いが変わることはなかった。

彼女は毎日のように湊斗を想い続け、神宮司家に定期的に手紙を送った。しかし彼からの返事は返ってこなかった。会いたいと言っても忙しいとはぐらかされるばかり。

神宮司家を直接訪れても門前払いされた。

そんな状況が数年続き、高校一年生になった頃、瀬奈はようやく湊斗に会うことができた。

その日、いつものように神宮司家を訪れていた彼女は、たまたま門の前に立っていた彼を見つけたのだ。

およそ三年ぶりに見る彼の姿。最後に見たときよりもだいぶ大人っぽくなっていた彼に、瀬奈は涙がこみ上げてきた。そして再び燃え上がる彼への思い。

瀬奈は湊斗に駆け寄った。

「湊斗!久しぶりね!会いたかったわ!」

「……」

久々に会った彼は、以前とは別人のように瀬奈に冷たい目を向けた。

「どうしてこれまで会ってくれなかったの?私たちは婚約者なのに!私、あなたに会えなくてとっても寂し――」

「俺に触るな」

湊斗は伸ばされた瀬奈の手を無慈悲に振り払った。

「湊斗……?」

瀬奈はどうして彼がそのような態度を取るのかがわからなかった。

困惑していたそのとき、瀬奈の背後から女の明るい声が聞こえた。

「――湊斗!お待たせ!」

振り返ると、瀬奈と同い年くらいの女性が立っていた。

「……優里亜」

優里亜と呼ばれた彼女は、突然湊斗の腕にしがみついた。

瀬奈は固まった。婚約者である彼女ですら、そのような行動はとったことがない。

湊斗は瀬奈と違って彼女の手を振り払わなかった。二人の関係は、ただの友人同士というにはあまりにも距離が近すぎた。

だとしたら恋人だとでもいうのか。瀬奈は信じたくなかった。湊斗は彼女の婚約者だったからだ。

何もできずにただじっとしていると、湊斗の腕にしがみついていた彼女の視線がこちらに向けられた。

「あなたは誰?湊斗の知り合い?」

「こんな女は知らない」

「そう、早く行きましょう。今日は映画のあとホテルに行く約束でしょう?」

そんなやりとりをしながら、二人は呆然とする瀬奈から背を向けて立ち去って行った。

彼女は何が起きたか理解が追いつかなかった。腕を組みながら歩いているその姿は、とても仲の良い恋人同士のように見えた。

***

それからというもの、湊斗はプレイボーイとして多くの女性と浮名を流した。

高校生でありながら、彼は相手の年齢身分問わず様々な女性と関係を持った。高校の同級生、部活の後輩、年上の社会人の女性。まだ十七歳とはいえ、類稀なる彼の美貌は、この世のすべての女性を虜にした。

高校生になった湊斗は、いつも横に女を連れて歩いていた。その状況で瀬奈と目が合っても、気にすることなく別の女性との逢瀬を楽しむのだ。いつしか彼は、誰とでも寝る男として知られることとなった。

そんな彼が唯一手を出さなかったのが、許嫁であった瀬奈だった。

彼女は学生時代、そのことに悩んだ。自分には女性としての魅力がないのだろうかと、これまで以上に外見に気を配ったりもした。

そんな瀬奈を憐れに思った周囲の人々は、彼女を励ました。

「神宮司様はお嬢様のことを大切に想っていらっしゃるんですよ。今遊んでいらっしゃる女たちは遊びにすぎません。――瀬奈お嬢様だけが、神宮司様の妻となれるのです」

「……!」

湊斗がいくら遊んでいようと、彼の妻となれるのは自分だけ。その言葉が瀬奈の励みとなった。

「そうよね……いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないわ……湊斗の妻に相応しい女性にならないと!」

瀬奈の中で婚約破棄という選択肢は最初からなかった。彼が自分のことを嫌う理由はわからなかったが、努力していればきっといつかは気持ちを返してくれる。

そして、瀬奈は湊斗と結婚した。

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