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第1123話

Author: リンフェイ
「うん」理仁は愛おしそうに唯花に返事をした。

唯花は理仁がくれたあの花束をローテーブルの上に置き、携帯を取り出してロマンチックさ溢れる部屋の写真を撮り始めた。理仁との愛を残しておくことができる。

写真と動画を撮り終わってから、最後に夫婦二人で何回も写真を撮った。

この時、唯花は本当に嬉しそうにしていた。

「上の階も見に行こう」

唯花は笑って言った。「私たちの部屋もあなたがこんなふうにレイアウトしているの?きっと綺麗でロマンチックなんでしょうね。すっごく嬉しいわ」

理仁は笑うだけで何も言わず、彼女の手を繋いで、上の階へと連れていった。

唯花の予想通り、あの赤い絨毯は本当に彼らの部屋の前まで続いていたのだった。

部屋のドアを開けて中に入ると、唯花のニヤニヤは収まることができなくなった。

部屋の中は一階の装飾と大差はそこまでなかったのだが、愛の言葉が多く書かれていた。こんなにロマンチックな部屋の中で、美味しいワインを飲めば、もともと炎のように燃え上がっていた感情がさらに最高点に達することだろう。

この夜はロマンチックな美しさに溢れた、愛情のフルコースだった。

朝日が東の空から顔を出し、真っ暗な夜が明るい朝へと交代して、新しい一日がまたやって来た。

唯花はいつも起きる時間には目を覚まさなかった。

彼女はこの時まだ美しい夢の中に浸っていたのだ。

隣で寝ていた夫はいつも通りの朝だった。彼は目を開けて、隣で静かに眠る、幸せに満ちた美しい顔の唯花を見つめ、目元を緩めた。彼女を見つめているうちに、我慢できずその顔に近づき唇にキスをした。

「唯花、おはよう」

理仁は彼女にキスを済ませると、耳元で低く優しい声で朝の挨拶の言葉を囁いた。

彼女は甘い夢の中にまだ滞在中だったので、彼のその言葉が聞こえていなかった。

「唯花、昨晩、俺はちょっと羽目を外しすぎたかな。そのまま寝ていて、俺は仕事に行って君のためにお金を稼いでくるよ」

理仁は彼女の耳元でそういくつか言葉を囁いてから、また彼女の頬に何度もキスをし、名残惜しそうにベッドから離れた。

三十分後。

結城理仁氏は、かなりスッキリと爽やかな表情で下へと降りていった。

この時、吉田が階段の下に待機していて、理仁が降りてくるのを見ると、恭しく言った。「若旦那様、朝食のご用意が整っております」

理仁はひとこ
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