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第1376話

Auteur: リンフェイ
「調べてないわけ?」

悟は慌てて言った。「調べてないよ、君が言ってただろ、俺が何でもかんでも把握しているのに、君は何も知らない状況でいるのが嫌だって。だから、君に直接尋ねるしかないよ、人脈は使っていないんだ。ただ社長夫人が君のところにいるんじゃないかって予想しただけだよ。君たちは仲の良い親友同士だし、彼女が気が塞いだ時には、普通君に相談するじゃないか」

「確かに唯花は私のところにいるわよ。結城さんに伝えて、彼女はここに泊まるから、暫く家には帰らないって」

悟はそれに応えた。「わかったよ、後であいつに伝えとく。明凛、他に俺に何か言いたいことってある?」

「あなたのところの社長さんを反面教師にして、あなたは彼に学ばないようにしなさい」

悟は笑って言った。「そこは安心してくれ、ちゃんとあいつを反面教師にしてるからさ。あいつが社長夫人を怒らせたことは、俺は絶対にしないよ」

「まあ、あなたのことは私も別に心配してないけどね。悟、大好きよ、愛してるわ」

「俺もだよ」

明凛は言った。「先に結城さんに連絡して。タラタラしてたらきっと発狂しちゃうでしょ。唯花のことをここまで愛してるってのに、また些細な事で二人の仲をかき乱すんだもの。私はお風呂に行ってくるわね」

悟は名残惜しそうに電話を切った。

そしてすぐに理仁に電話をかけ、繋がるとこう言った。「君んちの奥さんはまた俺の明凛が奪ってしまったようだ。また、俺の明凛を取られちゃったな」

「今すぐ唯花さんを迎えに行くから、牧野さんの隣の席はすぐに空くぞ」

理仁も唯花が牧野家にいるだろうと予想していた。

彼は義姉に尋ねてみて、唯花が姉の家にはいないことがわかったので、きっと牧野家に行ったのだろうと思ったのだ。

姫華のところには尋ねていない。緊急事態でない限り、理仁は姫華に尋ねたくはないのだ。

「うちの明凛が君に伝えてくれって、お宅の奥さんは彼女のところに数日泊まってくってよ。特に用がないなら、奥さんの邪魔をしないほうがいいと思うぞ」

理仁は顔をこわばらせた。「俺の妻だぞ、俺の家こそが彼女の居場所だ。今から迎えに行く」

そう言い終わると、彼は悟の電話を切ってしまった。

悟は彼に、牧野家には二匹の狂暴な犬がいると注意しようと思っていた。わざわざその犬たちにちょっかいを出さなければ、吠えたりすることはないが、もし
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