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第2話

作者: ジャイアン
3日後は、俺の26歳の誕生日だった。

午後6時40分、凛花は時間通りに現れた。

彼女は俺の好きな白いチューリップの花束を抱え、もう片方の手にはケーキを下げていた。

「時間見てよ、遅刻してないでしょ?」

俺は少し笑った。

彼女は眉を上げる。

「やっと笑った。この数日、ずっとこの世の終わりみたいな顔してたじゃない」

姉と健も時間通りに到着した。

凛花はプレゼントを俺の前に押し出した。

ずっと気になって見ていた腕時計だった。

「この前ショーケースの前を通った時、あんたが何度も見してたから、好きなんだなってわかったのよ」

彼女は俺の腕にそれを着け、指の腹で手首をこすった。

「湊、私を手放さないことね。あんたのそんな面倒くさい習慣、他の誰が覚えてくれるっていうのよ」

健が横から冷やかす。「お前らさっさと入籍しろよな。毎日毎日見せつけやがって」

その瞬間、俺は本当に心が揺れた。

もしかしたら、新居の件は水に流せるかもしれないと。

ケーキにナイフを入れた途端、凛花のスマホが鳴った。

着信を見て、彼女は出なかった。

2度目の着信。

彼女はスマホを裏返してテーブルに置いた。

「今日は誰の電話にも出ないわ」

俺は顔を上げて彼女を見た。

彼女は笑いかけてくる。

「言ったでしょ?今日は主役のあなたが一番だって」

だが、続いて姉のスマホが鳴り出した。

電話を切った後、姉の顔色は少し険しかった。

「陽向が藤井茜(ふじい あかね)から結婚式の招待状を受け取って、ヤケ酒飲んでるみたい」

藤井茜。陽向との婚約を破棄した、彼の元婚約者。

健のところにも音声メッセージが届いた。

陽向が息も絶え絶えに泣いている声が響く。

「来ないでくれ……俺、急に自分がすごくダメなやつに思えてきて……」

姉はすでに上着を手に取って立ち上がっていた。

「ちょっと見てくる」

健も一瞬ためらった後、立ち上がった。

「俺も一緒に行くよ」

凛花は動かなかった。

彼女はわざわざ魚の身をほぐして、俺の皿に入れてくれた。

「あの二人がいれば十分でしょ」

俺の心の中のわだかまりは、少しだけ押し殺された。

しかし10分後、彼女はまたスマホを見始めた。

3度目の時、俺は言った。「行きたければ行けばいい」

彼女は眉をひそめた。

「行くわけないでしょう?メッセージを返してるだけよ」

5分後、手洗いから戻ってきた彼女の手には、車のキーが握られていた。

「やっぱり、ちょっとだけ様子を見てくる」

俺は彼女をじっと見つめた。

「さっき、今日は誰の電話にも出ないって言ったよな」

「わかってる」

「それでも行くのか?」

彼女は少しイライラした様子を見せたが、すぐにそれを抑え込み、身をかがめて俺を抱きしめた。

「陽向、飲みすぎて詩織じゃ押さえきれないのよ。健も吐いてるって言うし。病院に送るだけだから、長くても30分で戻るわ」

そう言い残し、彼女は俺の額にキスをした。

「ケーキ、一切れ残しておいてね。戻ってきたら続きをお祝いしましょ」

ドアが閉まった。

30分が過ぎた。

1時間が過ぎた。

店員が入ってきて、料理を下げるか尋ねた。

「下げてください」と俺は言った。

彼がケーキを片付けようとした時、慌てて戻ってきて、後ろからデリバリーの配達員を連れてきた。

「長瀬様、申し訳ありません。同じ店で同じアカウントから二つの注文がありまして、システム上で宛先の備考が逆になっておりました。この大きなケーキはグランドホテル行きで、こちらの小さなものがお客様のものです」

12インチのケーキの上にはポラロイド写真が敷き詰められ、真ん中にはチョコレートのプレートが立てられていた。

【お帰り、陽向。嫌なことはリセット。これからは私たちがついてるよ】

注文者は、柊凛花。

ちょうどスマホの画面が明るくなった。

健がインスタのストーリーを更新した。

誕生日の帽子を被った陽向が真ん中に座り、姉が彼に酒を注ぎ、健が肩を組んでいる。

凛花は彼の後ろに立ち、うつむいて傾いた帽子を直してやっていた。

キャプションには一言だけ添えられていた。

【過去は過去、ここからリスタート】

俺は手首のシルバーの腕時計を見下ろした。照明の下で、やけに眩しく光っている。

彼女は俺の好きなものを忘れたわけではなかった。

サプライズを用意していなかったわけでもない。

ただ、別の人間が何を必要としているかを、同時に覚えていただけなのだ。

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