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俺の居場所を彼に譲った日から
俺の居場所を彼に譲った日から
作者: ジャイアン

第1話

作者: ジャイアン
凛花はドアのスマートロックを見つめ、なんと笑い出した。

「わかったわよ。オーナーの権力発動ってわけね」

彼女は下を向き、シューズボックスの一番下から俺のスリッパをもう一足取り出して、足元に投げた。

「とりあえず靴を履き替えて。今日一日中ホームセンターを歩き回って、足痛いでしょ?」

あまりにも自然な口ぶりだった。

俺の靴のサイズ、胃薬の場所、コーヒーには砂糖を入れないこと、彼女はすべて覚えている。

だが、そのすべてを覚えながら、同時に別の男を俺の新居に住まわせることもできるのだ。

陽向はうつむき加減でスーツケースの持ち手を引いた。

「湊が嫌なら、やっぱりホテルに戻るよ。ただ驚かせたかっただけで、みんなを険悪にしたいわけじゃないんだ」

凛花は手を伸ばし、キャリーバーを押さえた。

「荷物も重いんだから、そんな無理しなくていいの」

俺は視線を上げた。

「帰らせろ」

彼女の顔から少し笑みが消えた。

「湊、彼は婚約を破棄されたばかりなのよ」

「それで?」

「だから、今はすごく落ち込んでるの」

「それはそいつの問題だろ」

凛花の眉が瞬時に寄った。俺がそこまで直球で言うとは思っていなかったようだ。

姉の詩織が先に口を開いた。「小さい頃、陽向の家で両親が喧嘩した時、いつもあんたの部屋で寝てたじゃない。大人になったからって、数日泊まるくらいで急に他人行儀にならないの」

健も俺を引っ張る。

「元々、お前の付添人をやるために帰ってきたんだぜ。数日前乗りして、引っ越し祝いを兼ねるってことでいいじゃないか」

俺は陽向を見た。

「いつ引っ越してきた?」

「5日前だよ」

「誰の許可で?」

彼は無意識に凛花を見た。

凛花もあっさりと認めた。「私よ」

俺は笑った。

「この半月、ずっとプロジェクトに追われてるって言ってなかったか?」

「仕事だってちゃんとやってるわよ」

「ベッドマットは?」

彼女は少し言葉を詰まらせた。「……ついでに試しに行ったの」

「カーテンは?」

健が小さな声で言った。「俺が付き合った」

俺は再び姉を見た。

彼女もあっさりと認めた。「私の『出張』はね、彼がアパートを引き払って引っ越すのを手伝うためだったの」

三人の人間、三つの「忙しい」、そして三つの嘘。

この半年、俺は一人で建材市場を回り、タイルのサンプルを抱えて満員電車に乗り、夜中にキャビネットのドアの色の写真をグループLINEに送っては、翌日になって凛花からの「どれでもいいよ」という適当な返事をもらっただけだった。

彼らは時間がなかったわけじゃない。

ただ、その時間をすべて陽向に使っていたのだ。

陽向はまだ弁解していた。「俺が言わないでって頼んだんだ。湊はもうすぐ結婚するし、俺のゴタゴタで煩わせたくなかったから」

凛花がすぐに口を挟んだ。「聞いたでしょ?陽向はあんたに迷惑をかけるのを気にしてるのよ」

俺は彼女を見つめた。

「なら、俺はこいつに感謝でもしろって言うのか?」

彼女は言葉に詰まったが、すぐにまた笑い、自ら俺の胸に飛び込んできた。

「はいはい、私の言い方が悪かったわ。あなた、そんなに露骨に嫌な顔しないでよ」

俺は顔を背けて避けた。

彼女は怒ることもなく、振り返って陽向の二つのスーツケースを持ち上げた。

「私が彼をホテルまで送っていくわ」

俺のそばを通り過ぎる時、彼女は声を潜めた。

「夜、チョコレートプリン買ってくるから。昔からあれ食べると機嫌直ったでしょ。今更効かないなんて言わないでよね」

彼らが去った後、俺はしゃがみ込んで主寝室を片付けた。

ナイトテーブルの裏に、引っ越し業者の伝票が挟まっていた。

日付は5日前。

出発地はホテル・アルファ、到着地はここ。

備考欄にはこう書かれていた。

【長期滞在予定、荷物多め、取り扱い注意】

受領人のサインは、柊凛花。

裏返すと、引っ越し業者が赤いペンで囲んだ一文があった。

【主寝室の家具は事前に撤去済み。即入居可】

その文字を見つめながら、俺はふと、5日前にグループLINEで「新居の片付けはいつにする?」と聞いた時のことを思い出した。

三人は皆、忙しいと答えた。

いわゆるサプライズとは、陽向が帰ってきたことではない。

彼らがすでに俺の代わりにすべてを決め、ただ俺が笑って受け入れるのを待っていたことだ。

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