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第119話

مؤلف: 星柚子
奈穂が「必要ない」と言ったのなら、正修は自然とその意思を尊重した。

奈穂は正修を見つめ、ふいに口を開いた。「……私ね、北斗にはもう何の感情もないの」

あるとすれば――嫌悪だけ。

正修は自分と北斗のことについて何も言わなかったけど、今の自分と正修の関係性を考えれば、話しておくべきだと思った。

相手が他の誰かなら別に気にもしなかった。だが北斗は――五年付き合った元恋人なのだから。

どんな形であれ、けじめは必要だ。

正修は一瞬だけ目を見開き、それから口元を僅かに緩めた。「分かってる」

奈穂も、つられて笑った。

静かな風がそっと吹き抜ける。正修は彼女を見つめ、もう一度口を開いた。

「……奈穂」

奈穂の心臓が、瞬間ぎゅっと跳ねた。

これまで彼はずっと「水戸さん」と呼んでいた。最初は礼儀正しく、そのうち柔らかく、親しみを込めた響きになっていった。

だが――「奈穂」と呼ばれたのは、初めてだ。

今まで、そんなふうに自分を呼ぶ人は他にもたくさんいた。

なのに今、彼の口からこぼれたその二文字は、何よりも温かく、優しかった。

「君の過去なんて全く気にしていない、なんて言えば嘘に
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