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第2話

Author: アキ
二人は強く抱き合い、キスを重ねる。互いを骨の髄まで刻みつけようとするかのように、周囲のすべてが無に帰していく。

晶はその場に立ち尽くしていた。手足が氷のように冷たくなる。全身の血の気が引き、次の瞬間には一気に逆流して、目眩がした。

三年前のあの時、もう心は死んだと、もう痛むことはないと思っていた。

しかし、違った。

死んだはずの心でも、まだこれほどまでに切り刻まれる痛みを感じるのだ。

すべては、いつから変わってしまったのだろう。

十六歳。彼はクールで誰より優秀な男子生徒で、晶は眩しいほど自由奔放な学園のマドンナだった。

彼は耳を赤くしてラブレターを差し出した。「晶、俺と付き合ってくれ。ずっと、好きでいるから」

十八歳。受験が終わった日、彼は全校生徒と教師の前で、彼女への愛を世界に向けて宣言した。

二十二歳。会社を継いだばかりの頃、どんなに忙しくても必ず晶を迎えに来た。顔を見ないと落ち着かないのだと言って。

二十五歳。盛大な結婚式で、彼は片膝をつき、目を真っ赤にして言った。「晶、この先俺が愛するのは、君だけだ」

誰もが言った。旬は晶のことになると周りが見えなくなる、と。

けれど結婚三年目、すべてが変わった。

帰りは遅くなり、スマホのパスワードは変わり、知らない香水の匂いがするようになった。

そしてついに、晶の追及に耐えられなくなった彼は白状した。藤波佳奈という女子大生を愛してしまった、と。

魂が響き合うのだと言った。

こんな情熱もときめきも、初めてだと言った。

離婚してほしい、財産は何もいらない、と言った。

晶の世界は、その瞬間に崩れ落ちた。

彼女は信じられなかった。

一生好きでいると誓ってくれたあの少年は、酒の席では自分の代わりに杯を干し、自分のために拳を振り上げ、共に泣き、笑ってくれた、あの旬は彼女にああいう言葉を言ったなんて。

晶は泣いた。喚いた。取り乱した。すべてのプライドを捨てて、彼に縋りついた。

けれど旬は、冷たい目で言った。「晶、すまない。もう愛していないんだ」

晶は狂ったように佳奈の大学を調べ上げ、乗り込んで大騒ぎを起こし、「略奪女」のレッテルを完全に貼り付けた。その結果、佳奈は大学から退学勧告を受けた。

佳奈は晶を憎んだ。車で晶を撥ね、左脚をタイヤで轢いた。

激痛の中、晶は見た。車内に座る佳奈の、怨念に満ちた目を。そしてそのまま、車は走り去った。

血だまりの中に倒れながら、最初に浮かんだのは通報することだった。佳奈を刑務所に送ること。

けれど旬は、出張先から夜通し車を飛ばして戻り、病室で晶の前に跪いた。初めて、彼女の前で目を赤くした。晶を心配してではない。佳奈を許してくれと懇願するために。

「晶、頼む……あの子を許してやってくれ。まだ若いんだ、刑務所になんか入れられない……俺が悪かった、本当に間違っていた。

離婚はやめる、家庭に戻る、これからは君を大切にして、償う!佳奈を許してくれるなら、俺は何でもする」

その瞬間、晶は知った。十数年愛し続けた男が、他の女のために惨めに懇願する姿を。

これが、心臓をえぐられるということなのだ、と。

それでも晶は、その条件を呑んだ。彼を愛しすぎていたから。

それからの三年間、旬は本当に佳奈と連絡を取らなかった。

スマホのパスワードを晶の誕生日に戻し、定時に帰宅し、リハビリに付き添い、晶のやりたいことすべてに寄り添った。

誰もが言った。旬は改心した、と。

けれど晶だけは知っていた。彼が夜中に一人でベランダに出て煙草を吸い、スマホの中の佳奈の写真をぼんやり眺めていることを。

よく酔い潰れて、苦しそうに晶を抱きしめながら、「佳奈」と呟くことも。

贈り物でさえ、いつも佳奈の好みそうなデザイン。

月日は流れ、晶の脚は治った。歩いても、もう支障はない。

けれど晶は知っている。旬の心の中のあの人は、一度も去ったことがない。

そして今、彼の目に隠しきれない情熱と愛が燃えているのを見て、晶は思った。

この三年間は、なんてひどく悪趣味な茶番だったのだろう。

あの二人は深く愛し合い、どんな障害があっても抱き合おうとしている。

そして自分は、真実の愛を引き裂き、しつこく縋りつく悪辣な正妻に成り下がった。

なんて滑稽で、なんて惨めなのだろう。

もう見ていられなかった。踵を返し、よろめきながらエレベーターへ向かう。

涙で視界がぼやける。乱暴に拭っても、拭っても、後から後から溢れてくる。

エレベーターは来ない。晶は向きを変え、非常階段へと歩いた。

重い防火扉を押し開けた瞬間――横から大きな手が伸び、口を塞がれ、隣の用具室へと引きずり込まれた。

さっき旬に殴られた、あの酔っ払いだった。

「クソ女。さっきの男、お前の旦那だろ」

酔っ払いは酒臭い息を吐きながら、晶を冷たい壁に押しつけた。

「俺をあんなにボコボコにしやがって、大勢の前で恥かかせやがって!その代償、きっちり払ってもらうぞ!」

晶は必死にもがいた。殴り、蹴り、暴れた。けれど女一人の力で、狂った大男に敵うはずがない。

ドン、と腹に重い一撃が入った。

晶は呻き、体を折る。

「これはお前の旦那が俺を殴った代償だ!いい格好しやがって!」

酔っ払いは罵りながら、狂ったように殴りつけてきた。拳、平手が、雨のように体と顔に降り注ぐ。

意識が遠のいていく。晶は本能的に体を丸め、頭と顔を庇うことしかできない。

最後には、ぼろ布の人形のように冷たい床に崩れ落ちた。口元から血が滲み、視界が暗く霞んでいく。

このまま死ぬのか、と思った時、物音を聞きつけた通りすがりの人が飛び込んできて、晶を助け出した。

担架に乗せられた時には、もう意識が朦朧としていた。

病院の救急外来。診察を終えた医師が、険しい顔で言った。

「全身にひどい打撲傷があります。肋骨にヒビが入っている可能性もあるので、ご家族の署名をいただいてすぐに入院手続きを」

看護師が晶のスマホを取り、お気に入りに登録されていた番号に発信した。

呼び出し音が、長く続いた。ようやく繋がる。

向こうは、静かだった。

やがて聞こえてきたのは、押し殺したような――聞いているだけで耳が熱くなるような、生々しい音。

女の甘い喘ぎ。男の荒い息遣い。そして、規則正しく軋むマットレスの音。
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