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願ったり叶ったり

Author: 結城慎二
last update publish date: 2026-06-19 06:00:10

「お前たち今日からこの村の住人な」

「え!? ちょ、待てくださいよいきなり」

 と、抗議の声をあげたのは紅一点のオギンだ。

 判る、判るよ。

 いきなりはやっぱダメだよね、心の準備くらいさせて欲しいよね。

「──っていうか、こっちも事の成り行きに戸惑ってるんですけど」

「ああ、そうだな。こっちの事情も説明しなきゃいけないよな」

 と、前置きして話してくれたのはおおよそこんな経緯だ。

 放浪のキャラバンとはいえ、拠点というのは存在していたんだけど、僕らと同じで運悪く拠点にしていた街が襲われて壊滅してしまったという事だ。

 僕らと違うのは野盗に襲われたんじゃなく、軍による略奪だったらしい。

 ひどいことする軍隊だなぁ。

「で、俺たちも新しい拠点が必要になっているわけだ。できれば内乱で無法化し始めている国内で、比較的安全な拠点が欲しい」

「ここは去年野盗に襲われた村ですよ。安全ですか?」

「比較の問題だよ。そりゃあ街

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    楽しい読書で判ったこと-前篇-

     読み書きを習い始めて判ったことは、この国の文字が表音文字だってこと。  それもアルファベットより仮名文字に近い。  これはすごくありがたい。  なにがありがたいって表意文字より圧倒的に覚える文字が少なくて済む。  そして仮名文字の最大の特徴は文字の並びで発音・読み方が変わらないってことだ。  「knight」で「k」を発音しないとか、ある意味余計なことを覚えなくて済む。  ただし母音だけで三十あるとか、拗音促音濁音に半濁音まで発音全部に文字が当てられているのが、二十六文字しかないアルファベットや五十音と呼ばれる仮名文字との違いだ。  最初はどの文字がどの発音を表しているのかを覚える。  ザイーダに指さされた文字の発音を答える。  間違えると罰ゲームで、僕は腕立て伏せや腹筋。  子供達は広場を一周だ。  なかなかにスパルタ教育だ。  次に地面に棒切れで黙々と文字を書いて覚える「書き取り」。  次に絵物語を読む……といった具合でまさに初等科教育さながらだ。  三軒目の家が完成する頃には四人とも一通り書物が読み下せるようになっていた。  なるほど、確かに僕は人よりちょっと優秀にしてもらっている。  前世の経験も生きているのだろうけど、四人の中で一番物覚えが早かった。  さて、大量の書物を読んで判ったことは、まずこの国がウズルマサル大陸にある八カ国(と、一自治区)の一つリフアカ王国だってこと。  国名は知ってたけどね。  大陸の南東部に位置していて、四カ国と国境を接している。  そのうちの一つがジョーの出身国ラシュラリア王国だ。  この村は王国内の北北西、二つの山脈の麓に当たる僻地で、山脈を超えればブチーチン帝国。  まぁ、今まで山脈を超えて行き来が行われた記録はないらしいので必然的に山脈からこっち側が王国で向こう側が帝国という国境線が引かれているようだ。

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    輝け! 空高く

     ジョーたちが村を出た後も村の再建は日常として続いている。  住む場所は人間の基本だからできるだけ速やかに取り戻さなきゃいけない。  多少体制が変わってはいるけれど。  まず、新しく焼きあがったルンカーで新しい窯を作った。  前の窯よりふた回り大きい窯を作った事で、生産スピードが上がった。  粘土質の土でドームを作っただけのものと違って、焼きあがるたびに補修する必要がなくなったのも能率が上がった理由だ。  ヘレンが雑木林に入る時に護衛につくのがオギンの役割として割り振られた。  これによってジャリとジャスの仕事が中断される事がなくなって、これも生産速度の向上につながっている。  ジャスは時々ルダーについて行って畑の管理を分担してる。  もちろん僕もたまに畑には出向くけど。  畑にはジョーのキャラバンから仕入れたデーコンの種などを植えたのでルダー一人に任せるというわけにいかなくなったからだ。  仕入れたのは葉物野菜や根菜なので、収穫サイクルが早い。 「だからと言ってフル回転で畑を使っていたら土が痩せるけどな」 それ以上に休耕地化している畑を耕すのが一苦労だ。  農耕用の動物が欲しいな。  サイズ的にはデヤール辺りが候補にあげられるけど、あれって飼い慣らせるんだろうか?「試してみるか?」 と、言ったのはサビー。  ガーブラと一緒に時々雑木林の中に入って狩をしてくる。  成功率は神様からちょっぴり優遇してもらっているはずの僕よりちょっといい。 …………。 ねぇ、リリム?  僕、本当に優秀にしてもらってるの?「はずよ」 ……はず……ですか?  確証はないんですか?  本当にチート的優遇じゃないんですね……。 もちろん、森の奥の主の話はしているので、彼らも奥へは行かない。  それに家を建てるのが優先なので、彼らも狩に専従しているわけじゃない。  その二軒目の家が完成して、三軒目の縄張りを終えようとした頃に村に新しい住人がやってきた。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    実は結構八方塞がりだったりする?

    「選択肢は考えてるんだろう?」「まぁ、確かに腹案はいくつか考えている」「言ってみろよ」「まず、おとなしく従う」「そんな気ねぇだろ」「確かにね。この村の状態でそんなことできるはずがない」「次は?」「村を放棄して逃げる」「村の再興を始めた段階でその選択肢もないな」 だよね。「こっからが本題で、大前提は独立自治ってことなんだけど……」 どう言う手段で独立自治を勝ち取るかってことが問題なんだ。  A案は野盗に襲わ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    失われた○○年とはまだ呼ばれていなかった

    「その言い方だと亡くなったのは1999年?」「2000年だよ」 そうか、2001年から二十一世紀か。  ……という事は、戦中派?  そりゃ、百の姓を地でいけるワケだ。「ジャンは時代が違うのか?」「ああ、僕は2017年だった」 てなことでそれからはジャリが戻ってくるまでの間ずっと「二十一世紀がどんな時代だったのか」を根掘り葉掘り聞かれたワケだけど……そうよね、すっかり暗くなっちゃうよね。  ルダーの前世はまだバブルの名残が残ってて世紀をまたげば不況も終わると思ってたかもしれないもん

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    窯の入れ替え

     一人で出来る事はたかが知れている。  僕が冬の間にやっていたことといえば、食うことと寝ることとリリムを相手に冬の夜長に時間を潰すことだけだったと言っていい。  まさに生きるのに精一杯ってやつだ。  協力者が増えると出来る事が増える。  たった七人増えただけで出来る事は飛躍的に増えた。  けれど人間にできる作業量ってのはやっぱりたかが知れていて、やりたい事はたくさんあるのに時間がない。  そこで大切になるのが作業に優先順位をつけて時間を管理する事なわけだ。 二日目の農作業は午前中に切り上げて、午後からは炭焼きの窯

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    田舎じゃ文明の進化は感じにくい

    「ジャンは何を作ろうとしているの?」 カルホが疲れからか満腹からかは判らないけれど眠そうに目をこすりながら聞いてくる。「最初のルンカーで焼き窯を、その焼き窯でより強度の高いルンカーや食器なんかを作る」「食器?」 今世の村では食器は木製だった。  今使っている食器もみんなが持ち寄った木製の皿だ。  匙も木製。  もっとも、僕のは冬の間に自分で作った不恰好なものだけど。  これは推測だけれども陶磁器が生まれていないか普及していない文化水準であるということだ。  作れるなら商売にな

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