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魔法の恩恵

مؤلف: 結城慎二
last update تاريخ النشر: 2026-06-26 06:00:57

 宴がおひらきになり、僕は自宅に戻ってきた。

 …………。

 ぼろっちい小屋だけど。

 寝床にあぐらをかいてため息ひとつついたら、久しぶりに薪を囲炉裏にべる。

 炎が上がって部屋の中が明るくなったのを確認して、僕は書物を漁り出す。

 村の復興が始まってからこっち今までほとんど家の中で仕事してなかったし、あんまり気にしてなかったけど、室内の灯りは必要だよな。

 村が襲われる前はどうしてたっけ?

 ああ、日暮れとともに寝てたかも。

 そして日が登るとともに起き出して農作業だった。

 …………。

 今とほとんど変わってないや。

 あれ?

 冬の夜長はどうしてたかな?

 そんなこと気にもしないで暮らしてたな。

「僕も灯りの魔法くらい使えればいいのにさ」

 と、愚痴を言っても始まらないかと思いきや。

「仕方ないなぁ」

 と、天使の声……いやいや、妖精の救いの声が。

 リリ
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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    生まれのせいで考えたこともなかった

     例年、育つのを待つだけの夏から収穫までというのはそんなに忙しくない。  ……はずなんだけど、この町はもうずっと忙しい。  農作物の育成を見守り、新たな開墾を進め、収穫後に来る男爵との対決のための軍事調練とやることが多いからだ。  人口規模が百人を超え、みんなで作業を手分けできるようになったので、ここを乗り切れば楽になる……なんて楽観視していたのは会議まで。  僕は、ここだけじゃ忙しさが緩和されることはないんじゃないかと思い始めていた。「オギン」 暑さも和らいできた晩夏、僕はオギンに隣村まで行ってもらうことにした。「何を見てくればよいのでしょうか?」「畑の広さ、村の様子、周辺の地形あたりかな?」「ご自分で視察なさるというのはいかがですか?」 ……そいつぁ気がつかなかった。  僕は転生してから一度も村を出たことがない。  おぉ!  いいじゃん、いいじゃん!  それ最高!!「じゃあ、明日朝一で出発だ」「明日はラバナルに会いに行く日ですが」「そうか。じゃあ明後日だ。イラードに連絡しといて」「イラードを連れて行くんですか?」「いや、町をイラードに任せんの」「供は?」「え? オギンだろ?」「…………」「何か、問題でも?」「……いえ、お館様の仰せのままに」「道程三日って言ったっけ?」「歩いて行けばそれくらいですね」「じゃあホルスに乗って行こう。今時期なら畑仕事には使っていないし」 ということになって、翌日ラバナルを訪ねて隣村に行く件を話す。「──で、今後そういうことも増えると思うんで、十日に一度に変更してもらえませんか?」「む? ふむ……お主が村にこもっておっては見聞も広がらん。よかろう」「ありがとうございます」「いやいや、ワシもお主との話で新しい魔法の思案に時間を使いたくなっておった頃合いじゃ。等価交換じゃよ」

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    農業大臣

     これは領地経営の問題だ。  その都度、町をあげての防衛戦を余儀なくされる。  食糧生産は継戦能力の根幹だ。  日本は太平洋戦争中、南方戦線でひどい目に遭っている。  ニューギニア戦線など実に死者の九割が餓死という話があるくらいだ。  それを考えていると、籠城戦は町にとってジリ貧の悪手なんじゃないかと思い始めている。  進むも地獄、戻るも地獄とはこのことか。  進んで修羅の道に入るなんて、聞いてないよ!  神様ヘルプ! だよ。 それはいい。 僕は食料生産計画をルダーに一任する案を出す。「そんなに食料生産って重要なのですか?」 と、ピンと来ていないイラードに答えたのは、戦争経験者(ただし前世)のジョーだった。  必要性の詳細な説明をしてくれたんだけど、こりゃもうどう聞いても南方戦線に従軍していた経験談だべ。「当たり前のように食事を支給していただいていましたから、キャラバンではそんなこと全然気にしていませんでした」「嫌ってほど身に染みてるからな。食料だけは儲けを削ってでも確保していた」「俺も小さい頃、ひもじい思いをしたからよく判る。食うもの食ってないと腹に力が入らないんだ」 と、同じく(前世で)戦争体験のあるルダーがいうので、圧倒的に説得力がある。「冬の間に後背地の開墾をしたいところだけど、ここは山間地でもあって雪深い。防衛線の合間合間に開墾ってのは難しいだろうな」「合間は狩猟と雑木林の手入れだな」「ああ、それは俺も気になっていた。貴重な山林資源を村の復興のために随分と利用したんだろ?」 確かに。「牧畜の方は?」「クッカーの卵はもう売ってるだろ。配給するには数揃わないけどな。クッカーの食肉出荷は早くて三ヶ月後。こっちも配給品にするほどの数は無理だ。もっとも、各家庭で飼っているところもあるから、商品としては割に合わないかも。来年にはジップの乳が出荷できるくらいにはなると思う。肉はあと二年先かな?」 クッカーは復興前の僕ん家でも飼ってたからな。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    戦闘と食糧

    「それならまともな射撃戦ができそうですね」 と、ザイーダが言う。  イラードはやっぱり少し気に入らないようだけど、なんだ、フェミニスト的観点なのか?  それとも、女は銃後派なのかね?「ズラカルト男爵の春現在の現有戦力は大体三百人。最大動員数六百人と見られています」 と、オギン。  そんなに?「だが、それは領内全体の話だ。他領との領境に守備兵は必要だろう」「ここを単なる田舎村と侮っているだろうし、せいぜい二、三十人で威嚇すれば大人しくなるくらいに思っているだろ」 カイジョーの意見にジョーが同意する。「違いない。お貴族様は外聞もお気になされる。村相手に初手から全力なんてなさらねぇよ」 敬語風だけど、見下した感満載な言動だな。「緒戦は戦闘にもならねぇ。二度目も十中八九勝てるだろう。問題は本気で攻めてくる三戦目だな」 僕もそう思う。  収穫後、徴税にくる役人(たぶんオルバックJr.)を追い返すのがこちらの初手だ。  一度取って返したジュニアが手勢を連れて威嚇するのがカイジョーの言う緒戦。  いまだにこちらの人口規模も把握していないぐらいだから、こちらが武装して門から出てくだけで、一戦も交えることなく勝てるだろう。  それを追い散らしたら男爵の軍が動く。  これが実質的緒戦になる。  これが正規兵で二、三十人ってのがジョーの見立てた人数だろう。  で、町の戦力組はその程度なら十中八九勝てると踏んでいる。  この見解はカイジョーだけでなくイラードもオギンも同意見のようで、男爵兵を侮っているわけではなさそうだ。「じゃあ、この件は後日細部を煮詰めるってことで……」

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     主の森騒ぎのごたごたで延期していたジョーとの首脳会談は、主に会いに行く前日に朝イチで開かれた。  今日は絶対長丁場になる。  出席者は全員覚悟の前である。  ちなみに僕とジョー以外の出席者は前世持ちのルダー。  町の行政を任せているイラード。  軍事を任せるつもりでジョーが連れてきたカイジョー。  明日も僕を護衛して森に同行する予定のオギンの四人。  場所はお館囲炉裏の間。  まずは冒頭、イラードによる町の現状とオギンによる森の主についての報告。  質疑応答も含めて、これだけでたっぷり午前中を使い切った。  昼飯はジョーの執事カーゲ・ストゥラーさん夫妻とザイーダに用意してもらったちょっと豪勢な肉料理。  提供はジョーのキャラバン。  町の家畜はまだ出荷できるほど整備されていない。  そして、食べながら会議の続きだ。  昼食中の議題は男爵対応。  一時間ほどの昼食時間で、ジョーが収穫前にキャラバンを町に戻すことに決まった。  これで町の人口は百三十人を優に越すことになる。  キャラバンはその性格上男性比率が高く、戦闘力の高いものが多い。  現状、地の利以外で男爵に勝てそうなのは一部個人の戦闘力くらいだからね。「秋までふた月あまり。比較的手の空いている今のうちに軍事調練をしたい」 という僕の提案はカイジョーの全面的支持を受け、承認される。  その際、志願の女性弓兵も導入することになった。「最悪、投石兵でいい。白兵戦になったら退却させる」 日本でも古来「飛礫」「印地打ち」と呼ばれ、有効な戦闘手段だった。  ラバナルの石の弾丸は魔法を使った投石と言える。  お手軽安価な武器だ。  野球のように投げても数十シャルは飛ばせるし、投石器を使えば有効射程距離百シャルに届くかもしれない。  女性でも遠くまで投擲できるだろう。  僕の前世の

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    問題は一つ解決すると二つ増える

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