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魔法の恩恵

Penulis: 結城慎二
last update Tanggal publikasi: 2026-06-26 06:00:57

 宴がおひらきになり、僕は自宅に戻ってきた。

 …………。

 ぼろっちい小屋だけど。

 寝床にあぐらをかいてため息ひとつついたら、久しぶりに薪を囲炉裏にべる。

 炎が上がって部屋の中が明るくなったのを確認して、僕は書物を漁り出す。

 村の復興が始まってからこっち今までほとんど家の中で仕事してなかったし、あんまり気にしてなかったけど、室内の灯りは必要だよな。

 村が襲われる前はどうしてたっけ?

 ああ、日暮れとともに寝てたかも。

 そして日が登るとともに起き出して農作業だった。

 …………。

 今とほとんど変わってないや。

 あれ?

 冬の夜長はどうしてたかな?

 そんなこと気にもしないで暮らしてたな。

「僕も灯りの魔法くらい使えればいいのにさ」

 と、愚痴を言っても始まらないかと思いきや。

「仕方ないなぁ」

 と、天使の声……いやいや、妖精の救いの声が。

 リリ
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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    楽しい読書で判ったこと-後篇-

     いずれにしても科学技術を基礎にした前世文明の恩恵を得られる僕は戦略戦術で勝負ができそうだ。  なにせ神様のおかげで数千年の戦いの歴史が頭の中に入ってる。  伊達に歴史オタクじゃないぞ。  専門分野は日本史だけど。  それから文明を持っているのは人族だけじゃないようで、ナルフ、ドゥワルフ、タルル、グフリ、オルグなどの亜人がいる。  ちなみにどれもその種族の言葉で「人」を指す単語だ。  「アイヌ」がアイヌ語で「人間」を意味する単語なのと一緒だ。  僕ら人族は彼らにとって亜人という位置付けになるんだね、ちょっと混乱しちゃうかも。  ちなみに大陸を八つの国に線引きしているのは人族なんだけど、それぞれの種族で別の線を引いて国や地域が分けられているらしい。 …………。 複雑だね。  人種以外に知性を持ったグループがいて、魔族ってカテゴライズされているようだけど、外見的に一定のパターンがないらしく、人型の親から鳥型の子が生まれたりするんだって。  デビルマンのデーモン族的なアレなのかね?  そうそう、僕が前世の記憶を思い出した時リリムが言ってた神様の話。  基本的に一つの種族に一柱か二柱の神様が存在しているようだ。  他にも火の神様、水の神様みたいな存在があるようで、ここら辺りは八百万な感じだけれど、大きく違うのは実際に現世利益があることだ。  各種族は仲が良かったり悪かったりで普段はあまり交流がないらしい。  人族と一番友好的なのはドゥワルフ族で、魔族は敵対的。  その魔族とグフリ、オルグ族はある種の同盟を結んでいると文献に書かれている。  魔族とは別に魔獣という存在もあって、これは通常の動物と違って魔法と密接に関わっている存在を指すようだ。  具体的にはドラゴン(やっぱりいた)なんかがそれにあたる。  と、まあこれが五軒の家が建つ頃までに仕入れた知識だ。  その間ジョーは約束通り一度、新しい村人を連れてきて村の住人は二十人を超えた。  家が建つスピードと住人が増えるスピードがミスマッチで

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    楽しい読書で判ったこと-中篇-

     詳しい地図がないのでなんとも言えないけど、この村のさらに奥に行くつか集落が確認されている。  定期キャラバンはここを終点にしているから奥の集落は王国内であっても王国じゃない感じなのかもしれない。  前世風に言えば未開の少数民族って扱いだろうか。  王国は封建制で五爵位の貴族階級があるようだ。  上から伯爵・仲爵・叔爵・季爵・男爵。  この村はズラカルト男爵領内にあるから、まぁそんなもんだ。  王国の歴史は後継問題で乱世突入してるからもうそんなに重要じゃないんでさらっと読み飛ばしたけど、そこから考察できる文化水準は中世的だ。  ただし近世に片足突っ込んでいるところがある。  まぁでもこれは前世の時代区分を適用するのが間違っていると考えるべきだろうか。  まず、医療が進んでいる。  魔法頼みではあるけれど、医療水準は近代的レベルにある。  どうやら魔力を通して人体に働きかけて怪我や病気を治すため、人体構造に関してよく研究されているからだろう。  病気に関して言えば、科学技術が発達していないので原因が特定できず治療できない事例があるみたいだけど、怪我に関して言えば千切れた腕でも完治させられるようだ。  もちろん魔法使いの腕によるみたいだけど。  魔法技術が発達していることによって火器の代わりとして用いられていることも文献から判った。  火力的には室町末期、戦国時代水準だな。  魔法使いはその適性者が少なく、ほとんどが国に抱えられているようだ。  この辺りは誰でも引き金を引けば人が殺せる鉄砲と違って数を揃えられない欠点と言える。  でも、優れた魔法使いは速射もできるし大火力の攻撃もできるらしい記述があるから侮れない。  今、この国にはどれだけ魔法使いがいて、どの勢力に所属しているか?  そこら辺の情報収拾が必要だ。  伝説の大魔法使いは「空の星を落とした」とか語られてるけど、少なくとも近年の魔法技術では一撃で城壁を壊せるような破壊力はなさ

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     読み書きを習い始めて判ったことは、この国の文字が表音文字だってこと。  それもアルファベットより仮名文字に近い。  これはすごくありがたい。  なにがありがたいって表意文字より圧倒的に覚える文字が少なくて済む。  そして仮名文字の最大の特徴は文字の並びで発音・読み方が変わらないってことだ。  「knight」で「k」を発音しないとか、ある意味余計なことを覚えなくて済む。  ただし母音だけで三十あるとか、拗音促音濁音に半濁音まで発音全部に文字が当てられているのが、二十六文字しかないアルファベットや五十音と呼ばれる仮名文字との違いだ。  最初はどの文字がどの発音を表しているのかを覚える。  ザイーダに指さされた文字の発音を答える。  間違えると罰ゲームで、僕は腕立て伏せや腹筋。  子供達は広場を一周だ。  なかなかにスパルタ教育だ。  次に地面に棒切れで黙々と文字を書いて覚える「書き取り」。  次に絵物語を読む……といった具合でまさに初等科教育さながらだ。  三軒目の家が完成する頃には四人とも一通り書物が読み下せるようになっていた。  なるほど、確かに僕は人よりちょっと優秀にしてもらっている。  前世の経験も生きているのだろうけど、四人の中で一番物覚えが早かった。  さて、大量の書物を読んで判ったことは、まずこの国がウズルマサル大陸にある八カ国(と、一自治区)の一つリフアカ王国だってこと。  国名は知ってたけどね。  大陸の南東部に位置していて、四カ国と国境を接している。  そのうちの一つがジョーの出身国ラシュラリア王国だ。  この村は王国内の北北西、二つの山脈の麓に当たる僻地で、山脈を超えればブチーチン帝国。  まぁ、今まで山脈を超えて行き来が行われた記録はないらしいので必然的に山脈からこっち側が王国で向こう側が帝国という国境線が引かれているようだ。

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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    魔法の恩恵

     宴がおひらきになり、僕は自宅に戻ってきた。 …………。 ぼろっちい小屋だけど。  寝床にあぐらをかいてため息ひとつついたら、久しぶりに薪を囲炉裏に焼べる。  炎が上がって部屋の中が明るくなったのを確認して、僕は書物を漁り出す。  村の復興が始まってからこっち今までほとんど家の中で仕事してなかったし、あんまり気にしてなかったけど、室内の灯りは必要だよな。  村が襲われる前はどうしてたっけ?  ああ、日暮れとともに寝てたかも。  そして日が登るとともに起き出して農作業だった。 …………。 今とほとんど変わってないや。  あれ?  冬の夜長はどうしてたかな?  そんなこと気にもしないで暮らしてたな。「僕も灯りの魔法くらい使えればいいのにさ」 と、愚痴を言っても始まらないかと思いきや。「仕方ないなぁ」 と、天使の声……いやいや、妖精の救いの声が。  リリムがよく聞き取れない声で呪文を唱えると、パッと部屋の中が明るくなった。「すぐ消えちゃうけどね」 イヤイヤ、謙遜しなくていいよ。  魔法が使えるだけですごいことじゃないか。  転生者なんて都市伝説級の存在なんだろ? 魔法使いって。  今日はもう夜も遅いし、明日も早い。  なにがあるのかざっと確認するだけだから。  まだ文字の読めない僕に判ったのは手習い用の五十音的な文字表と地図くらい。  あとはたぶん絵本というか絵物語的な巻物だな。  この辺はたぶん伝説とかの類だと思う。  伝説伝承ってのは大抵子供に語って聞かせる教訓話や歴史的事象だからね。  いわゆる覚えやすい物語に脚色した歴史のお話だ。  あまりに脚色しすぎて現実とかけ離れちゃって教訓が伝わらないものが多いのだけどね。  前世での話だけどここでもそう変わらないだろ。  ってことでまずはこれからってとこだろうな。 …………。 ところでこれを使ってどう覚え

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    それは実家からの仕送りのように

     指差すだけかよ!  仕方なく僕も彼らのところへ歩き出す。「なるほど、少年が村長やってるって聞いちゃいたけど、本当に少年だな」 口悪いな、ザイーダ。「ジャン・ロイです。一応十五歳」「十五になったから『ハイ、大人です』とはいかないんだよ? 少年」 いちいち一言多いな……まぁ、元服してないからそう言う意味でも間違っちゃいないんだけど……。「ワタシはイラード・タン。この口が悪い女はザイーダ・ベックです。今日からお世話になります」 しっかりした人だ。「こちらこそよろしくお願いします」「早速ですが、荷物を降ろす場所は?」「ああ……」 僕は村に残っている住人を集めてみんなで僕の小屋へ移動する。  ルンカー作りをしていたジャリたちにも手伝ってもらって、小屋に積んでいた炭を一度出し、荷車の荷を小屋の中に運び込む。  目立ったのは書物だ。  いわゆる本の形で綴じられているものは全体の一割くらい。  あとは巻物だった。  その大半が皮紙でわずかに紙と呼べるものが混ざっている。  ここから類推すればやっぱり近代には到達していないようだ。  他には日用雑貨と農耕具。  これはあれだ。  ホルスを農耕動物として使えと言うジョーの配慮があるようだ。 あ・農耕具はしまわなくていいよ。 他に金床や槌、フイゴなんかがあった。  ジャリが目を輝かせている。 …………。 判ってる。  判ってるから。  使わせてあげるよ、いずれ。  その他には斧、鋸、鉈といった開拓必需品と丈夫な縄や袋など。  なるほど便利道具がいっぱいだ。  空になった荷車には炭を載せる。  次回のルンカーを焼く分を残して村に持っていくんだ。  基本的に村で煮炊きに使ってるからね。  今まではここと村とを往復する人が抱えて持って行ってたんだけど、これで手間が省ける。「今度ルンカーを焼いたら、そ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    春よ、来い-前篇-

     雪がとけて用水路の水の流れが早くなった頃から僕は、毎日昼頃から日が暮れるまで焼け跡を片付けながらキャラバンが来るのを待っていた。  記憶が確かならいつも日のあるうちに村に来てたからね。  さすがに午前中は雑木林に入って狩りをしたり柴刈りしたり用水路で魚釣ったりしてたけど。  そんな日を十日くらい繰り返した頃、待ちに待ったキャラバンが到着した。  商隊の隊長さんは結構がっしりした体格のおじさんで、物心つく頃にはもう隊長さんだったからおじいさんに近い。  隊長さんはあらかた片付いてさっぱりと何もない廃村に驚きながら、僕のとこ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    わんぱくでも たくましく育ってるよ

     発見!  尾行して、接近。  そして、八シャッケンという長柄の槍で突く!  冬毛のもふもふラバトを十日で四匹ゲットして新鮮な肉で鍋料理を作ったり皮をなめしたり。  魚を釣って刺身で食ったり乾物や燻製作ったり。  集めたマルルン茹でたり蒸したり炊いたり焼いたりして食べたり。  そんなこんなで暮らしてかれこれ三ヶ月が過ぎた頃、唐突に思い出したのがキャラバンの存在だ。  この世界にも、新年を祝うという風習がある。  一年の始まりは冬の終わり。  あとふた月くらい先な訳だけど、毎年キャラバンが村に商品を売

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    初めての狩り

     とっさに槍を構えたけど、こんな大きなデヤールの突進を受け止められる自信ないぞ。  でも、ここで逃すわけにもいかない。  僕は、黒曜石の槍の威力を信じて槍を構える。  これでも僕は前世で剣道有段者だ。  デヤールの突進力を槍の攻撃力にそのまま利用するために槍の尻を地面に落として、頸動脈があるあたりに狙いを定めて突き刺す。  微妙に角度をつけた槍は突き刺さるんじゃなく首の皮を切り裂いた。  狙い通りに頸動脈が断ち切れたらしく、盛大に血がしぶく。  この成功の代償に槍の柄がポッキリ折れたのはまぁ仕方ない。  穂先

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    異世界に旧石器時代あらわる

     さて、まずは砕けた黒曜石を大雑把に大中小と分けて使い物にならないのは用水路に流す。  むーん。  これから先色々なものを作っていくわけで、収納棚が欲しいな。  手に余るサイズが三個、握りこぶし級が七個、他に切片になってるようなのとか鏃なんかには使えんじゃないかってのがそれなりにありまして、小さなのを三個と中くらいの一個を残して水車小屋にしまう。  黒曜石ってのはガラスの一種だって言う事だから家の中で作業するのは危険だと思い、用水路のそばにある積み石のところで作業することにした。  作り方は打製石器と磨製石器の二種類。

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