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温度差―呼び出し(2)―

Author: 鷹槻れん
last update Last Updated: 2026-01-18 04:53:00

「お前が何をしたか分からない俺だと思うか?」

そればかりか、忠成ただなりの手を壁に押し付けるように押さえつけて、その身体をその場に縫いとめた。さらに空いたほうの手を彼の顔の真横について壁際に閉じ込めると、至近距離から幼なじみに詰め寄る。

「……だ、だって前に俺と妹、似てるかな?って聞いたら……秋連あきつら、うん……って言ったじゃんっ。……だからっ!」

今まで俺から視線を逸らすようにうつむいていた忠成が、キッと俺の顔を見上げるようにして睨みつけると、そう言った。

俺より10センチばかり背の低い忠成の、懸命な牽制けんせい

悪いけど、俺はそんなのにはひるんでやらない。

ばかりか、冷え冷えとする心を隠そうともせず、忠成を冷めた目で見つめ返した。いや、見つめ返したというより、睥睨へいげいしたといったほうがしっくりくるかも知れない。

馬鹿なことを言う幼なじみに、あからさまにため息をつくと、

兄妹きょうだいが似てるのは当たり前だろう?」

視線だけは忠成から離さずにそう告げる。

「だ、だったらっ!」

俺に睨みつけられて一瞬気圧けおされたように視線を泳がせかけた忠成だったが、俺に掴まれていないほうの拳をギュッと握りしめて言い募る。

俺はそんな忠成を静かに見つめながら

「お前、俺がお前の外見だけを好きになったと思ってるのか?」

そう、問いかけた。

「……っ」

忠成は、一瞬瞳を見開いて俺のほうを見たけれど、何も言わなかった。ばかりか、視線はまたしても逸らされ、俺の問いから逃げるようにうつむいてしまう。

そういう反応を見るにつけ、また互いに言葉を重ねれば重ねるほどズレを感じてしまって、俺は心の奥底によどんだものが、少しずつ凍り付いて冷たくなっていくのを感じた。

「……忠成ただなり、お前、俺の関心が妹にいけばいいと――そう思った、ってことでいいのか?」

忠成が俺のほうを見ないのが無性に腹立たしくて、俺は彼のあごを持ち上げると、無理矢理こちらを向かせた。そんな俺に抵抗するように、彼の顔にかけた手に、忠成の手が載せられる。

「そ、そっちの方が自然じゃねーかっ」

思いが爆発したかのように俺の腕にかけた手にグッと力を込めてそう言うと、忠成は挑むような、強い瞳で睨みつけてきた。

彼の言うことは至極正論で。まともな雄なら雌に求愛するもんだなんて、そんなことは言われなくても俺が一番分かっていることで。分かっていても尚、お前が好きなんだからどうしようもないんだとは、思ってはくれないんだろうな。

「自然とか、自然じゃないとか……今更だろ。そんなんで解決出来たら苦労しねぇよ」

俺はそれだけ言うと、忠成を開放して彼に背をむけた。

「秋……?」

忠成は、今まで自分を追い詰めていた俺が急に背を向けたことに戸惑いを覚えたのかもしれない。

こんな風に忠成を突き放すのは物心ついてからは多分初めてのことだったから。

俺が追えば逃げるくせに、俺が背を向けた途端、追いすがってくる気配がした。

これを許したら、また同じことの繰り返しだ。

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