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はぁ?
どういう事これ?俺は骨の手を見つめながら絶望するのであった。
この状況を説明するには少し時を遡る必要がある。前世で俺は剣聖と呼ばれていた。
死に物狂いで努力したからだ。 前のような惨めな思いをしたくないから。剣聖と呼ばれる前は日本という国でサラリーマンをしていて過労死したんだ。
孤独死。 惨めだった。 青春時代には剣道をしていた。だから、転生した時、剣なら頑張れる。
そう思った。 そして剣聖になり、皆から尊敬されるような人間になれた。しかし、剣にばかり打ち込んでいた俺はまたも独り身で孤独死してしまったんだ。
なんだか煮え切らない思いだった。 その想いがまた神に届いたのか、俺は転生できた。出来たんだけど、骨。
体を見ても骨、骨、骨。 全身骨だった。胸のところに青い炎のようなものがあって、ここが急所なんだろうなとわかる。
周りを見ると薄暗い洞窟のような所。
所々の天井から滴が地面に落ちて水溜まりを形成している。その水溜まりに顔を写すと。
頭も骸骨だった。 んー。これってスケルトンかな?前世にも魔物がいて、恐らくそうだと思うんだけど。
生まれたばかりなんだろうか。 何も持ってはいない。前世のスケルトンっていえば、剣を持ったり盾を持ったりしてたと思うんだけどなぁ。
「──────ってんだよ!」
ん?
曲がった先からなにか聞こえるな。「テイマーなんか囮になって俺達の役に立てってんだよ!」
テイマー?
どういう事だ? 顔を出してみる。不思議だよな。
この体。 目なんてないのに見えるんだよな。蹴られた女の子がゴブリンの群れの前に放り出される。
ゴブリン如きの群れを倒すほどの実力もなく。 仲間を置き去りにしたのか。最低だな。
反吐が出る。女の子を置き去りにしてそのまま去っていく人影が見える。
俺は女の子の前に出た。 女の子を見捨てるなんて俺にはできない。この体は軽い。
関節もあるんだかないんだか。 可動域はかなりのものだと思う。得物さえあればいけるんだが。
「えっ!? スケルトン!?」
振り返ると驚愕の表情をしている女の子。
腰には剣を差している。「カタカタタタ(その剣貸して?)」
声帯がないため、歯と歯が噛み合う音が鳴るだけ。
ジェスチャーで伝える。「えっ? なに? この剣が欲しいの?」
コクコク頷く。
手招きしてそれを欲しいと伝える。不振な顔をしながらも剣を引き抜いて渡してくれた。
剣を見る。 うん。いい剣だ。ゴブリンの群れが迫ってくる。
剣をダラリと構える。右、左、正面。
迫り来るゴブリンを切り伏せていく。 後ろからも迫ってくる。「スケルトンさん! 危ない!」
ゴブリンの攻撃は素通りする。
ストロング流剣術 幻剣術
「カタタ(現《うつつ》)」
攻撃したゴブリンを後ろから袈裟斬りに切り裂く。
倒れるゴブリン。 リーダーらしき大きなゴブリンが現れた。ホブゴブリンだろうか?
だから群れを作っていたのか。 ゴブリンにそこまでの頭はないはずだからな。ホブゴブリンなら賢いから納得だ。
「えっ!? ホブゴブリン!? こんな……Dランクモンスターが出るなんて! Eランクのスケルトンには無理よ!」
この身体でいけるか?
今のところ動きに特に問題は無い。 しかし、余り力を入れると剣が持たない。「ゴブゴブッ!」
棍棒で叩きに来た。
スッと横に避け、太ももを切りつける。 そのまま後ろを取る。「コブァ!」
斬られたのが気に入らなかったのだろう。
棍棒で薙ぎ払ってきた。 体を仰け反らせて躱す。不思議とどこまでも仰け反ることができる。
この身体のお陰だろう。大振りで攻撃してきた為、攻撃した後の硬直が大きい。
「カタカ!(ここだ!)」
剣を最上段に構える。
そして、凄まじい速度の切り下ろしが放たれる。ストロング流剣術 剛剣術
「カタタタ(覡《かんなぎ》)」ズバンッッッ
ボブボブリンは真っ二つに切り裂かれた。
最後の一体はこれで倒れた。ふぅ。
何とかなった。 この剣でも一の剣までは使えるみたいだな。体がチカッチカッと二回光った。
なんだ?「す、凄い。なんでスケルトンがこんなに強いの? レベルが上がったってことはそこまでレベルが高くなかったってことよね。それに……守ってくれたの?」
女の子を振り返るとコクリと頷いて剣を返す。
刃の部分を持って持ち手を渡す。「あ、ありがとう……」
そう言うが、受け取ろうとしない。
どうしたんだろうか? 不思議に思っていると、照れくさそうに笑みを浮かべた。「あ、あのね、私……見た通り弱いんだ。冒険者として登録はしてるんだけど、一年も経ってるのに最弱のEランクなの。それに、テイマーなのに、モンスターをテイムも出来てないんだ」
尻もちを着いていたが、立ち上がって上目遣いで見上げてくる。
肩まであるピンクの髪を耳にかけて微笑みかけてくる。「スケルトンさんがよかったら、その剣あげる。けど、その代わりに私にテイムされてくれない?」
これは……女性に免疫のない俺には破壊力が抜群で。
胸がキュンキュンしてしまった。 胸は青い炎だけど。カクカクカクカク。
頷こうとしたら、力が入りすぎて頭がカクカクしてしまった。 やばい。引かれないかな?「ふふふっ。そんなに私にテイムされたいの? しょうがないなぁ…………テイム!」
女の子から放たれた光が俺の体を包み込み繋がった。
一瞬強い光を放つと消えた。「わぁ! 初めてテイムできた! やったー! 私ね、ミリアっていうの。あなたは?」
俺の名前?
この体ではないけど。「ないんだ。ふーん。じゃあ、剣士だし……エクスカリバーとかどう?」
それは無いんじゃない?
「そっか。うーん。じゃあ、ナイルとかどうかな? 全然意味は無いよ? 響きだけだけど」
いいじゃん。
「だよね! じゃあ、ナイルね!」
っていうか、普通に会話出来てるのは何故?
「あっ、念話使えるようになったんだよ?」
えっ!?
考えが筒抜け?「まぁ、オンオフ出来ると思うけどね」
よかった……。
「ふふふっ。なんか最初は恐そうだと思ったんだけど、普通に話せるスケルトンで良かった! これから、よろしくね? ナイル?」
あぁ。よろしくな。ミリア。
こうして、スケルトンに転生した俺はテイムされることになったのだった。
最強のスケルトンと最弱テイマーの成り上がりが始まる。騒動の後は衛兵に事情を説明して後始末をお願いした。街に巣食う組織の仕業のようで衛兵には感謝された。 これで、その組織はこの街に居られなくなるだろうとのこと。「私の食料の補充は終わりましたし、もう街を出た方がいいでしょうか?」 ミリアと俺に意見を求めてきたダンテさん。 俺はコクリと頷く。 早く出た方がいいだろう。 組織がアイツらだけだとは考えにくい。「それじゃあ、もう馬車に荷物を詰めて行こー!」 そうだな。行こう。 リンスさんは大丈夫かな?「リンスさんは大丈夫?」「大丈夫ですわ。本当はベッドで寝たいところではありますけれど、こうなってしまっては仕方がありませんわ」 ミリアに聞いてもらうとリンスさんはため息を吐きながらそう諦めたように言った。 侍女のベリーさんに付き添われて馬車へと向かう。 街を出た所で皆で乗り込むと走り出した。「はぁぁ。とりあえず、良かったわよねぇ。リンスさんは見つかったし、助かったから。一時はどうなるかと思ったわぁ」「そうですわね。私も油断していましたし。実は……あの後ダンテにお説教されたのですわ」 最後は御者をしているダンテさんに聞こえないようにゴニョゴニョと言っていた。ダンテさんの気持ちは痛いほどわかる。仕方がないことだと思う。「そうなんですねぇ。私は怒られたことないなぁ。いつも失敗ばかりだけど」 怒りはしないよ。 逆に清々しい位に失敗したり堂々としてたりするじゃん。 感心するよ?「えへへぇ。そう?」 ニヤァッとしてるけど、別に褒めてないんだよね。少し考えて行動してくれれば嬉しいなぁとは思うんだけどさ。「仲が良くて羨ましいですわ。いいですわね。心を許した者と旅というのは」「えー? でも、リンスさんは、ベリーさんとダンテさんに心を許してるんじゃないんですかぁ?」「そうなんでしょうか。ちょっと分からないのですわ……」 リンスさんは静かに俯いた
「ナイル! 大変! リンスさんがいない!」 クソッ! やられた! 店を出ると裏側に回る。 人影はない。 どこ行きやがった? この通りは人の通りも多いし、樽を詰んだ荷車を引いている人もいる。「ナイル!? いた?」 いや、何処かに隠れたらしい。 どこにも人影がない。「どうしました? 皆さん、慌てて?」 そこにタイミングが良いのか悪いのか。 やって来たのはダンテさんだ。「すみません。目を離した隙に拐われてしまいまして……」「なんと!? こんな街でも安全ではないということですな。お嬢様を見つけましょう」「はい! でも、なんだかそれらしい犯人が分からなくて……どうしたらいいんでしょうか? すみません! ダンテさん!」 ミリアが頭を下げるが、そんな暇があれば今は手がかりを探すことに頭を使った方が良いだろう。 考えろ。 何かヒントはないか? この通りを通って逃げたはずなのに、全然周りの人が反応していないということは、人を連れているということがわからないということ。 ん? あの樽……あんなに積んであるのに一人で引けるのか? 一個しか中身がないなら……。 そうか! ミリア! アイツだ! 指さしたのは樽を積み重ねているのに一人で引っ張っている人だ。 ミリアが走っている。 俺も後を追う。「あの! その樽何が入ってるんですか!?」「あぁ!? 別に何でもねぇって!」「見せてもらっていいですか!?」 ミリアが無理矢理見ようと樽を触ると、急に走り出した。「嫌なこった!」 樽を積んだまま走り出してしまった。 後を追うミリアと俺。 クソッ! 速い! 路地に入ってしまう。 角を曲がった。 追って角を曲がる。 けたた
アーノルド家の人達はぐっすり寝れたようでよかった。 見張りは俺が引き受けたのだ。馬車に乗せてもらうのだから、それくらいしなければ。「それでは、出発しますぞ?」「はーい!」 元気に返事をしたのはミリアで、俺はその横に座らせてもらっている。なんども言うが、この体は疲労が無いからいい。 魔力は動かなきゃ回復するからな。 馬車は順調に進んでいた。「ミリアは冒険者としては長いんですの?」「うーん。そうねぇ。長いといえば長いかなぁ。一年は経ってるけど、何にもテイムできなくて、弱くて。それで、荷物持ちしてたんだ」「そうなのですか? なんと。あなたみたいな華奢な子が荷物なんて持てますの?」「はははっ。そうなんだよねぇ。大して持てなくて。だからお金稼げなくて……」 リンスさんがフンッと鼻息を荒くしている。 何かお気に召さなかったかな?「女性に荷物を持たせるなんて見下げた冒険者もいるのですわね! 何もしなくてもお金を上げればいいのですわ!?」 はははっ。 さすがお嬢様。 まぁ、ミリアに荷物持ちは無理だろうっていうのは同感だけどな。「そういう訳にも行かないよぉ。今だって、ナイルがいないと何も出来ないし」 でも、俺の事をテイムしたのはミリアだから。ミリアがしてるのと変わらないさ。俺は逆についてってるだけって事だからな。「ふふふっ。たしかに、そうね? しっかりとついてきなさい?」 ははぁ。お嬢様。「ナイルさんはミリアの侍女みたいなものなんですの?」 俺がお辞儀をしたからそう思ったのか? まぁ、でも侍女と変わんないよな? 料理作ったりもしてるし。「んー。侍女ではないかなぁ。なんていうのかなぁ。パートナーかな?」「なっ!? それは、婚姻関係にある方をそういうんではなくて!?」「そうなの? じゃあ、相棒?」「それなら、分かりますわ」 なんだか難しいお嬢様だな
話しているうちに日が沈んでしまったので、野宿をする事となった。そこで疑問に思ったのだが、お嬢様って野宿するのか? 御者の人とお嬢様の後ろに控えているお付の女性もいるし。どうすんだろ? 「今日はこの近辺で野営になりますけど、皆さんはどうされるんですか?」「はっ! 私共もテントを設営しまして、野営をさせていただきます!」 それに答えたのは御者の人で、テントを張るらしい。それならもう少し木々がある方に行こう。 ミリア、こっちに案内してくれ。「あっ、こちらへどうぞぉ」 ミリアが俺の後を付いてきて案内してくれる。 いい草むらと気の感じのところを見つけた。 ここにしよう。「今日は、ここで野営にしましょう! ここでなら、少し大きなテントを張っても問題ないようです!」「先程から不思議に思っていたのですが、スケルトンと意思疎通が出来ているのですか?」「はい! 普通に念話で話してます!」「はぁ。凄いですなぁ」 御者に感心されてしまった。 野営するところを少し綺麗にして布を敷いたり丸太に座ったりしながら少し落ち着いた頃。「あっ。申し遅れました。私共はアーノルド家の者でして、わたくしは執事をしております。ダンテと申します。こちらはアーノルド家、当主代理のリンス・アーノルド様で御座います」 さっきまで御者だと思ってた人は執事さんだったんだな。身の回りの世話もしながら馬車の手綱も握って大変だな。「ご紹介に預かりました。リンス・アーノルドですわ。この度は助けて頂きまして、誠に感謝致しますわ。王都に戻ったらしっかりの謝礼をするようにお父様にお願いしますわ」「助けることが出来て良かったです! 私はミリアっていいます! ちょうど荷物も載せれましたし助かります! 逆に感謝したいくらいです! ねぇ、ナイル?」 あぁ。そうだな。 本当に丁度よかったわ。「ナイルと言いますのね。なんと言ってますの?」「丁度よかったって言ってます」「本
この日も街道をミリアと念話をしながら歩いていたのだが、喧騒は急にやってきた。ガタガタガタッガタッガタガタッ 馬車の車の音が後ろから迫ってきていた。「何あれ?」 ミリアも俺も疑問に思ってみていると、上空から炎弾が飛んできていた。 あれに追われてるのか!? 厄介な!「あれって……ワイバーン!?」 小さい版のドラゴンである。細かく言うと翼の形とか顔の形とか違うんだが、まぁ、だいたい一緒。 Aランクのモンスターだ。 馬車の前に出るように陣取る。「助太刀します!」 ミリアがそう宣言すると馬車の御者が口を開いた。「すまない! 護衛を付けていたんだが、やられてしまったのだ! あれはAランクです! 無理をなさらないで一緒に逃げましょう!?」「大丈夫です。私のナイルは、守るものがいた方が強いのです!」 まぁ、そうなんだけど。『四面楚歌《しめんそか》を発動します』 世界の声が聞こえた。 俺の体が赤い炎で包まれる。「なんですか!? あれは!?」「ふふぅん。見ててください! ナイルは強いですよ!」 上空にいるワイバーンと睨み合う。 今の状態ならあそこまで跳べると思う。「グゲェェェ!」 ワイバーンは急降下して突進してきた。 真正面からやってやろう。 タイミングを見計らう。 勝負は一瞬だ。 ストロング流剣術 剛剣術 「カタタ(紫電《しでん》)」 状態を前に倒して踏み込んだ、その一瞬でワイバーンは横に真っ二つに。そのまま墜落して土埃を上げた。 剣を確認する。 うーん。大丈夫そうだな。 ワイバーン斬っても刃こぼれなしか。 優秀な剣だ。これならかなりやれそうだな。 「なっ!? 何者ですか!? あなた達!? まさか、有名なS級冒険者とかですかな!?」「あ
空が薄暗くなってきた頃。 街道を少し外れたところで視界を遮れる草むらのあるところを探す。「あそこがいいんじゃない?」 草が生い茂っているゾーンがあった。 視界を遮れる場所だ。 火を起こしたあとがある。 ここならいいかもな。「よーっしっ! 薪になる枝を探そう」 待て待て。一人で行くな。「あっ。ごめーん!」 なんか……このやり取りいい。「ん?」 いや、なんでもない。行こう。「うん!」 枝をその辺から集めてきて石も探してきた。 石でコンロを作り出して枝をピラミッド型に積み上げる。 火をどうつけるかだが、それは魔法が出来れば一番いいんだが。そうもいかない。魔道具のライターに近いものを使ってつける。 魔法陣が描いてあり魔力を流す事で炎が出てくるのだ。便利なんだよなぁ。 パチパチと枝が音を鳴らしながら俺たちを照らしてくれている。ほのかに温かく、ユラユラ揺れる様は俺達の心を癒してくれる。 ボーッとしばらく眺めていると、ハッと気付いた。飯作んないと。 買ってきていたフライパンを作ったコンロの上に乗せる。 熱がフライパンにつたわり、すぐに熱くなった。肉を投入する。ジュージューと香ばしい香りを漂わせながら美味しそうなキツネ色になっていく。「わぁ。いい匂い!」 調味料もなかったのだが、今回は金があったから買ってきたのだ。塩をかける。それだけでどれほど美味しいことか。 はい。どうぞ。 フライパンから皿に肉をのせる。 ミリアの口からはジュルリと言う音が聞こえる。 行儀が悪いよ? ミリア?「エヘヘッ。ごめーん!」 まぁ。許すけど。 ミリアは肉にかぶりついた。 買ってきた肉だからホーンラビットの肉かな? 引き締まってて美味しいらしい。 美味しそうだなぁとは思うのだが、不







