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第525話

Penulis:
しかし、隼人は何も言わず、月子の顔にそっと触れた。

月子は思わず緊張し、呼吸も浅くなった。

隼人は月子の首筋に唇を寄せた。目を閉じ、長く濃いまつげがかすかに震え、ゆっくりと、そして丁寧にキスをしていった。

そんなこそばゆい感覚に、月子の体は火照り、小さく震えた。彼のキスは、まるでじゃれ合うような、じれったい刺激を与えた。あまりの痒さに、彼女は思わず声が出そうになった。

そして、彼の唇が耳に触れた時、月子は全身が硬直し、鳥肌が立った。

これは、友達ではできないことだ。

今ならできる。

甘く囁くようなキスをし、耳元で優しく囁きながらも、隼人の言葉は会社にいる時のような真面目さで、それが逆にゾクゾクさせる。「お前の体を洗ってやりたいのは山々だけど、恥ずかしがるだろうから、今回はやめておく。膝を濡らさないように気をつけろ。洗い終わったら、手首に薬を塗ってやる」

そう言って、彼は顔を上げた。

月子の顔はもう彼の一連の動作に掻き立てられ、真っ赤に染まっていた。

隼人はそんな彼女を見て微笑み、そして彼女の頬にキスをした。

彼が立ち去ろうとした時、月子はとっさに彼の手を掴んだ。

隼人は不思議そうに彼女を見つめた。

月子は彼の目をじっと見つめ、「本当は嬉しいの」と言った。

隼人は一瞬戸惑った。既に二人は付き合っている。抱き合い、キスもした。恋人同士になったことは間違いない。しかし、そのシンプルな一言が、何故か胸に深く突き刺さった。

心臓が激しく高鳴った。彼女が告白してくれた時も、こんな風にドキドキした。

隼人は少し間を置き、真剣な声で答えた。「俺もだ、月子」

浴室のドアが閉まると、隼人はよろめくように数歩進んだ。

どうやら彼も自分が想像していた以上に、冷静ではいられなかった。

月子の前では、平静を装っていただけだ。

初めて願いが叶った隼人は、どんな顔をしていいのか分からなかった。興奮?喜び?それとも大声で笑うべきか?人生で一度も願いが叶ったことがなかった彼には、その経験がなかった。

彼は部屋の中をぼんやりと見渡した。

プレジデンシャルスイートは上品に飾られていた。彼はこういう場所に慣れているので、特に新鮮味もなく、二度見するほどのものではなかった。

しかし今、彼の目には全てが美しく映った。

まるで美味しいお酒を嗜んだ後のような、じんわり
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