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第718話

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そこまで、聞いて静真の殺気はすっと消え、渉を突き放した。

渉は後ろによろめいた。でも全身傷だらけで、もう抵抗する力は残っていない。バランスを崩して床に尻もちをつき、お腹を押さえながら咳き込んだ。それでも、今の渉は得意げだった。

自分が、静真の痛いところを突いたのだと、彼には分かっていた。

これだけ長く一緒に仕事をしてきたんだ。渉に分からないはずがない。

「お前は霞のことが好きなんだろ」静真が唐突に言った。

渉は、まるで雷に打たれたように数秒間固まってしまった。そして静真の冷たい目を見ると、あまりの衝撃に声が上ずってしまう。「最初から知っていたんですか?」

静真は言った。「いつからかなんて、どうでもいいことだ」

衝撃が過ぎ去ると、渉は怒りで全身が震えだした。殴りかかろうと身を起こすが、動くと傷がもっと痛んで、その痛みが、さらに彼の怒りと憎しみを増幅させた。

「やっぱり最初から知ってたんですね!どうりで私に霞さんを落とせなんて言ったわけです!私が彼女を好きだから、全力を尽くすだろうと思ったんでしょう……私の気持ちまで利用して、そのうえ、あなたたちが仲良くするところを目の前で見せつけて……私をいたぶって……」

「当てずっぽうで言っただけさ」

渉の顔がこわばった。静真がこれほど平然とその一言を口にするとは、思ってもいなかった。そして、渉の心は完全に折れてしまった。

静真という男は、過去の情に少しも流されない。これまでの自分の功績も苦労も、全く気にもかけていない。少なくとも、彼のそばで働いていた間は、心から忠誠を誓っていたのに。それなのに今の自分は、落ちぶれてこんなに惨めな姿だ。そんな自分に、静真はさらに追い打ちをかけるのだから。

静真は隼人に負けたはずだ。感情的になって、我を失っていたはずなのに。それなのに、まだ自分にとどめを刺すだけの力が残っているというのか?

渉はあまりの仕打ちに、体の芯から凍えるような寒気を感じた。

渉は目を真っ赤に充血させていた。彼はもう、はっきりと理解した。静真には人情ってものがないのだ。どれだけ尽くしても、その心は決して温まることがないのだと。この世の誰も好きにならず、誰も愛さない。

子供のころから、静真は彼自身に近づく人間を誰も信じなかった。隼人を突き放し、月子をも突き放した。彼を一番愛してくれたかもしれない二人を
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