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第719話

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静真……あなたみたいな男に関わると、ろくなことにならないんだ。

ドアの外から、一樹の声が聞こえた。「この血……まさか中で死んでないだろうな?」

続いて静真の声。「あいつにあんな風に罵られて、俺が殺さないと思うか?」

一樹が尋ねた。「本気で殺したのか?」

その声と同時に、ドアが開いて一樹が入ってきた。

渉は彼を見上げて言った。「あなたは社長の忠実な犬ですね」

一樹は目を細めたが、怒る様子もなく言った。「どうやら、俺が手を出すまでもなかったようだな」

渉は、まさか一樹が月子に特別な感情を抱いているとは夢にも思わず、彼の言葉の裏にある意味を理解できなかった。てっきり憂さを晴らしているだけだと思ったから、渉は嘲るように笑った。「佐藤社長も、いつかあいつに裏切られる日が来るといいですね」

一樹は眉をひそめた。「ほう?それは楽しみだな」

というのも、一樹自身が静真を裏切ろうと考えたことがあったからだ。まあ、結局は失敗に終わったのだが。

渉はそれ以上、何も言わなかった。

類は友を呼ぶ。静真も一樹も、まともな人間ではない。ただ一樹の場合、その冷酷さが、完璧な育ちの良さと物腰の柔ら
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