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第870話

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そして車のドアを開けて、静真はすぐに車を降りた。

それから正人がすぐ後を追って出てきた。後続車からもスーツ姿のボディーガードたちが次々と降りてきて、場の空気は一気に殺伐としたものになった。

ついに、静真はフロントガラス越しに、後部座席に座っている隼人の姿を捉えた。前回会った時は、隼人が月子に無理やりキスをしていた。

あの時、静真はそれが我慢できず顔を歪ませるほどの怒りを感じていたが、今回は自分の子供を奪われたのだからもっと怒るべきはずなのに、まぜか彼は今、隼人の見たことのない表情を見てみたい、なんて思ってしまった。

隼人とは長年の付き合いだ。でも、自分の子供を奪い、成人するまで育てようとしているのを知って、静真は初めて隼人の本心を確かめたい気になった。もしかしたら、自分はこれまで彼のことを全く理解していなかったのかもしれない。

なんて恐ろしいことだろう。敵を理解していなければ、自分が危険にさらされていることになる。静真には、隼人が何を考えているのか全く分からなかった。これから彼が何をしでかすのか、予想もつかない。

分からないからこそ、怖いのだ。今の隼人は、まさに静真にとってとてつもない脅威だった。そして、こうして押さえつけられているような感覚が、静真をひどく苛立たせ、受け入れがたかった。

だから静真は、今すぐにでも直接問いただしたかった。この男の今の姿は本物なのか、それとも演技なのかを。

片や、隼人もすぐに車を降りた。そして彼の後ろに従えていた後続車からもボディーガードたちが降りてきた。両者はにらみ合い、雰囲気はますます険悪になった。

そこで、正人は場を取り持とうと、愛想笑いを浮かべて言った。「鷹司社長、お久しぶりです」

それに対し、隼人も余裕綽々といった様子で、正人に頷き返した。

こんな状況で、隼人はまだ関係のない奴に構っている余裕があるとは、そう感じると静真はますます不快になった。やはり、一度気に食わないと思うと、相手のやることなすこと全てが挑発に思えてしまうようになるものだ。

彼は険しい顔つきで、歯を食いしばりながら言った。「隼人、わざわざここまできたのは、お前とお喋りするためじゃない。さっさと俺の子供を返せ!」

だが、隼人は暗く鋭い眼差しを彼に向け、凍てつくようなオーラを漂わせて言った。「帰れ、子供を渡す気はないから」

静真は、も
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