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第94話

Auteur: 歓乃
退職手続きが海斗の手で止められていることを察し、凛は海斗のオフィスを睨みつけた。

凛はその中へと入っていく。

拓海は口を開けかけたが、止める暇もなかった。

「竹内社長」凛は海斗の正面に立ち、外から覗こうとするゴシップ好きたちの視線を背中で遮った。

「聞きたいことがあります。私の退職手続きはどうなっていますか?あとどれくらいで辞められますか?」

海斗は目を上げる。「どうしてだ?仕事を辞めて専業主婦にでもなるつもりか」

そして、「許可しない」と、言い捨てた。

智也にはあの手この手で専業主婦として家に閉じ込められそうになったし、海斗は海斗で退職させまいと妨害してくる。二人とも、彼女の意志を完全に無視していた。

胸に何か違和感を感じた凛は言い返す。「退職後、私が何しようと、竹内社長には関係ありません。一か月という規定期間内に退職手続きを進めてください」

凛の声は淡々としていて、そこから感情は読み取れなかった。

その態度が気に食わないのか、海斗が眉をひそめる。

「どうしても辞めるというのか?」

「はい」

まっすぐ見つめてくる彼女の視線に対し、海斗は皮肉な笑みを浮かべた。
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