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第6話

Penulis: タマタツ
凪杜は彼女の視線を避け、再び口調を和らげた。

「子どもが何をわかる。いちいち気にするな」

その言葉に滲む無意識の肩入れは、まるで強烈な平手打ちのように絃葉の頬を打った。

これまで何度、その偏りに気づかないふりをしてきたのだろう。

――今になって、自分の鈍さが情けない。

彼女はため息のように、かすかな声で言った。

「......正直に答えて、凪杜。あなた、まだ私を愛しているの?」

その瞬間、凪杜の胸が大きく揺れた。

彼は彼女を強く抱き寄せ、顎を彼女の髪に押し当てる。

「もちろんだよ!」

声は即座に返ってきた。

「また変なこと考えてるのか?俺が絃葉のことを、ずっと愛してるに決まってる!」

胸に抱きしめられ、鼻先に馴染みのある匂いが満ちる。

だがその瞬間、胃の奥から激しい吐き気が込み上げた。

この腕から逃れたい――そう思った矢先。

ドアの外から、野々花のやわらかくも焦った声が響いてきた。

「澤木社長、少しいいですか?那乃葉がお風呂でぐずってて、どうしても一人じゃ手に負えなくて......」

凪杜の腕が、触れたものから弾かれたように離れる。

彼はほとんど反射的に絃葉を押しのけた。

「わかった、いま行く」

ドアノブに手をかけたところで、ようやく足を止める。

わずかに振り返り、彼女の顔をちらりと見る。

「ちょっと......様子見てくる」

絃葉が何か言おうとしたその時、別の部屋から那乃葉の大きな泣き声が響き、凪杜はそのまま足早に出ていった。

バタンと、ドアが閉まる。

絃葉は苦笑した。

拳をぎゅっと握りしめる。

胸の奥の冷えは、ますます深くなっていった。

――

凪杜が持ってきたご飯とおかずを食べ、少しだけ体力が戻ると、彼女は再び整理を始めた。

不要なものを、すべて処分するために。

そうすればいざ離れる時、楽になる。

寝室の中で、目に入るだけで不快になるものはすべてゴミ袋へ。

結婚式で着たウェディングドレスも例外ではない。

まとめて袋に詰め、使用人に処分を頼む。

ちょうどその時、凪杜が部屋に戻ってきた。

黒いゴミ袋から覗く白いレースが、彼の胸に不安を呼び起こす。

「そのドレス、どこに持っていくんだ?」

絃葉は静かな目で彼を見つめた。

「見飽きたから捨てるつもりよ。場所も空くし」

――凪杜。捨てられる前に、捨ててやる。

凪杜はその落ち着きすぎた様子に、胸を強く引き裂かれるような感覚を覚えた。

「でも......あのドレスは、一生大切にするって言ってただろ。歳を取ったら、また一緒に着て写真を撮るって......どうして急に?」

絃葉は微笑む。

「新しいのを買えばいいでしょ?」

――昔大切にしていたのは、自分が唯一の存在だと思っていたから。

だが今は違う。

彼の心も、そばの席も、すでに埋まっている。

このドレスと同じように、自分はこの家で余分な存在になっていた。

相手は子どもまで連れて入り込み、さらに二人目まで身ごもっている。

場所を譲らない理由など、どこにもない。

使用人が袋を持ち上げようとすると、凪杜が手を伸ばして止めた。

「それでも捨てる必要はないだろ。倉庫に置いておけばいいじゃないか」

絃葉ははっきりと言った。

「置いておくだけ無駄だから」

凪杜の表情が一瞬固まる。

「......」

絃葉はそのまま部屋の奥へ入っていった。

胸の奥に痛みを覚えた凪杜は、ふと、自分が五周年の日に彼女を放っておいたことを思い出す。

彼は慌てて追いかけ、後ろから彼女を抱きしめた。

「ごめん。五周年の日、帰れなくて。プロジェクトが重要で、円藤と徹夜で対策を練ってたんだ」

――余計なことを想像するべきじゃない。

それでも、大人の想像力は残酷なほど豊かだ。

爪がまた深く食い込む。

彼女は疫病を避けるように、その腕から逃れた。

「いいの。もう終わったことだから」

凪杜の目にわずかな罪悪感がよぎる。

彼は彼女の袖をめくり、白い腕に残るくっきりとした噛み跡を見つけた。

怒りが胸に込み上げる。

「これは?」

絃葉は目を伏せる。

「那乃葉に噛まれたの」

凪杜は胸が詰まるのを感じながらも、無意識に庇う。

「子どもはまだ加減がわからないからな。甘えたかっただけかもしれないし......」

絃葉は胸が締めつけられるのを感じた。

「......そうね」

凪杜は彼女の腕に軽く息を吹きかける。

「医者も言ってたが、今回の貧血は前よりずっとひどい。しばらくは家で安静にしてろ。外出も家事も禁止だ」

絃葉はまばたきをする。

「20日ほどね」

その口調には、悲しみも不満も一切なかった。

凪杜は眉をひそめる。

「20日で足りるかよ。ちゃんと休め。ちょうど円藤もここに住んでるし、仕事終わりに料理を作ってくれる」

――ああ、結局そこなのか。

一瞬、心に深い痛みが走る。

絃葉は顔を上げ、彼を見つめた。

かつて、彼を心から愛していた。

一生を共にできる人だと、信じていた。

だからこそ、あれほど自分を大切にしてくれた祖父に逆らい、政略結婚を拒み、すべてを捨てて彼と共に歩む道を選んだ。

白髪になるまで一緒にいたいと願っていた。

――けれど、この関係は最初から「三人」だった。

しばらく沈黙した後、胸の痛みを押し殺して言う。

「秘書にそこまで頼るの?」

凪杜は視線を逸らし、言葉を濁した。

「別にいいだろ?円藤はもう他人じゃないんだし」

その一言で、胸が鋭く裂けた。

体がふらつき、そのまま倒れそうになる。

異変に気づいた凪杜は慌てて抱き上げ、そっとベッドへ寝かせた。

横になった瞬間、彼の優しげな眼差しが目に入る。

そのせいで、胸が締めつけられる。

絃葉は思わず、小さく呟いた。

「凪杜......二人きりで食事したい。最近、ずっと一緒に食べてないから......いい?」

――本当に、久しぶりだった。

最後に二人きりで食事したのは、ほぼ一年前の大晦日。

それすら途中で、野々花からの「仕事」の電話で呼び出されて終わった。

実際は、那乃葉が花火を一緒に見たがっただけだったのに。

それでも彼女は一度も責めたことはない。

これだけ理解のある彼女に、これ以上負い目を感じさせるべきではない。

凪杜は喉に何かが詰まったような感覚を覚えた。

「......わかった。段取りする」

絃葉は静かに頷く。

「うん」

――凪杜。この食事は、最後の食事になる。

これからは、それぞれの道を歩くから。

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