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第20話

Autor: 卵黄おにぎり
西園寺家の別荘に車が到着しても、茉優はまだ事態を飲み込めていなかった。

今日は誰もドアを開けてくれないのかと、不満げに眉を寄せる。

仕方なく、バッグを持ったまま自分でドアを押して降りようとした。

その瞬間、強い力で外へ引きずり出された。

間髪入れずに、分厚い黒い布で目隠しをされる。

恐怖が全身を駆け巡った。

茉優は反射的に叫んだ。

「誰よ!放して!

私は賢人の妻よ、誰に向かって手を出してるの!」

その声は金切り声のように鋭かった。

彼女を拘束していた男が、苛立ったように茉優のすねを蹴り飛ばし、吐き捨てた。

「黙れ。命が惜しければ大人しくしろ!」

その言葉を聞いて、茉優はようやく悲鳴を飲み込んだ。それ以上、音を立てる勇気はなかった。

……

どれくらい時間が経っただろうか。

茉優は、どこか密閉された場所に連れてこられた気配を感じた。空気も薄く、息苦しい。

不意に、目隠しが乱暴に剥ぎ取られた。

目の前にいたのは、賢人だった。

茉優は反射的に身を引いた。

「どうした?何を怯えている?何かやましいことでもあるのか?」

賢人は茉優の顎を強く掴み上げ、冷たい目
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    「西園寺社長、調査をご依頼されていた件です」アシスタントはそう言って、手にした書類袋をデスクの上に置いた。賢人が中身を取り出すと、それは当時の病院の請求書やカルテのコピーだった。そこには、茉優が三歳の時に難病を患い、救命のために緊急で「臍帯血」を必要としていたことが記録されていた。つまり、詩織の出生は、茉優を救うためのドナーとして計画されたものだったのだ。賢人は書類を握りしめる手に力を込めた。隆史と涼子の偏愛ぶりにはずっと疑問を抱いていたが、まさか根本にこれほど残酷な理由があったとは。袋の中には、画面の端がひび割れた一台のスマホも入っていた。賢人はそれに見覚えがあった。かつて詩織が使っていたものだ。アシスタントは彼女の通話記録からSIMカードの最終位置情報を割り出し、回収した端末のデータを復旧させていたのだ。賢人はロック画面の四桁のパスコード入力欄を見て、一瞬ためらったあと、「0616」と入力した。カチッという音と共に、ロックが解除された。賢人の目頭が、瞬時に熱くなった。6月16日は、賢人の誕生日だったからだ。アプリの多くはログアウトされていたが、消し忘れた写真や数件のメッセージが残っていた。アルバムを一枚ずつめくっていく。道端に咲く花や、様々な形の雲。だが、それ以上に多かったのは、賢人の写真だった。学生時代の隠し撮りから、事故で失明していた頃の姿まで。詩織は一枚一枚、すべての写真を大切に保存していた。学生時代のクラスの集合写真でさえ、彼女にとっては宝物だったようだ。賢人の胸に、苦い感情がこみ上げてきた。彼女は誰にも知られない場所で、ずっと彼を想っていたのだ。西園寺家の厄介者として捨て駒にされていた時でさえ、彼女だけはそばにいてくれた。二人が寄り添って過ごした日々。詩織が捧げてくれた真心。彼女の愛は、いつも静かで控えめだった。まるで波のない湖のように、決して主張することはないが、底まで透き通るほど清らかだった。メッセージアプリを開くと、意外なことに、詩織への送信履歴が最も多い相手は茉優だった。茉優は自分のウェディングドレス姿や、賢人との親密な日常写真を、執拗に詩織へ送りつけていた。賢人はその履歴を遡り、顔をしかめた。写真の下には、悪意に満ちたメ

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