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第710話

Penulis: 鈴木真知子
その場にいた全員の視線が、一斉に彩葉へと向けられた。

次の瞬間、氷室グループの社員たちが揃って深々とお辞儀をした。

「奥様、お待ちしておりました!」

彩葉は思わず一歩、後ずさりした。

その表情や瞳には、明らかな戸惑いと拒絶の色が滲んでいた。

雫は、彩葉が「奥様」として恭しく迎えられる光景を目の当たりにし、顔にどす黒い憎しみと怨嗟を浮かべた。

その嫉妬に狂った視線は、鋭い刃のように彩葉へと突き刺さる。

「彩葉……」蒼真は彼女の姿を目に捉えた瞬間、暗く沈んでいた瞳にわずかな生気が宿った。

凍てついていた心の中に、かすかな温もりがぽっと灯る。

やはり瞳真のことが心配で駆けつけてくれたのだ。

普段は憎まれ口を叩いていても、その奥にはやわらかく優しい心を持っている。

蒼真はすっと立ち上がると、すがりつこうとする雫をためらいもなく振り払った。

「蒼真さん、ちょっと……」雫は手を宙に浮かせたまま、ひどくきまりの悪い思いをした。

蒼真が彩葉のほうへ歩み寄ろうとしたまさにそのとき、雪美が泣き崩れながら近づいてきた。

「瞳真!私の大事な、大事な瞳真が!どうしてこんなことに!?」
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