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第719話

Penulis: 鈴木真知子
雫の胸は激しく高鳴っていた。

彼女は満面の笑みを浮かべ、マイクに向かった。「ご来場の皆様、氷室グループ最新モデルの電気自動車『JX Ultra』の発表会へようこそ。まずは大スクリーンをご覧ください」

画面の中で、最新技術の粋を集めた美しいセダンが鮮やかなドリフトを決め、観衆の前に颯爽と姿を現した。

「うわあ、かっこいい!」

会場のあちこちから歓声が上がった。

観客の反応の良さに、雫は内心でますます浮き立った。

客席の浩一郎と多恵子は、娘の晴れ姿に顔をほころばせている。この発表会で雫が成功を収めれば、自分の会社であるウィンドスカイにとっても大きな追い風となる。氷室家との縁談を決定づける追い風にもなるだろう。

娘の活躍がよほど嬉しいのか、ここ数日多恵子に冷たくしていた浩一郎も、今夜ばかりは幾分表情を和らげているようだった。

「あれ、この新車……どこかノラの作品に似ていない?」

突然、誰かが口にした。

「ほんとだ!どこかで見たような気がするって思ったら!」

「でもノラって氷室グループとは契約解除したんじゃなかったっけ?それなのにノラっぽい雰囲気があるって……これって盗作
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    雫はあまりの動揺に、自分の声がマイクに拾われていることすら忘れていた。その狼狽した呟きは、会場にいる全員の耳に筒抜けとなっていた。スクリーンの中のウォルターは苦笑しながら首を振り、たどたどしく口を開いた。「偽物だという声が聞こえましたが、私はノラとは長年の友人ですよ。彼女は誠実な人間であり、このような見苦しい真似をするはずがありません。もっとも、彼女はAIの分野でも天才ですがね」蒼真は彩葉の泰然とした美しい顔を食い入るように見つめながら、激しく息を吸い込んだ。胸を大きく上下させたが、いくら深呼吸を繰り返しても、激しい動悸は一向に収まらなかった。業界の誰もが一目置くウォルターほどの人物と、彩葉は旧知の仲だったというのか。自分はその人物すら、直接目にしたことすらなかったというのに。今この瞬間、蒼真の目に映るかつての妻は、まったく見知らぬ他人のようだった。今日初めて出会った人間と対峙しているような錯覚に陥る。怒濤の如き衝撃に呑まれ、思考は完全に麻痺していた。雫は冷や汗でスーツを濡らし、入念に仕上げたはずの化粧も見るも無惨にドロドロに崩れ始めている。「ウォルターさん、ご無沙汰しております」彩葉はスクリーンに向かって、温かな笑みを向けた。「お久しぶりです、ノラ」無愛想な巨匠という世間のイメージとは裏腹に、ウォルターの彩葉に対する態度は格別に親しげなものだった。会場は騒然となり、配信を見守っていた視聴者たちも熱狂に沸き返った。【まじか!ターナルテック会長がノラって!しかもウォルターが友人とか、どれだけすごいんだ!】【完全にチートじゃん!】【ターナルテックが非上場なのが惜しすぎる。明日上場してたら株価どこまで跳ね上がったんだろ】【これで投資家が殺到するのは確実だな。上場も時間の問題か?】【この彩葉さんと結婚できる男、前世でどれだけ徳を積んだんだろうな……】一方、展示センターの外に停められた車の中では、弘明がネットのコメント欄を眺めながら内心でほくそ笑んでいた。「社長、もしこのタイミングで氷室様……いえ、彩葉さんが氷室蒼真の元妻だと世間に知れ渡ったら、大変な騒ぎになりますよ。林雫も永遠にネットの晒し者です。盗作の汚名だけでなく、略奪女として完全に社会から抹殺されますね」翔吾は長い足を組み、アームレストに

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    彩葉は絶妙な弧を描くように目を細め、笑みが深まった。「そう言うと思っていたので、今日、あえてうちの会社の新車デザイン図を公開したんです。御社の発表からわずか十五分しか経っていません。これで、どちらがパクったと言えるのかしら?」聴衆もなるほどと頷いた。こうなると、ターナルテックが氷室グループを盗作したという話は成り立たない。蒼真は胸を大きく波立たせ、ごくりと喉を鳴らした。だが彩葉を止めようという気持ちは微塵もなかった。むしろ、一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませていた。雫の新車デザインが出来上がってから、蒼真の心にも引っかかりがあった。誰かにその疑念を晴らしてほしかったのだ。「私の設計が盗作だと言う前に、そちらの会社のデザインをよく見てもらえますか!あちらこそノラを丸パクリしているじゃないですか!デザイン界の恥さらしも甚だしい!」雫は自分が主導権を握ったと思い込み、興奮のあまり顔を歪ませていた。「見てください皆さん、一体どちらが盗作なのかを!」「どちらがパクったか?それはあなたよ」彩葉の余裕たっぷりの佇まいに、雫の怒りは沸点に達した。声が裏返りそうになる。「何を根拠にそんなことが言えるんですか!」「根拠は――私がノラだから」彩葉の声は焦りもなく、静かで落ち着き払っていた。だが、芯の通った澄んだ響きがあり、その場にいる全員の胸に真っすぐ突き刺さった。会場が沸騰した。まるで屋根を吹き飛ばすほどの歓声が渦巻いた。雫はびくりと体を震わせ、よろよろと一歩後退した。信じられない思いで、目の前の憎たらしいほど美しい顔を凝視する。この女が……ノラ?ありえない……ありえるはずがない。あんなに地味で、何の取り柄もない女が、国際的なデザインの女神、ノラだなんて!?こんな馬鹿げた話が、どこにある!「ノラ……?」蒼真は弾かれたように椅子から立ち上がった。目の奥が激しく揺れ動き、その広い肩は震えを抑えきれなかった。ぼんやりと彩葉を見つめながら、まるで魂が抜け出たように、頭の中が真っ白になった。どういうことだ。彩葉が、ノラだと?つまり、この二年間――氷室グループの電気自動車を全国トップへと押し上げた功労者が、誰もが崇拝してやまないあの女神が――ずっと、自分のそばにいたということか?蒼真は荒い息を吐きながらも、動

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