LOGINあれは私が偽物のご令嬢様に卑き愛人だという濡れ衣を着せされた後のことであった。 彼女は、私を分娩室に閉じ込めるようと愛人退治屋さんという業者に依頼をした。 「恥知らずの愛人めが!子供ができたからって妻気取って威張ってんじゃないわよ!」 「今日こそ腹の中のガキに消えてもらうわよ。元々、どこの馬の骨が撒いた種かもしれないガキさ。これであんたももう二度とあたしの男に近つける真似はしないでしょう 鬼の面相をしていた愛人退治屋の女たちは、鉄の壁のように産屋の入り口を塞げ、私の出産のために駆けつけた産婦人科の医者たちを止めた。 私は愛人退治屋の女たちの前で跪いた。腹の中の子を助けてくださいと頭を下げた。 けど、私の命乞いに彼女たちは嬉笑で答えた。そして毒々しいことに、乱暴なな仕草で私の子を腹から引っ張り出し、私の目の前で床に投げて殺した。同時に、彼女たちはカメラを回して、この過程を録画したのだ! 私は正気を失って、亡き我が子の死体を抱きしめて、大泣き出した。しかし、この悲惨な私の様子を、彼女たちは「これが愛人になるものに相応しい報いだ」という文字を付け加えてSNSに投稿することにした。 その一件の後、、私は彼女が偽令嬢だということを暴いた。そして彼女と、その愛人退治屋の連中の裏での愛人のツラを晒して、ことをネットにアップした。 このことが炎上して、ネットバッシングに追い詰めた彼女は、とうとう私の前に土下座をして「どうか許してください」と請い願った。。 そんな彼女を見て、私は何十層もの高さのある屋上を指しながらこう言った。 「飛び降りろ。そしたら見逃してやる」
View More次は、あいつの番だ。市川徹也とは、カフェで待ち合わせ場所にした。彼のほうからの誘いだった。カフェは繁華街に位置していて、装飾もデラックスだった。これこそが大した金も持たないくせに、金持ちぶるあの男らしいやり方だった。彼が今日のために、入念に自分を着飾ったことは見え見えだった。きちんとしたスーツにきちんとした髪形だった。唯一に彼がここん最近、地獄の毎日を送ってきたことを示したのは、その凹みすぎた頬だった。私が座ったやいなや、彼は即座に水を出してくれた。「歳安はレモネードが苦手でしょう。お水を出してもらったの」彼の触った湯呑みを見つめて、私は嫌悪を隠さずに、口を開いた。「小早川潮、自殺したよ」彼の表情は一瞬固まった。そして、顔をあげた彼は、声を震えながら言った。「勝ったほうを許してくれるって、あの日言っただろう。あの女が死んだ今、勝ったのはこの僕だ。あいつが死んだ今、僕を見逃してくれるよね。そうだろう?」「小早川潮のこと、愛したんじゃないの?」徹也はなんの躊躇もせずに、素早く頭を振っった。そして、焦った口振りで、私への忠誠心をアピールした。「一時もなかったんだ。あいつと一緒になったのは、一名門からの加勢を手に入れるためだけだった」「僕の中で、唯一愛した女性は歳安、君だけだ。他の女とは、ただの遊びだけで、あいつらに惚れたことなど、一度もなかったんだ」「歳安なら分かってくれるよね。僕の生い立ちは普通の下で、出世するには自分の力しか頼れるものがないんだ」「今回のことは、人の見る目のない僕が悪かった。簡単に小早川潮の悪女めに騙された僕がいけなかったんだ。もう、許してくれよ。埋め合わせするチャンスを一度だけでいいから、くれるよね」彼は手を伸ばしてきて、私の手を握ろうとしたが、生理的に嫌がったから、私はその手を交わした。かつて私をメロメロさせた彼の顔を見て、私は無性に虫唾が走った。この男は、生い立ちがよくないから、当然のことに家柄のいい女性と結婚しようとした。自分が生き延びたいから、彼は必死に、潮を地獄へ押し落とした。自分の息子を殺めたことを触れずに、肝心なことを避けて枝葉なことばかり採り上げて、私からやり直す機会を求めた。彼のような、責任感もなく、弱虫で生に執着し、死を恐れる男は、心底から引いた。
私が陰で働きかけたので、潮のことはあっという間に各新聞のトップニュースとして掲載された。私の指示で雇われたちんぴらどもは、日夜問わずに、潮の家の外でカメラ持参で、彼女を待ち受けた。彼女が出かけるたび、彼らは迅速に飛び込んで、愛人を殴るストリーミングをしたのだ。何度も自宅の門前で、囲まれ殴りを食わせた潮は、とうとう我慢が限界になって、警察に通報した。警察がきてちんぴらどもを連れ去ったが、私はまた毒舌のおばさんや愛人に家庭を壊されて怨念の溜まった主婦を雇った。このものたちは、チンピラの何倍よりも怖い存在だった。特にその主婦たちだった。潮の黒歴史を把握して、カッとなった主婦たちも昼夜問わずにハラスメントをした。潮を追い込むため、主婦たちは自腹までして、シフト制で彼女に嫌がらせ電話をした。潮のことが暴かれて、続いて彼女の事務所で勤めていた愛人退治屋の連中がしでかした汚いことも、次から次へと世を騒がせした。潮の事務所の依頼人たちは、裁判所に行って、連名で潮を起訴した。一夜にして、彼女の事務所は破産した。従業員も全員まとめて逮捕された。潮には最初から対抗できる力など持っていなかった。散々悪事を働いてきた彼女の精神は、数日内で崩れた。彼女はカメラを向けて、鼻水が垂れるまで大泣きして、私に会う機会を乞った。私はカメラに映っていた痩せこけの潮をじっと見つめながら、ある高層ビルの屋上を待ち合わせ場所と決めた。「今夜ここで会おうと小早川に伝えてくれ」屋上で、潮はたった一人でやってきて、私の向こう側に立っていた。用心棒十数人に囲まれていた私は、皮肉そのものの目つきで彼女を眺めていた。「もう私に会いたがっているなんて、息子を殺したことを、償う覚悟ができたって理解してもいいよね?」彼女は頭を左右に振いながら、どかんと私の前に跪いた。「どうか許してください」私は足を踏み出して、彼女に近つけた。そして、彼女の髪を強い力で掴んで引っ張った。そして、険しい目つきで睨んだ。「許してください?」「病院での私も、こんなふうに泣きついたが、あなたは私を、私の息子を許してくれたか」「生まれたばかりのあの子をを、よくも母親である私の目の前で殺してくれたな......」私は正気を失い、吼えながら潮の髪を何度も引っ張った。彼女の痛
息子の火葬を見届けたあと、私は昏睡に落ちた。再び目を覚ましたのは三日後だった。私はぼんやりして息子の遺骨の入った箱を抱え、雲城で一番豪華なプレジデンシャルスイートに籠もっていた。ネットで上演中だった徹也と潮の殺し合いに高みの見物をした。潮は、徹也が留学していた頃に、数名の女性留学生と男女の関係を保有していたことをSNSで拡散した。写真とその真実だけではなく、見物の野次馬に読み易くように、タイムラインまでが整っていた。一番衝撃だったのは、潮はなんと当時の当事者までも、探し出したのだ。当事者たちは連名で、徹也のやらかしたことを暴いた。徹也が当初、騙しだの、薬を盛るだの、誘拐だの、あらゆる手を使って、彼女たちを強迫したことや、体を強引に重ねた後は、約束通りせずに、あっさりと彼女たちを捨てたことをネットにアップした。ネットに載っていたたタイムランを目にして、私の心臓は強く痛んだ。あの頃の彼が回り続ける独楽のように忙しくて、私に費やす時間すらなかったのは、こうやって合間を縫って、あんなことに夢中になっていたからだった。彼のことを、動力家で、勉学に励む向上心のある青年だと評価した私がバカだった。全てが彼によって精密に練って狂言だったとは思いもしなかった。私は懐にあった骨箱を、きっちりと掴んで、自嘲しながら苦く笑った。そして、指を動かして、ニュースを次のページへと捲った。潮の暴いた黒歴史が、徹也が入念に営んだ完璧キャラを踏み躙ったようで、潮を報復するため、彼も腹をくくった。徹也が暴いたのは、潮が運転手の娘と言う事実だけでは止まれず、彼女がいかに地位やお金のために、「愛人退治屋」だと名乗りながら、陰では金持ちの愛人をしていたかまで公にした。他には、数年前キャバクラで愛人退治活動をした潮が裏で、とあるの金持ちの愛人になって、依頼人にその現場をおさえられたことも暴いた。写真に映っていた潮は、血まみれでいつ息を絶えてもおかしくない状態でベッドに俯せになっていた。彼女の体には、ハイヒールが片方刺さっていた。多分、あのことで重傷になるまで殴られ、死にかけていたから、潮は「愛人退治屋」を卒業した。卒業しても、完全にやめられず、彼女は背後で糸を引く側につき、退治屋たちのボスになった。私はを分娩室に閉じ込めた女たちは、彼女の事務所の従業員
偽令嬢は驚きを覚えた表情で父を見て、すぐどっかりと父の前に跪いた。「上白石叔父様、どうして急にこの雲城へ?」彼女が言い終わると、彼女の後ろに立っていた愛人退治屋の連中も瞬時で血相を変えた。その者たちが蔑みの視線でその偽物を眺めながら、大声ではなかったが、ちゃんと聞こえるくらいの音量で彼女のことをディスった。「偽物が本物に良からぬことを働くとは、本当に大胆極まりだ」「ガキを殺したのあの女だ、うちらは加担してない」「うちらは、あくまでも従犯だけの程度よ。あいつこそが正真正銘の人殺しよ」「あいつのやったことを全部サツに教えようよ。実際のところ、これは全部あいつにやらせたことじゃん。うちら本物の名門令嬢にあったことないし、人違いも訳ありだしね」床に土下座をしていた偽物は、ただでさえ父の顔を見た瞬間に血相を変えていた。その女たちの話を聞いたら、さらに顔色が悪くなった。彼女は跪いたまま、父の前まで這ってきた。涙まみれの顔をあげて、弁解し始めた。「これは全部誤解なんです。これは全部あの男、市川徹也が悪かったんです。あたしはあいつの脅しで名門令嬢を装ったのです。あたしがいかに大胆でも、姉様をいじめることだけはとてもやりかねます......」姉様だと?私は依然として淡々とした目で、跪いた彼女を熟視した。すると、なんとなく彼女のことを思い出した。彼女は我が家の専用運転手さんの娘の小早川潮だ。幼い頃に母を亡くしたため、彼女の父親は働きながら、娘の世話をしていた。そんな彼女が気の毒で、加えて下の名前が私と同じ「潮」だったから、私の両親にとっては不思議な縁だった。一人娘の私の孤独解消にもなると思い、両親は彼女を我が家に預かることにした。彼女の父親はものすごくいい人だった。人柄が正直で、口数の少ないお人好しだった。私のことまで面倒見よくて親切してくれた。よく子供の私と潮に、面白いおもちゃを買ってくれた。あの頃は子供だったし、利心も持っていなかったので、潮とは親しい遊び相棒の仲だった。けど、全ては私が八歳の時に一変した。潮は私を連れて、用心棒全員を避けて、郊外までお花見に出かけた。お花見を満喫することは実現できなかった。私たち二人は途中で、乗っ取り犯に捕まってしまった。自分の命が助かるため、潮は私が一名門令嬢だと