Masukこうして会うのはもう何度目であろうか。最初は堅苦しかったジュリアスも徐々に態度が軟化してきていた。
「ロメオ様!この間貸してくださった小説、とても面白かったです!最後にまさかのどんでん返しが......ロメオ様?」
「いや。ふふ。最初に会った時は警戒心むき出しの猫の様だったのに今ではすっかり懐いてくれて......」
「私は猫なんかではありません」
思わずジュリアスはプイっとそっぽを向いた。しかし、ロメオはジュリアスの手を握り視線を合わせてジュリアスの瞳を独占した。
「......今度、アレクスとエルダリシアが戦争すると聞いた。友好的な関係を築けていたと思っていたんだがな......」
「......もう、こうしてお会いすることが出来なくなってしまいますね」
「あぁ......。戦争にはオレも参加することになっている」
「......はい」
そう言うと二人は握った手を遊ばせ、指を絡め合った。そしてどちらからともなく顔を近づけ口づけを交わした。
「......愛しているジュリアス。攫ってしまいたいと思う程に......」
「私も愛しています、ロメオ様。あぁ。なんで私たちは想い合うことが許されないのでしょうか......」
ジュリアスは美しい瞳から宝石の様な涙をポロポロと流し続ける。ロメオはその涙をすくい上げ、そっとジュリアスをなだめた。
「......ロメオ様。もし、もし私を想ってくださるのであれば、戦争開始してから三日後、またここに来てはくれませんか?」
「三日後?何があるんだ?」
「それだけあれば準備が整うのです。だから......」
「......分かった。約束しよう」
こうして戦争前の最後の逢瀬は終わった。
戦争が開始して二日目の夜。ジュリアスは城の自室で籠っていた。そこへ"コンコン"とノックの音が聞こえた。「はい」と答えると兄王子が二人揃って入ってきた。
「ジュリアス。いい子にしていたかい?」
「ここ最近は外には出ていません」
「よしよし。いい子だ。さ、服を脱いで?」
ジュリアスは兄王子であるアーロンとディオンの二人に命じられるがまま服を脱ぐ。その白磁のような肌には紅い花が咲いていた。
「あぁ......。やはりお前は美しい......。お前は未来永劫私達の物だ」
「そうだ、ジュリアス。お前にはオレ達がいればそれでいいんだからな」
「......はい。兄様方」
そうしてアーロンとディオンはジュリアスの身体をシーツの海へと沈める。この夜も、ジュリアスは兄達に抱かれる夜を送るのであった。心はロメオに向けたまま。そして、これも今日で最後だ、と自分に言い聞かせ只々耐える。そして夜が明けるのを待つのであった。
「それじゃあ、今日もいい子でいるんだよ?......今日こそこの劣勢を逆転させて見せる......!!」
アーロンはそう言うと、ディオンを連れジュリアスの部屋を後にする。二人が出て行ったのを確認すると、ジュリアスは机の引き出しにしまった瓶を二つ取り出した。そしてひっそりと城を抜け出すと、ルメリア川へと急いで向かった。
「ハァハァ......。ロメオ様!!」
「!ジュリアス!!」
二人は三日ぶりの逢瀬に喜びを感じ、強く強く抱き合った。
「ロメオ様。今日はこれを......」
「?コレは?」
「毒です。勿論私の分もこちらに。......今世で結ばれることが許されないのなら、貴方と共にこの場で死に、せめて来世で貴方と結ばれたい......。貴方とならば死ぬのも怖くはありません」
「......ジュリアス。それでいいんだな?」
ロメオが最後の確認をすると、ジュリアスは力強く頷いた。そして、最後に口づけを交わすと、二人寄り添いながら毒の入った瓶の蓋を開け、
「来世のオレ達に乾杯」
「来世こそは貴方と共に。乾杯」
そうして二人一気に瓶の中の毒を飲み干した。徐々に自由の利かなくなる身体を精一杯動かし、苦しみに喘ぎながら、二人は抱き合い永遠の眠りへとつくのであった。
翌日、楼はどうしても朝の部内集会に出なければならず、久々に璃亜は一人で登校することになった。......最近は楼と二人で登校していたため、少し不安な気持ちがあった。しばらくすると電車が来て乗り込む。そして、しばらくするとお尻に違和感があった。それに、耳には荒い息が聞こえてきた。「ハァハァ......久しぶりだねぇ。しばらくお邪魔虫がいたけど、今日はいないんだね?嬉しいなぁ」「......や、やめてくださ、い......」これまた痴漢にあってしまった。まだ電車に乗車したばかりで、下車するまで十五分ほどかかる。それまで耐えきれるかどうか......「前は痴漢仲間が捕まったし、その後は番犬みたいな男がいるしで......なかなか君が一人になる事がなくって僕、寂しかったんだよ?」痴漢男はそう言うと、手を前の方へと持ってきた。......まさか、前まで触る気か?!璃亜が戸惑い声を上げようとしたその時だった。その手を掴む人物がいたのだ。誰だ?と驚いて顔を上げると......そこにいたのは、澄春であった。「池内、さん?」「璃亜さん大丈夫ですか?!ってあ!お前逃げるな!!」電車が停まったタイミングで痴漢男は澄春の手を振り解き、逃げて行ってしまった。「チッ。逃げ足の速い奴め......」澄春は追いかけようとしたがそれを璃亜が震えた手で引き留めた。「り、璃亜さん?」「......い、行かないで。そばにいて......」「璃亜さん......わかりました。下車する駅一緒なので学校の途中まで送りますよ」「え......池内さんは?」璃亜が疑問を持ったのは、"同じ駅で下車"と言う事だ。今まで池内のような人は見た覚えはない。「今まで同じ車両に乗った事はなかったかもですね。でも、これからは楼坊ちゃんがいない時はオレが一緒にいるんで安心してください!」「......ありがとうございます、池内さん」「そんな!澄春でいいですよ!璃亜さんは雇い主の息子さんなので!」そう言うと澄春は璃亜の手を取り歩き始めた。「す、澄春さんはこっちに何か用事でもあったんですか?」「あれ?言ってませんでしたっけ。オレ、璃亜さん達の高校の近くの大学に通ってるんですよ」「え!初耳ですよ!」璃亜は驚き目をまん丸くした。すると、澄春は照れ臭そうに頭をかいた。「大学の講義が午前の時はこ
「それじゃあ、オレ達宿題するから。澄春さん上がりの時間だろう?今日は帰っていいよ。お疲れ様」「そんな......せっかく出会えたオレの天使......」「......いや、貴方のではありませんし」「そんな氷の女王の様なところも素敵です......!!」と澄春は再び璃亜の手を握る。璃亜はその手を解こうとするが......なかなかの剛力である。思わず璃亜は楼に助けを求める視線を送る。楼は"ハァ......"と大きなため息をつくと、澄春の肩をポンッと叩くと澄春にとっては絶望的な事を言い放った。「澄春さん、あまりにい酷いと......ク・ビ、だからね?」「そ、それだけはご勘弁を......!!せっかく拾ってもらえたのに......!!」「......"拾ってもらった"?」「何でも、澄春さん、末端ホストで、売り上げが上げられずクビ。おまけに手を出しちゃいけない女に貢いで借金地獄。......そんなところに父さんが手を差し伸べたってわけ」そんな話を聞いてしまうと、情に弱い璃亜は可哀そうな子犬を見る目で澄春を見る。......そして。「僕と楼君の邪魔しないなら......いてもいいよ」「璃亜さん!!」「ただし!僕へのボディータッチはNGだからね?」「はい!ありがとうございます!!それじゃあ、オレ今日は失礼します!!」そう言うと、澄春は蔵之家を後にした。そして二人は楼の部屋で宿題を始めた。「それにしても、意外とあっさり許したね」「ん?あぁ。"昔"いたんだよ。女運が悪くて大金を貢がされた挙句に捨てられら騎士見習いが。僕が見かねて話しを聞いてたりしたら懐かれてね。......滅多に外に出られない僕にとってはかけがえのない"友達"だったんだ」楼は黙って話を聞いていたが、なんだか面白くない。......ジュリアスは自分だけが心の拠り所であればいい。そんな醜い独占欲が心の中に渦を巻いた。しかし、そんな楼の様子に気づいてか、璃亜は楼の隣に腰を下ろすと、楼の肩に頭を乗せた。「......今も昔も僕に"自由"をくれたのは君だけだよ?だから......その、ありがとう」「!!璃亜!!」「うわぁ!!」楼は思わずそのばで璃亜を押し倒した。そして、熱く、深い口づけを交わした。「んむ......あ、んン......んふ、んや......」「可愛いな、璃亜」「.
駅に向かう際中、楼はとあることを思いだした。これは人見知りしそうな璃亜には話しておいた方がいいだろうと、彼に話しかけた。「璃亜。今日なんだけど、お手伝いさんが来る曜日なんだ」「......お手伝いさん?」ほら、やはり身構えた。お手伝いさんがいるのは知っているはずなのに何に怯える必要があるのやら......。「母さんがいるんだから、お手伝いさんいらなくない??」「瑠々花さんも働いてるし、ウチ広いだろう?だからお手伝いさん来てもらった方がいいんだよ」「......ふーん」なんだか納得していない様子の璃亜に、どうしたら納得してもらえるか必死に考えていた。必死に考えているのにコレといっていい案が出てこない。そうこうしている間に電車に乗り、家についてしまった。......何でこういう時に限って帰り道がスムーズ......!!「ただいま帰りました」「......ただいまぁ」声をかけると、二階から一際大きな男が現れた。璃亜は想像もしていなかった人が登場したもので、カチンコチンに固まってしまった。「楼坊ちゃんおかえりなさい。......そちらが例の......??」「あぁ、紹介する。オレの弟になった、雛形 璃亜。璃亜、こちらがお手伝いの......」「池内 澄春です!!璃亜さん!よろしくお願いいたします!!」澄春は名乗ると璃亜の手をギュッと握った。そしてとんでもない爆弾を落としたのであった。「璃亜さん!一目惚れしました!どうかお友達から......」「ごめんなさい。僕、今楼君に攻略されてる最中なので。」「んンー。キッパリしたところも素敵だ!ますます惹かれました!!」「......楼君この人、人の話し聞かないタイプ?」どうやら璃亜も気がついたらしい。そう。この澄春と言う男、自分の感情に素直すぎて、思った事には一直線なのである。そして何を言おうゲイなのである。バイではない。ゲイだ。「......璃亜の事、きっとドストライクだろうから会わせたくなかったんだけど......。オレが部活の日、心配すぎる......」「何を心配するのさ。僕らは"友達以上、ギリギリ恋人"、でしょ?......僕だって楼君の事思ってるんだからね?」「璃亜......」玄関先でイチャイチャし始めた二人に、澄春は我慢できずに叫んだ。「二人でイチャつくのやめてください!
「......そう言えば、部活はどうしたの?」「璃亜がピンチかもしれないのに部活なんてしてる場合じゃないだろう。現に危ないところだっただろう?......それにしても......」「?」「あの三人まだ何かするつもりだぞ?気を抜くなよ?」「なんだか怖い気しかしない」璃亜がそう言いながら不安がると。楼は璃亜を抱きしめる腕に力を入れた。「大丈夫。もうオレが離れずに守ってやるから。......だからもうあの三人と二人きりになったりしないようにな」「う、ん」「だから、もう今日は帰ろう」と、楼が言うと二人は揃って家路へと着こうとした。と、その時だった。一人の男子生徒が二人の前に現れたのである。その男子生徒とは、同じクラスで、璃亜を階段で躓かせた、森であった。「あ、あのよう......雛形、話しがあるんだ。あ!心配だったら楼も一緒でもいい!」「......どうする?璃亜」「......ここで良かったら聞くよ」「!ありがとう」そして。森は話し始めた。話の内容はもちろん純恋の事についてであった。森と純恋は所詮幼馴染で、昔は結婚の約束をする程対等で仲の良い関係であった。純恋の性格もとても優しいかった。しかし、高校で楼と出会ってからまるで人が変わったかのような人間になったという。「......オレ、まだ佐伯ちゃんの事好きだからさ、佐伯ちゃんに言われるがまま雛形に酷い事をしてきた。それについて謝りたい!悪かった!!」「......正直関わらなければいいか。と思っていたから別に謝ってもらわなくても良かった。でも、森君の誠意を無碍にするような事はしたくない。......よかったら、"友達として"仲良くしていかない?」「!!雛形、ありがとう......!!」楼は二人のやり取りを見てやれやれと首を振った。璃亜は前世からそうだ。何に対しても、誰に対しても優しすぎるのだ。......そんなところが魅力の一つであるのだが。「......って、何手を握ってんだよ!森!その手を離せ!!」「な、なんだよ!別にいいだろ?!お前の物じゃないんだから!」「残念でしたー!璃亜とオレは恋人同士ですー!」「......本当か?雛形」「恋人と言えば恋人、かな?でも今は楼君、僕の事攻略中だから」「友達以上、ギリギリ恋人。みたいな?」というと森は不思議そうに首をかしげる。それを聞
璃亜にとって今日一日の学校生活が早く終わった。今日は図書委員の当番でもないため、真っすぐ新しい家へと帰る事にした。「璃亜!もう帰るのか?「うん。用事もないしね。楼君は部活でしょ?頑張ってね。あ、家に帰ってきたら朝言った通り聞きたい事があるから。それじゃ」自分でも冷めた態度になってしまったかと思っている。しかし、駅での純恋の言葉......楼は璃亜に何かを隠している。そう思いながら人気の少ない廊下を歩いていると、突然背後から口を塞がれ空き教室へと連れ込まれた。そしてそのまま机に身体を縫い付けられる。「いった......なに?」「ジュリアス。お前が悪いんだぞ?オレ達を蔑ろにするから......」犯人は一之瀬兄弟であった。この二人はまだ自分を諦めないのか......と感じた。「兄様方。私はもうあの頃のように貴方たちの言う事を聞く事はしません。離してください。学校でこんな事をすると停学......最悪退学になりますよ?」璃亜の強い言葉に二人はグッと押し黙ってしまった。そこへ待ち構えていた純恋がしびれを切らせて姿を現せた。「ちょっと!あんた達二人がかりなのに、何もたもたしてるのよ!早くしないと呼び出した楼が来ちゃうじゃない!!」「え?楼君?」「そうよ!あんたがこの二人に穢されるところを見て軽蔑させる作戦なんだから!」「......ふーん。やっぱりそういう事か」純恋が作戦を包み隠さず璃亜へと暴露すると彼女の背後から一人の男子生徒が。もちろん正体は楼である。「ろ、楼!違うのこれは......」「何が違うの?この手紙、お前だろ?佐伯。気づいてたんだよ。お前ら三人が何かを企んでいたのを」「そ、そんな......で、でも!本当は貴方は私の物になるはずだったのよ?!だって私は貴方の婚約者!!ね?今世こそ私と結ばれましょう?」純恋が楼に詰め寄り抱き着く。その様子を見た璃亜は心がズキンと痛むのを感じた。しかし、楼は純恋を自分から引き離すと一発。軽いビンタをしたのだった。純恋は頬を押さえ涙目で楼を見つめると、そこにいた楼はとてつもなく冷たい目をしていた。「佐伯、一之瀬。オレはお前らを許さない。すぐにここから出ていくのであれば教師には何も言わないでいてやる。......さっさと失せろ」楼がそう言うと三人は逃げるようにその場を去って行った。「......ハ
璃亜は電車に揺られながら純恋の言った言葉の意味を考えていた。『彼女は一体何者なのか』『彼女とロメオの関係はなんなのか』。そんな事が頭の中をぐるぐると回っていた。もし、彼女に楼をとられてしまったら......考えただけでも恐ろしくなってしまう。「......あ、璃亜!!」「!あ......ごめん、ボーっとしてた。なに?」「何じゃない。顔色、凄い悪いよ?......まさか、佐伯に何か言われたか?!」ほら。楼はこんな時も鋭い。隠し事なんて最初から無理だったんだ。「......今日、家に帰ったら聞きたいことがあるんだ。それまでは、そっとしておいて」「璃亜?」「あ、ほら。もう駅に着くよ」璃亜は話を逸すと、無言で電車を降り、そこから学校までは一言も話さなかった。そんな璃亜の様子に楼は"今日一日、純恋と璃亜には注意しておかなくては"と感じた。学校に着くと、璃亜はクラスメイト達から囲まれる事態となった。「雛形君どうしたの?!コンタクトになってる!イメチェン?」「メガネが壊れちゃって......新しいの作ってるんだけど出来上がるまでは仕方なく」「えー!いいじゃん!これからもコンタクトでいよーよ!楼君と並ぶとと眼福だし♡」クラスメイト達は璃亜と楼をくっつけてスマホで撮影会を始めた。それを面白くなさそうに陰から見ているのは純恋と一之瀬兄弟であった。「ちょっと。あんたらの弟でしょ。なんで捕まえとかないわけ?」「オレ達だってジュリアスの事は喉から手が出るほど欲しいさ!......だがお前の所の王子が邪魔なんだよ」「お前こそ、王子に相手にされてねぇじゃないか!昔からそうだったよな。パーティー会場で必死こいて金魚の糞してる癖してさ」「う、うるさいわね!私だって......私だってロメオ様に振り向いてもらいたいわよ!」実は、前世で起きた戦争の発端はこの三人が仕掛けたものだった。スカーレットはロメオを自分の物にするため。アーロンとディオンはジュリアスを自分たちの物にするため。なぜ戦争を起こすことになったのか。それはジュリアスとロメオが密会をしているのを知ったからである。そのためこの二人を引き離すために仕向けたものであった。「何が何でも今度こそロメオ様を手に入れるんだから......!!」「とはいっても一体どうすれば......」「......二人がロメオ様よ
ご馳走を母と二人でたいらげ、風呂に入って自室へとやって来ると、璃亜はベッドにダイブした。朝、痴漢にあったと思ったら、校内カースト上位の楼に助けられ、何故かひどく懐かれた。そして、学校から帰って来ると、母が再婚すると言うビッグニュース。なんだかジェットコースターの様な一日であった。...そう言えばLINEよこすように言われてたな。璃亜はベッドから起き上がると、机の上に置いたカバンからペンケースを取り出し、中からIDの書かれた紙を手にすると再びベッドへと戻る。「えーと...?ID検索っと。...あった。」検索した際出てきたのは、可愛らしいポメラニアンのアイコンで"ROU"との表示が。璃亜は思
あれから何とか午後の授業をこなし、璃亜は図書委員の仕事に向かおうとした。その時、楼が声をかけて来たのだった。「雛形、これから図書委員?」「あ、う、うん。蔵之君は部活?確か弓道部だったっけ?」「!知っててくれたんだ。...嬉しい。」「そ、それで何かあった?」そう問いかける璃亜に楼は耳打ちをした。「電車、まだ怖いでしょ?オレ一緒に乗るから。帰り玄関で待ってて。」「!」璃亜は囁かれた耳をバッと抑え顔をリンゴの様に真っ赤にした。そんな璃亜の様子を微笑ましそうに楼は見やると、「また後でね。」と声をかけ去って行った。「ぼ、僕どうしちゃったのかな...?」自分の気持ちに整理がつかないで
その日の学校は散々であった。遅刻の理由が痴漢によるものだという事がクラス中に知れ渡ってしまったからだ。「雛形ぁ、お前痴漢にあったとか嘘だろ?楼まで巻き込んで何考えてんだぁ?」「ホントだとしても、雛形君に痴漢するとか男も見る目なぁい(笑)」カースト上位にいるクラスメイトはどうもこう弱いものに絡むのが好きだな。こういうのは無視するに限る。しばらく好き放題言わせていると楼が璃亜の元へとやって来た。「お前らさぁ。オレ、ちゃんとこの目で見てたんだけど?なんで雛形が嘘言ってるとか言うわけ?」「く、蔵之君...」「いや、でもさ。佐伯ちゃんみたいに可愛い子だったら、痴漢にあったとかわかるよ?でも
"ガタンゴトン、ガタンゴトン"と今日も今日とて電車にその身を揺られながら学校へ向かう。この時間は通勤通学による満員電車となっているため、身動きがなかなかとれない。そのため、いつもの様に、雛形 璃亜は痴漢にあっているのであった。"気持ちが悪い"。今日はいつにも増してねちっこいやつであった。「あと学校まで二駅...。早く着け。早く...。」そう思い我慢している時だった。急に触っていた感触が無くなり何事かと思い顔を上げると、痴漢の手を掴んで捻り上げている人物がいた。「おい、おっさん。痴漢してやがったな?次の駅で一緒に降りてもらうからな。」「な!なんだお前!わ、私が痴漢をしていたという証拠は