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千個目の願いは、あなたの幸せ
千個目の願いは、あなたの幸せ
Auteur: 風の囁き

第1話

Auteur: 風の囁き
私、黒木小夜(くろき さよ)は、3年前に隠しておいた薬を取り出し、一気に飲み干した。

薬が胃の中で焼けるように痛んだ。

それでも指は、勝手にコメント欄をスクロールし続けていた。

【可哀想に、またあの頭のおかしい女のところへ戻らなきゃいけないなんて。いっそあの時死なせておけばよかったのに】

このコメントは私が支援していた苦学生の森田陽菜(もりた ひな)だ。産後鬱と診断されたあの日、陽菜は泣きながら私に長生きしてほしいと言っていたのに。

【惜しかったね、ただ巡り合わせが悪かっただけ。愛梨と先に出会ってさえいたら、結婚してたのは絶対あんたたちの方だったのに】

このコメントは私の同僚の佐伯麻衣(さえき まい)だ。麻衣は結婚式でブーケを受け取って、満面の笑みで私と黒木涼介(くろき りょうすけ)はお似合いの2人だって褒めてくれたのに。

【大丈夫、どうせ同じ会社にいるんだから、いざとなったらみんなで口裏合わせてあげるから】

このコメントは私の大学時代のルームメイトの木下遥(きのした はるか)だ。

涼介が私に告白したあの夜、遥は目を赤くして、もし私を裏切ったらただじゃおかないからと彼に釘を刺していたのに。

目の奥が熱くじんわりと滲んだ。

なるほど、みんな知っていたのだ。それなのに、示し合わせたように私にだけ黙っていた。

幸せをぶち壊した、死んで当然の人間は、私の方だったってわけだ。

構うものか。

もうすぐ、みんなの願いが叶う。

……

玄関の外で、解錠音がピッと鳴った。

3人がスーツケースを引きながら、笑い合って中に入ってきた。

私と目が合った瞬間、涼介は眉根を寄せ、咎めるような声を上げた。

「小夜、俺が迎えに行くって言っただろ?一人で帰ってきて、何かあったらどうするんだ」

私は口を開きかけたが、それより先に涙が止まらなくなった。

涼介は慌てた様子で、駆け寄って私の涙を拭った。

「悪い。責めたかったわけじゃないんだ、泣かないでくれ」

背後から、親友の姫川愛梨(ひめかわ あいり)が私の息子・黒木朝陽(くろき あさひ)の手を引いて入ってきて、からかうように笑った。

「小夜、3年ぶりなのに、相変わらず泣き虫なんだね」

朝陽は愛梨の後ろに隠れながら、物珍しそうに私を見つめていた。

胸がずきりと痛んだ。

3年前はまだベビーカーに乗っていた赤ちゃんが、今はもう自分でランドセルを背負えるようになっている。

私は震える声を抑えて、しゃがみ込んで彼に両手を広げた。

「朝陽、こっちにおいで。ママに抱っこさせて」

朝陽はびくりと身を縮め、不安げに愛梨の服の裾を掴んだ。

「ママ、この人は誰?」

私は一瞬、言葉を失った。

涼介が優しい声で説明した。

「小夜、気にしないでくれ。この3年間、愛梨がずっと朝陽のそばにいてくれたから、呼び慣れちゃっただけなんだ。

どうせ愛梨も朝陽の名付け親みたいなものだったから、特に問題はないと思う」

そこで初めて、彼ら3人が揃いの親子コーデを着ていることに気づいた。

愛梨は困ったように両手を広げた。

「これ、幼稚園の宿題なのよ。家族で親子コーデを着て、写真を撮らなきゃいけなくて。

小夜がいなかったから、私が代わりに撮るしかなかったの。嫌なら脱いでくるけど」

愛梨の口調はあまりにも堂々としていた。もし私があのコメントを見ていなかったら、信じてしまうところだった。

私は胸の奥の苦さを飲み込んで、なんの指摘もしなかった。

「いいよ、その服似合ってるし。着てて」

私が以前のように取り乱さないのを見て、涼介は目元を少し緩ませ、私の頭を撫でた。

「小夜も物分かりが良くなったな。3年間の治療はちゃんと効果があったみたいだ。

ちょうどいい、お前の1000個の願い事、どんな内容か見せてくれよ」

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