INICIAR SESIÓN「山賊の規模と練度、装備や経験は?」
「30人程度の集団だ。長年この山で略奪行為をしているだけあって手慣れている。魔法を使えるものはいないし、軍警に討伐要請を出すほどではないが、それぞれの屋敷が用意した用心棒を蹴散らす程度のちからはある」 「ふぅん……」 メルランスが考え込む。30人からなる荒くれものたち相手に、女の子ふたりと足でまといひとりでどこまでできるか。 しかし、この依頼を成功させなければ『嘆きのミセリコルデ』は手に入らない。 顔を上げたメルランスが重々しくうなずき返す。 「わかった。あたしたちでなんとかしてみる。『なんとか』の内容は任せてくれるんでしょ?」 「とりあえず、我が屋敷に危害を加えなくなればいい」 「それでよし。あとはこっちに任せて」 了承したメルランスに従って、南野は改めて『嘆きのミセリコルデ』のことと、突然の訪問を詫び、メイドに促されるまま書斎を後にした。 屋敷を出たとたん、南野は情けない顔をしてメルランスに問いかける。 「……本当に大丈夫なんですか?」 そんな南野に、メルランスは呆れたような顔をして、 「あんたねえ、交渉事はあんなに堂々としてるのに、一歩外に出たらそれ?」 「山賊……街にはいないひとたちですね。私、会うの初めてです」 まるで物見遊山のようなことを口にするキーシャ。 そんなキーシャに、メルランスは少し不機嫌そうな顔をしてから、 「相手はどーせ群れてないとひとひとり襲えないヘタレだよ。魔法も使えないみたいだし、普通の山賊なら何回か討伐したことあるし。30人……はちょっと多いけど、四六時中30人全員で固まってるわけじゃないでしょ。奇襲をかければ各個撃破できる」 「……お任せします」 「今回はあたしひとりじゃないから。キーシャ、あんたも魔法で支援して」 「えっ!? 私ですか!?」 いきなり水を向けられて、キーシャは目を丸くした。それから、ぶつくさと言い訳めいたことをつぶやき出す。 「私、街の外に出たこともないし、魔法だって実戦で使ったこともないし……」 「つべこべ言ってないでやるの。社会に出る予行演習だと思ってやんなさい」 「……はい……」 メルランスのごり押しで、キーシャは一応納得したようだった。『創生神ファルマントよ、どうか私にご加護を……』などと両手を合わせて祈っている。 「奇襲をかけるなら夜になってから。それまでに山賊の拠点を見つけて、地形を分析する。いい? 今回は連携しなきゃいけないからね。作戦会議はしっかりと」 「例によって俺はおとなしくします」 「それでよし」 こういうとき、自分の無力さを痛感する。何かできれば、と思うのだが、自分が何かをすればそれこそ足手まといだ。おとなしくしているのが一番の協力なのだ。 その後三人は山に踏み入って、残っている狩りの痕跡や焚火の跡、草の倒れ方などからひとの行き来をたどり、山賊の拠点らしき掘立小屋を見つけ出した。井戸も引かれており、一応の生活はできるようだ。 が、文明のにおいがしないあたり最低限の生活なのだろう。 「……ぜい、ぜい……メルランス、さん……ここですか……?」 「……はあ、はあ……やっとみつけた……」 「あんたたちねえ、体力なさすぎ!」 そろって呼吸を乱すふたりに対して、メルランスが呆れたように言い放つ。アップダウンの激しい山道を夕方までノンストップで歩き回ったのだ、現代人がいくら運動不足とはいえ重労働すぎではないか。 街暮らしのキーシャも同じくらしく、加えて女の子ということもあって、かなり消耗している。 ふたりを見てマズいと思ったのか、メルランスは適当な茂みを指さしてふたりに言った。 「あんたたちはここで休んでて。くれぐれも見つからないようにね。あたしはもう少し辺りを探索して地形を確認してくる」 そうしてメルランスは草木に潜むようにしてどこかへ行ってしまった。 残されたふたりはべったりと地面にへたりこみ、荒れた息を整える。 「はぁ……キーシャさんは街を出るのは初めてなんですか?」 なんの気なしの世間話を振ると、キーシャは膝を抱えてうなずいた。 「教会学校は基本的に外出許可がないと出られない全寮制ですからね。今回も卒業研究のためってことで許可をもらってきました」 「じゃあ、箱入りってわけだ……」 「大事に育てられたってわけじゃないですけどね」 苦笑いするキーシャ。なにか事情がありそうだ。無言で話の先を促す。 「父も母も厳格なひとで、ひとりっ子なんですけど、みんな教会学校に通ってるんです。基本的にこの世界の学校って男女別で、男は兵士になるために、女は良妻賢母になるために、って感じで」 なにか思うところがあるのか、キーシャはそこで一拍置いて、 「私は魔法の適性があったから魔法学科に入ったんですけど、それが逆に『女は社会に出る必要はない』って両親から不興を買って。だから、あんまり家族仲は良くないんです」 「そういうものなんですね……」 昔の日本にも似たような価値観があった。こういうのは万国共通なのかもしれない。 男は男らしく、女は女らしく。南野は特別男女平等主義ではなく、それぞれの役割分担があってもいいと思っているのだが、行き過ぎた押し付けは好ましくない。 「けど、ご両親はキーシャさんの将来のことをちゃんと考えてくれてるんじゃないですか? 学校にまでやってくれて」 「いえ、両親は単に世間体を気にしているだけだと思います。そういうひとたちですから」 ちからなく答えるキーシャの言葉にはあきらめの色がにじんでいた。 普通の家庭に育って普通に育てられた南野にとってみれば、そういう家庭もあるのだな、という認識しかない。同情するだけ野暮というものだ。 ……しかし、気まずい。 しばらくの間、ふたりの間には沈黙が訪れるのだった。「とにかく、散開して森の中に潜んで! 道が狭いからまだ一体多数は避けられる!」 メルランスの言葉に、三人は散って夜の森の中に駆け込んだ。 とにかく何も見えないので、つまずきかけながらも走る。時折木にぶつかりながらできるだけ元の地点から離れないようにぐるぐる逃げ回った。「男の方はあっちだ!」「ちくしょう、ぶっ殺してやる!」 背後から聞こえる怒声に背筋をビビらせながら、とにかく逃げ回った。「きゃー!!」 ほど近くからキーシャのものらしい悲鳴が聞こえる。次に聞こえたのは、ずん!と大地を揺るがすような衝撃だった。ぎゃー!!などと今度は山賊たちの悲鳴が聞こえる。「来ないでー!!」 ばん!ばん!と大爆発の音と上がる火の手の明かり。どうやらキーシャは恐慌状態に陥って魔法を乱発しているらしい。 あの威力で連射されたら山の一角が焦土と化しそうだ。マズいと踏んだ南野は、急いで元の場所に戻った。 戻ってきた掘立小屋は、もうそこにはなく、根こそぎ消し飛んでいた。あたりには負傷した山賊たちが呻きながら倒れ、残った数人の山賊たちもキーシャをなにか恐ろしいモンスターでも相手にしているかのように遠巻きに警戒している。「キーシャ!」 メルランスも状況を危ぶんだのか、すぐに戻ってきた。「うわああああ!! 『第百五楽章の音色よ! 創生神ファルマントの加護のもと、巨人の鉄槌を大地に振り下ろすがごとき旋律を解き放て!』」 印を切る手と呪文詠唱だけは正確なのは魔法学生らしいと言えるだろうか。どぉん!と音がして、不可視の重力波が地面をへこませた。「やめなさい! これ以上は人死にが出る!」「やめて来ないでええええ!!」 完全にパニックに陥っているキーシャに、メルランスの言葉は届かない。 どうすればいいか。南野が頭を悩ませていると、メルランスが駆け出す。 疾風のような勢いでキーシャの懐に滑り込み……そのまま体当たりするように、ぎゅう、と彼女のからだを抱きしめた。「大丈夫だから! 落ち着いて! 私たちがいるでしょ!」「……あ、う……」 突然の抱擁に呆気にとられたのか、キーシャはぽかんとして動きを止めた。ぱたり、魔法を乱発していた腕が落ちる。「大丈夫。怖いことなんてなにもない。だから、落ち着いて」「……あ、ああ……私、わたし……」 次第に我に返っていくキーシャは、辺
話を変えよう。南野はふと思いついたことを口にしてみた。「そういえば、キーシャさんは魔法学を勉強してるんですよね?」「はい、教会学校で魔法について学んでいます」「じゃあ、俺にも魔法、教えてくれませんか?」 少しでも魔法が使えれば足手まといを脱却できるとの考えだった。果たして異世界人の自分に魔法が使えるのかどうかはわからないが、ダメ元だ。 キーシャは難しそうにうなると、「そうですね……魔法を使うには、まずは適性が必要になるんです。からだじゅうの魔力を形にするちからですね。信仰心はあんまり関係ないですけど、教会で加護を受けなければいけません。あとは精神修養に、魔力を具現化する構成力の訓練です。これは一週間でできるひともいれば数年かかるひともいます。だから、今すぐに使うことはできません」「そうですか……」 考えが甘かったらしい。一朝一夕で魔法が使えるなんて虫のいい話はないのだ。魔法を使うにも努力や修練は必要らしい。 少し落ち込んだ様子の南野をフォローするように、キーシャが付け加える。「あっ、でも! もしかしたら異世界のひとにしかない特別なちからとかあるのかも!」 慰めるようにかけられた言葉には、ひとつ思い当たることがあった。 『サバラの泉』で感じた、アイテムのちからを最大限以上に引き出すちから。 あれが勘違いでなければ、自分にだってできることはあるのかもしれない。 しかしあくまでも勘違いの可能性が高いので、キーシャには黙っておいた。 そのあとふたりはなんてことない世間話などをしながら休み、メルランスを待った。 彼女が帰ってきたのは日が沈んでからだった。帰ってくるなり水を飲みながら、分析の報告をする。つくづくタフな女の子だ。「あの主人が言った通りの戦力っぽいね。くっさそうな野郎どもが30人くらい。みんな武装してるけど、魔力の気配はない。この辺の地形なら奇襲は簡単だよ。あの掘立小屋もボロ屋だし、山賊どもが寝静まって、見張りのやつが数人出てきたらそっから片付けよう」 疲れを感じさせない調子でてきぱきと言うメルランスに、休んでいたふたりはうなずき返した。 それから携帯食で夕食を済ませ、言葉少なに体力を温存していると、やがて夜がやってきた。三日月が昇り、辺りは暗闇のしじまに沈む。「……出てきた」 掘立小屋から出てきて焚火を起こし、酒を飲み
「山賊の規模と練度、装備や経験は?」「30人程度の集団だ。長年この山で略奪行為をしているだけあって手慣れている。魔法を使えるものはいないし、軍警に討伐要請を出すほどではないが、それぞれの屋敷が用意した用心棒を蹴散らす程度のちからはある」「ふぅん……」 メルランスが考え込む。30人からなる荒くれものたち相手に、女の子ふたりと足でまといひとりでどこまでできるか。 しかし、この依頼を成功させなければ『嘆きのミセリコルデ』は手に入らない。 顔を上げたメルランスが重々しくうなずき返す。「わかった。あたしたちでなんとかしてみる。『なんとか』の内容は任せてくれるんでしょ?」「とりあえず、我が屋敷に危害を加えなくなればいい」「それでよし。あとはこっちに任せて」 了承したメルランスに従って、南野は改めて『嘆きのミセリコルデ』のことと、突然の訪問を詫び、メイドに促されるまま書斎を後にした。 屋敷を出たとたん、南野は情けない顔をしてメルランスに問いかける。「……本当に大丈夫なんですか?」 そんな南野に、メルランスは呆れたような顔をして、「あんたねえ、交渉事はあんなに堂々としてるのに、一歩外に出たらそれ?」「山賊……街にはいないひとたちですね。私、会うの初めてです」 まるで物見遊山のようなことを口にするキーシャ。 そんなキーシャに、メルランスは少し不機嫌そうな顔をしてから、「相手はどーせ群れてないとひとひとり襲えないヘタレだよ。魔法も使えないみたいだし、普通の山賊なら何回か討伐したことあるし。30人……はちょっと多いけど、四六時中30人全員で固まってるわけじゃないでしょ。奇襲をかければ各個撃破できる」「……お任せします」「今回はあたしひとりじゃないから。キーシャ、あんたも魔法で支援して」「えっ!? 私ですか!?」 いきなり水を向けられて、キーシャは目を丸くした。それから、ぶつくさと言い訳めいたことをつぶやき出す。「私、街の外に出たこともないし、魔法だって実戦で使ったこともないし……」「つべこべ言ってないでやるの。社会に出る予行演習だと思ってやんなさい」「……はい……」 メルランスのごり押しで、キーシャは一応納得したようだった。『創生神ファルマントよ、どうか私にご加護を……』などと両手を合わせて祈っている。「奇襲をかけるなら夜になってから
「それで、今日の獲物ですよね」 仕込みを終えた南野がカウンターに出てきて、『レアアイテム図鑑』を開く。すうっと浮かび上がった文字と挿絵は、なにかの刃物のようだった。「『嘆きのミセリコルデ』……『かつて戦場で友の介錯をした騎士の持ち物で、その悲しみのあまり、この短剣では誰も傷つけられなくなった』」「やっといわくありげな品が出てきたね」「呪いの一種でしょうか? 興味あります!」 ふたりともやる気のようだ。 ミセリコルデ……慈悲の短剣。戦場で死にかけた兵士を楽にするために作られた短剣だ。もちろん武器としても使えるが、このミセリコルデはひとを傷つけられないという。 南野は早速今回のプランを立て始めた。「まずは、どこにあるかが問題ですね」「ダンジョンにはないだろうね。そんな珍しいアイテム落ちてたら、とっくに誰かの手に渡ってる」「じゃあ、今回は危ないことはなしですね」「……さあね?」 メルランスが意地悪そうに笑う。へそ曲がりというか、天邪鬼というか、なんとも一筋縄ではいかない女の子だ。 やれやれ、とこっそりため息をついてから、南野は気合いを入れ直してキリッとした。「それじゃあ、行きますか」 そうして南野たちは、三人で図鑑の上に手を置いて目を閉じる。 次に目を開けたときには、深い緑の中にいた。とはいえ、原生林というわけではなく、きれいに整備された森の中である。ところどころに豪奢な屋敷があるところを見ると、別荘地なのだろうか。「あらあら、オカネモチがいっぱいいそうなところだこと」 なぜかメルランスが不機嫌そうにそっぽを向く。キーシャは辺りをきょろきょろと見回していた。「この屋敷にあるんですかね?」 そう、三人はある屋敷のど真ん前に転移してきたのだ。ここに所有者がいるのだろう。 連れ立って玄関に立つと、南野がドアノックをする。すぐにメイドらしき女性が出迎えてくれて、要件を聞かれた。「ここに『嘆きのミセリコルデ』があると聞いたんですが……少し、所有者の方とお話できませんか?」 営業スキルを発動させた南野が腰も低く尋ねると、メイドは困ったような顔をして、奥へと引っ込んでいった。 ほどなくして戻ってくると、『ご主人様が話を聞こうとおっしゃられております』と中へ通される。「やったじゃん、今回は楽勝っぽいね」 メルランスが嬉しそうに言うが、
「おはようございまーす!」 元気よく酒場の扉が開いたと思ったら、朝から騒がしい声が響いた。またひとつ増えた賑やかさに苦笑しながら南野が返す。「おはようございます、キーシャさん。まだ六時ですよ」「早寝早起きは得意なんです!」 南野もついさっき起きて雑用を始めたばかりだった。モップを片手に突っ立っていると、キーシャはにこにことカウンター席に座る。 店主はまだ寝ているのでなにか出すこともできない。仕方なくモップで床をこすっていると、キーシャから声がかけられた。なんだかとても目をきらめかせている。「南野さんって、異世界から来たんですよね。異世界ってどんなところですか?」「どんなところ、って……」 そういえば今まで聞かれたことがなかった。『緑の魔女』は知っているようだったし、メルランスは興味がなさそうだったので。 しかし、改めて聞かれると返答に困る。南野は、うーん、とうなってから、「魔法の代わりに科学が発達した世界、ですかね……空を突くような建物や、一瞬で世界中の人とつながれる板や、馬車よりも頑丈で速く走れる乗り物があります」「すごい!」 キーシャは目をきらきらさせて南野の話に聞き入った。学生ゆえに探求心旺盛らしく、話す方は悪い気はしない。 それからしばらく、南野は雑用の合間に異世界の話をした。そのたびにキーシャは驚き、感嘆した。もっともっととせがみ、なんだか寝物語をせがまれている親の気分になる。「俺からも聞きたいんですが」「はい、なんでしょう?」 芋の皮むきをしながら話していると、店主が起きだしてきて仕込みの手伝いを任される。昼前だ、そろそろメルランスも来る頃だろう。 南野はキーシャに疑問をぶつけた。「教会学校の学生、って言ってましたよね? 教会って、この世界にはなにか宗教があるんですか? ほら、呪文を唱えるときにも『創生神ファルマント』なんて言ってるじゃないですか」「ああ、教会についてですか」 うんうん、うなずき、キーシャは説明を始める。「この世界は、創生神ファルマントによって作られたとされているんです。ファルマントは原初であり、全知全能である。世界を覆うほどの大きさの象の上に魚を泳がせ、その魚のひとつひとつに世界を作り、魚の上に蛇を置いて大地としました。そして海という生命のスープからあらゆる動物を作り、最後に人間を作った」
「さ、まずはこのスライムをすりつぶします!」 むんずとスライムをつかんだキーシャはすりこ木とすり鉢を用意してスライムをすりつぶし始めた。時折ぶちぶちと何かがちぎれる音がしたり、ぐじゅるぐじゅるとうごめく音がするが気にしないでおこう。 メルランスが煮溶かしておいた寒天らしきものにすりおろしたスライムを投入すると、青色の粘液がこぽりこぽりと鍋で煮えた。まるで魔女の釜だ。 しばらく煮てからバットに流し込み、氷室へと運ぶ。小一時間待って、ようやく完成だ。「できましたー!」 じゃじゃーん!とバットを差し出すキーシャだったが、まだゼリーがうごめいているような気がする。スライムが死んでいないということはこれはこれでいいことなのだろうか。「スライム自体に毒性はありませんから、食べても問題はないですよ!」 そこはさすがに魔法学生、モンスターにも詳しい。切り分けて、半分をもとの瓶に戻しておく。「あの、賞味期限とかは……?」「スライムが生きてる限り大丈夫です!」 冷や汗を流す南野の問いかけに、キーシャは快活に答えた。 残り半分のスライムゼリーを前にしていると、彼女は屈託なくそれを差し出してくる。「せっかくですし、食べてみませんか?」「え? 俺が?」「ええ、さっきも聞きましたけど、異世界のゼリーとなにが違うのか感想を聞きたいです」 氷室で冷やしている間に南野の素性はあらかた話し終えた。作り手としてはわからないでもない心理だ。「じゃあ、ちょっとだけ……」 スライムゼリーのひとかけらをつまみ、口に運ぶ。 次のリアクションまでは秒だった。「おrrrrrrrrrrr」 南野は盛大に吐いた。吐き散らした。胃の中のものまですべて床に嘔吐する。「大丈夫ですか!?」「…………まっず…………」 蚊の鳴くような声でつぶやくと、キーシャは首をひねる。「おっかしいなあ。ちゃんと作ったのに……あ、そうだ、お砂糖とか入れなかったからですかね?」「……そういう、もんだいじゃ、ないとおもいます……」 えぐみと酸味と苦みと生臭さが絶妙なハーモニーを奏でて、これまで食べたものの中で一番のマズいものとなった。ここまでマズいものは食べたことがない。「メルランスさんもいかがですか?」「あ、あたしお腹減ってないから……」 微妙に目をそらすメルランス。話題を変えるようにしてキ







