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第2話「消えた机の主」

Author: ちばぢぃ
last update Petsa ng paglalathala: 2026-03-12 09:30:39

 入学式の翌日。朝のホームルームが始まる前、1年2組の教室はいつもより静かだった。

 窓から差し込む朝日が、机の上に散らばった桜の花びらを照らしている。昨日の風で、校庭の桜が一気に散ったらしい。

 シュウは自分の席に座り、事件ノートを開いていた。昨日のタクミとの会話が、まだ頭に残っている。

シュウ(二人体制……か。まずは情報を集めないと)

 隣の席は空席だった。名札が貼ってあるのに、鞄も教科書もない。

 担任の佐藤先生が入ってきて、点呼を始めた。

佐藤先生「えー、みんな揃ったかな。……あれ? 佐々木くんは?」

 クラスがざわつく。誰も返事しない。

生徒A「昨日、入学式の後で急に体調悪くなったって言ってましたよ」

佐藤先生「そうか。じゃあ今日は欠席ね。連絡来てないけど……」

 シュウは眉を寄せた。佐々木くん――昨日、教室で一番後ろの席に座っていた男子。入学式の時、緊張した顔でシュウの方をちらちら見ていたのを覚えている。

 ホームルームが終わると、タクミが廊下から顔を出した。バスケ部の朝練が終わったらしい。

タクミ「よっ、シュウ。どうだ、昨日の続き」

シュウ「佐々木くんが……いない」

タクミ「は? 誰だっけ」

シュウ「後ろの席の。名札だけ残ってる」

 二人は教室に戻り、佐々木くんの机に近づいた。

 机の上は空っぽ。引き出しを開けると、中も何もない。教科書もノートも筆箱も、すべて消えていた。

タクミ「マジか……転校したとか?」

シュウ「いや、転校なら名札も剥がすはずだ。先生も知らないみたいだし」

 シュウは机の表面を指でなぞった。埃一つない。昨日まで使われていたはずなのに、新品のようにきれいだ。

シュウ「誰かが……掃除した?」

タクミ「でも、なんでそんなことするんだよ。気持ち悪いな」

 その時、教室のスピーカーからチャイムが鳴った。1限目の開始を知らせる音。

 でも、チャイムが終わった後も、何か小さな音が残っていた。

 ……かすかな、泣き声。

 昨日と同じ、女の子の声。

泣き声「……ここに……いたのに……」

 クラス中が凍りついた。みんな顔を見合わせる。

生徒B「また……聞こえた?」

生徒C「イヤホンからじゃね? 誰かのイタズラ」

 シュウは立ち上がった。声の方向を探る。

シュウ「違う。スピーカーじゃない。……机の下から」

 佐々木くんの机の下を覗き込む。そこに、小さなBluetoothスピーカーが貼り付けられていた。電池式で、赤いランプが点滅している。

シュウ「これだ」

 シュウはスピーカーを剥がし、電源を切った。泣き声がぴたりと止まる。

タクミ「また仕掛けかよ……誰がこんなこと」

シュウ「昨日と同じ手口。『管理人』って声の奴だと思う」

 放課後。二人は職員室へ向かった。佐藤先生に事情を話す。

佐藤先生「佐々木くん? ああ、保護者から連絡があって……急な転居で転校になったって。今日から別の学校だって」

シュウ「転校届は?」

佐藤先生「まだ正式には来てないけど……保護者の方が電話で」

タクミ「先生、それ本当ですか? 昨日まで普通にいたのに、急すぎません?」

佐藤先生「まあ、家庭の事情だからね……。机の中身は、保護者の方が後で取りに来るって」

 シュウとタクミは顔を見合わせた。明らかに不自然だ。

 職員室を出て、校舎の裏へ移動する。桜の木の下で立ち止まる。

シュウ「転校は嘘だ。机の中身を全部持ち出したのは、誰か別の人」

タクミ「目的は?」

シュウ「俺たちを……試してるんだ。星見キッズがまだ動けるか、って」

 その時、スマホが鳴った。知らない番号からの着信。

 シュウは出る。

シュウ「もしもし」

管理人の声「よく気づいたね、名探偵。佐々木くんは……今もこの学校にいるよ。ただ、『見えなくなった』だけ」

 声は低く、笑っている。

管理人の声「第2の謎。『消えた生徒は、どこにいる?』 ヒントは、新校舎の3階。端の教室だ」

 通話が切れた。

タクミ「今のは……!」

シュウ「行くぞ、タクミ。新校舎だ」

 二人は走り出した。夕陽が校舎を赤く染め、桜の花びらが後を追うように舞う。

 新校舎3階、端の教室。鍵はかかっていない。

 中に入ると、埃っぽい空気。まだ使われていない空き教室だ。

 黒板に、チョークで大きく書かれていた。

『ここにいたよ』

 そして、床に落ちているもの――佐々木くんの名札。

 シュウはそれを拾い上げた。裏に、小さな文字。

『次は、君の番』

 教室の窓から、外の桜が見える。風が吹き、花びらが教室の中に舞い込んだ。

 どこからか、また泣き声が聞こえ始めた。

 今度は、すぐ近くで。

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