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糸 04

Penulis: 市瀬雪
last update Tanggal publikasi: 2025-09-25 06:00:39

 俺は急くように扉を開き、部屋へと踏み込んだ。

 視線を巡らせると、河原はそこから数歩離れた近くのロッカーへと肩で縋るようにして立っていた。

「……っ」

 俺は思わず舌打ちした。

 河原の顔は蒼白となっていて、胸の前でタオルごと片手を掴んだまま俺を見ようともしない。漏らした舌打ちは自分自身に向けたものだったが、そのかすかな音にぴくりと河原が肩を震わせたのが分かった。

 怪我だけが原因と言うには、明らかに様子がおかしく見えた。

 きっとずっと思い詰めていたのだ。

 思いがけない見城との再会に、そしてその時告げられただろう言葉の意味に。これほどまでに河原を揺さぶる見城という存在に、今更ながら酷く苛立った。

 憔悴しきったような河原との距離を詰め、俺は河原の上腕を掴んだ。

「――来いよ。手当てしてやるから」

「っ……」

 河原の漏らした声に多少力は緩めたものの、ろくに動けそうにないその身体を半ば引き摺るようにしてソファの前まで連れて行く。

 よ
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  • 君にだけは言えない言葉   七夕=?(Side:暮科静)

    「あ、お帰り」 部屋に入ると、キッチンでグラスや皿の用意をしていた河原が、いつも通りの柔らかい笑みで迎えてくれる。「ただいま」 釣られるように微かに笑って返し、何気なくリビングに目を遣った俺は、その瞬間、絶句した。  そこにはいつもの自室と全く違う景色が広がっていたからだ。 運良く翌日の休みが合わせられた7月7日。  その日は言うまでもなく七夕であり、そして俺の誕生日だった。 早番で出ていた俺が帰宅すると、リビングのローテーブルはすでに様々な料理でいっぱいになっていた。しかもその種類と量。さすがにちょっとやりすぎでは……。  思いながらも口にできなかったのは、つっこむべきところが他にあったから。「河原……これって」 辛うじて声になったのはそれだけだ。  半ば呆然としたまま室内を見渡すと、部屋のあちこちを埋め尽くし、頭上でもゆらゆらと漂っていたそのいくつかが、空調に流され俺の方へとやってくる。俺は無言でそれを避けた。 テレビや雑誌でしか見たことのなかったそれは、ハートや星形の風船だった。マットな質感のパステルカラー。大小様々な大量のそれが、俺の部屋をこれでもかと言うくらいに彩っていた。 そして真っ白だったはずの壁面に目を遣ると、ひらひらしたリボンのようなものと一緒に、これまた煌びやかなアルファベットの風船でこう書かれていた。『Happy Birthday Sei?』「木崎だな」 確信を持って呟くと、脱衣所の方からガタタッと不自然な音がした。  ***  クラッカーから飛び出た紐やラメを頭に浴びたまま、俺はいわゆる誕生日席――そう広くもないローテーブルの誕生日席なんて狭いだけだが――でビールを飲んでいる。「かんぱ~い!」 珍しく缶のままでなく、グラスに注がれたそれに勝手に(そして執拗に)乾杯を強いてくる木崎へと、ついた溜息はもはや何度目か分からない。「ちょっとー。暮科、暗いよ~?」 「つーかなんでお前がいるんだよ」 河原がビールのお代わりをキッチンに取りに行っている隙に、俺は被せるようにして言った。「え……そんなの」 「恋人がいないからっていちいちうちにくるな」 「自分の誕生日は特に?」 「誰もそんなことは言ってねぇ」 予想は当

  • 君にだけは言えない言葉   コントラスト 04

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  • 君にだけは言えない言葉   コントラスト 03

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     見城のことを――気に入らないのは確かだが――そこまで害のあるやつだと思っているわけではないのだ。むしろ一般的に見れば、あいつは外見だけでなく、性格、振る舞いからしても人好きする性質《たち》だと思う。だからこそ、河原の言葉を否定することもできなかった。 でも、そうかといってはいそうですかと簡単には受け入れられない。  見城と俺は昔身体の関係があって――そのくせちゃんと付き合ってたかって言うと微妙なとこで。それなのに見城の方は、俺との連絡――と縁――を絶ってからもずっと俺とよりを戻したいとか思ってた、なんてマジわけわかんねぇし。 まぁ見城と再会した時には俺はすでに河原に惹かれて

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  • 君にだけは言えない言葉   桜と君とそして本音 02

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    「あ、ちょっとコーヒーでも一緒に飲もうぜ。奢ってやるから」 クリスマスを過ぎたある公休日、俺は濃いグレーのマフラーに口元まで埋めながら、昼下がりの街中を歩いていた。  そこに突然、声をかけてきたのは甲斐だった。 しかもその隣には例の“塔子さん”の姿もある。  何で俺が……と心底思ったが、正直少しだけ興味も湧いた。 ……まぁ、適当に切り上げりゃいいか。 思い直した俺は、ひとまずその誘いに乗った。  *** 「……」  この女が河原

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