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7話

مؤلف: 佐伯れもん
last update تاريخ النشر: 2026-04-21 11:07:41

訝しむように自分を見つめる弥一に、咲希は、

「お兄、知らないほうが幸せなことってあると思うよ?口を滑らせちゃったことは本当に悪いと思ってるけど、真実を知ったら、お兄のガラス細工のような繊細なハートじゃきっと耐えられない。粉々に砕けちゃう。」

咲希のその鼻にかかる演技に呆気に取られていた弥一だったが、何か言おうと口を開きかけたところ咲希はそれを遮って、

「けど、お兄がそこまで言うなら私も心を鬼にするしかないわね!」

そう言って、その肩に下げていた可愛いらしいショルダーバッグをゴソゴソと漁って携帯電話を取り出した。

「何も言ってないんですけど。」

そう言う弥一を完全に無視して、咲希は何やら携帯電話を操作すると、ふいに、「送ったよ!」

そう言って弥一を見た。

すぐさま弥一の胸ポケット辺りからメッセージを受信した際の、ポコンという音がする。

弥一は咲希を一瞥した後、ジャケットの内側から携帯電話を取り出すと、画面には咲希からメッセージを受信したとの表示があった。

弥一はそのままチャットを開き、咲希からのメッセージを確認する。と、そこにはURLのみがいくつか載せられていた。

「何だこれ?」と言って尋ねる弥一に、咲希は「開けばわかるよ。」と返す。

それから、咲希はその細くくびれた腰に片手を当て、もう片方の手の人差し指を弥一に突きつけると、

「ただし、開くときは余程の覚悟を持ってから開くこと!わかった?」

と、その言い方はまるで、親が子供に怖い話を聞かせるときのような、わざと脅かすかのようなものだった。

弥一は送られてきたURLを見つめ、携帯電話を持つ方の親指でそれをタップしようとした。が、ふとその指を空中で止めると、そのまま携帯電話の画面を消して、ジャケットの内側にしまい込んだ。

"意気地なし"

そう咲希が思ったことに勘づいたのか、弥一は一つ咳払いをすると、

「お前の策に乗るようで癪に障る。」そう言ってそっぽを向いた。

咲希はどうせ弥一には見る勇気はないだろうとわかっていたので、「ああ、そうですか。まあ、そんなことはもういいんだけど、そろそろどうするか決めてくれる?いい加減家に帰るのか、あるいは反抗期のクソガキよろしくみっともない抵抗を続けるのか?どっち?」

これまで二人のやり取りを大人しく見守っていた三雲は、"妹さん、口悪いな。けど、そこもいい!"と、咲希にに称賛の目を向けた。

それから"御子柴はどっちの選択を取るんだろう"

そう思い、隣の弥一に目をやった。

弥一はそっぽを向いたまましばらく黙っていたが、最後には観念したように、「帰ればいいんだろ。」

その言葉を聞いた咲希は、その艶やかな唇をにんまりさせると、

「ん〜、それでこそお兄だわ♪最後にはちゃんとわかってくれるって信じてた!じゃあ、これから帰るってかすみさんに連絡いれとくね!」

そう言って、すぐさま携帯電話を取り出すと電話をかけ始めた。

弥一はもう、煮るなり焼くなり好きにしてくれとでもいうように、ソファに力なく座り込む。

三雲は掛ける言葉が見当たらず、代わりに弥一の肩を二度ほどポンポンと叩いた。

二人のそばでは、先程かけた電話が相手に繋がったらしい咲希が、手柄を上司に報告するような嬉しそうな声で、

「あ、かすみさん?咲希です、こんばんわ〜!ごめんね、夜遅くに。実はね、うちのお兄が今日から家に帰るって言ってるの!あ、ううん!違う違う、無理矢理とかじゃなくて、本人が自分から帰るって宣言したの!」

聞いていた弥一は非難の目を咲希に向ける。

誰がどう見ても無理矢理だったろう、と。

咲希はそれに気づかないふりをして、「うんうん、それでね、今から私とお兄とお兄の同僚の三雲さんて方とそっちに行くから!うんうん、ごめんね急に。うん、わかった、ありがとう。気をつけて帰ります。はーい、じゃあ後でね!え、あ、うん。ちょっと待ってね?」

そう言って咲希は、電話を中断して二人を振り返ると、

「二人ってお腹空いてる?空いてるなら何か食べたいものありますか、ってかすみさんが!」

弥一はだるそうに「ねーよ。」と答えたが、昼から何も食べていなかった食べ盛りの三雲は、

「空いてます!ペコペコです!よろしければ何かガッツリしたものをお願いいたします!」と。答えた。

咲希はそんな三雲に微笑むと、弥一と三雲が言ったことをそっくりそのまま伝え、自身も何か軽めなものをとお願いし、電話を切った。

「てことで、さっさと帰るわよ!ほら、立ってお兄!」

そう言って、弥一の腕を取ってぐいぐいと引っ張る。

弥一は心底不快そうに眉根を寄せると、「やめろよ、皺になるだろ!オーダーメイドなんだから高いんだぞ!」と、咲希を叱りつけた。

しかし咲希はそんなこと意に介さないらしく、無理矢理弥一を立ち上がらせる。

そうしてから、またしてもゴソゴソとショルダーバッグを漁ると、「三雲さん、お願い!」

と言って、何かをポイッと三雲に投げて寄こした。

三雲はそれを反射的にキャッチすると、何を掴んだのだろうと手の中のものを見る。

と、それは車のキーだった。

「私はここの支払いを済ませてくるので、面倒だとは思いますが、そのお荷物、車の後ろに詰め込んどいてもらえます?私の車は店を出てすぐの駐車場の一番手前に停めてありますので。」

お荷物とは弥一のことであるが、そんな言われ方をされても、弥一にはもう怒る気力すらなかった。

黙ってうなだれたま、その場に立ち尽くしている。

三雲は咲希に頼られたことを誇らしく思ったのか、「はいっ!」と元気良く答え、さっそく弥一の脇の下に自身の肩を入れ組むようにすると、「さ、行こう!」

そう言って歩き出そうとする。

弥一は瞬時に自身の肩を三雲から抜くと、

「止めてくれよ。自分で歩ける。」

そう言って、少々覚束ないながらも一人で歩き出した。

三雲は急いで自分と弥一の荷物を取り上げると、「気をつけろよ。」と言って、その後に続く。

咲希はやれやれとでも言うように、ふう、と息を吐いた後、忘れ物がないかさっと部屋を見回してから、「よしっ。」と言って、自身も二人の後に続いたのだった。

店の出入り口から外へと出た弥一と三雲は、言われた通り駐車場の一番手前に停めてある車へと向かって行った。

そこには今どき珍しい、黒塗りのジャガーが停められていた。

三雲はしばらくその車のカッコ良さに見惚れていたが、弥一の「三雲、早く開けてくれ。」の一言で我に返ると 、急いで車の鍵を開けた。

そして、弥一が乗れるよう後部座席のドアを開けてやると、弥一は「…ありがとう。」と言って乗り込む。

こんな時でも礼儀正しい弥一に三雲は笑ってしまうと、自身も後部座席に乗ろうと頭を下げたその時だった。

会計を済ませた咲希が足早にこっちに向かって来ながら、三雲に向かって、

「三雲さんは嫌でなければ前に乗ってくれません?今から行く海老原市までは少し距離があるから、その間、私の話し相手になって欲しいんですけど、ダメですか?」

弥一には及ばないにしても、三雲も割りかし背が高いほうなのだが、十センチをゆうに超えるピンヒールを履いているからか、咲希とはそう背丈が変わらなかった。

なので、そんな風にそのくりくりっとした目で真っ直ぐ見つめられると、それに耐えられないのか、心臓がありえないほどの勢いでドクドクドクと脈を打つ。

だから、"ダメなわけはない!ないのだが…こんなにドキドキさせられては身がもたないかもー"

そう思った三雲は、「気持ちとしてはものすごく前に乗りたいんですけど、御子柴くんのことが心配なので、僕も後ろの席に乗ります。」

それを聞いた咲希はぷっ、と吹き出すと、

「三雲さんって優しい方なんですね。じゃあ、残念ではあるけど、引き続き兄の介抱お願いしますね?」

そう言って笑い掛ける。

三雲はその笑顔に堪らずキュンとさせられると、「任せてください!」と、前のめりに答えたのだった。

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