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6話

last update 게시일: 2026-04-21 11:06:52

そう言うと、女の子はその長い足で一直線に弥一たちに向かって歩いてくると、ソファにうなだれて座っている弥一を前にし、その腕を組んで仁王立ちした。

彼女の服装は上下紺色のセットアップで、上は胸元が大胆に開いた白いTシャツにジャケットを羽織り、下はショートパンツを履いていた。

そのショートパンツから覗く、長くて真っ直ぐな美脚を前に、三雲はごくりと唾を飲み込んだ。

そして、そのまま視線を上げて女の子を覗き見る。

そこには腰近くまで伸びた綺麗な栗色の髪に、透き通った肌の整った顔立ちがあった。

その小さな枠の中に、長いまつ毛のぱっちりした目と程よい高さで形の良い鼻、ぷっくりした色艶のいい唇が配置良く納められている。

まさに完璧なまでの美女だった。

そんな三雲お墨付きの美女は、その形の良い眉毛を軽く寄せると、未だうなだれたままの弥一を見下ろしている。

「ちょっと、聞こえてるんでしょ?何とか言いなさいよ!てか、こっち見なさいよ!」

そう言って、美女はその足に履いている高いピンヒールの靴の先で、弥一の革靴の先を軽く小突いた。

小突かれた弥一は、はあ、と短くため息を漏らすと、面倒くさそうに顔上げる。そうして、

「呼んだ覚えないんだけど?」

そのあまりにかったるそう物言いに、美女はさらに怒りの炎を燃やすと、

「こっちだって帰国して早々、こんなダッサい薄情人間の顔なんて拝みたくなかったわよ!」

「じゃあ帰ればいいだろ。」

「おばあさまからの言いつけじゃなきゃ、あたしだって来なかったわよ!」

その言葉に弥一はびくりと身体を震わせた。

「おばあさま?咲希、お前…おばあさまに頼まれてここに来たのか?」

咲希(さき)と呼ばれたその美女は、片方の口の端をくっ、と上げ、意地悪そうな表情になると、

「そうですけど?どうせお兄のことだから、結婚したタイミングでおばあさまが海外に行くってなったことで油断してたんでしょうけど、あたしが知ってるぐらいだから、お兄の行動なんて全ておばあさまに筒抜けよ?」

そう告げられた弥一の顔はみるみる青ざめていった。

"くそ、何でだ?早苗さんにはおばあさまに黙ってるよう念を押しておいた。てことは、あの女が告げ口したのか?"

「言っとくけど早苗さんがおばあさまに言ったわけでもなければ、かすみさんが告げ口したわけでもないからね!」

弥一の考えを見抜いたかのように、咲希はそう言って弥一に釘を刺す。

「かすみさん、って…お前あのおばさんと面識あるのか?」

咲希はその問いには答えずに、

「お兄はおばあさまの先見の目を侮りすぎなのよ。おばあさまには、あの日お兄が形式上折れたように見せただけで、実際はこの結婚を蔑ろにすることくらいはじめからお見通しだったってわけ。理解できた?」

弥一はうんざりしたように咲希から目を逸らせた。

と、同時に、ある考えが頭をよぎる。

今日、彼の初恋はあっさりと終わりを迎えた。

それは仕事の就業間際、突如として起こった。

面と向かって言われたわけではなく、たった一つのメッセージ、"私もう耐えられないの。どうせ一緒になれないのならいっそ、あなたの全てから離れることに決めたわ。"

そのメッセージを見た直後、弥一は掛け慣れたその番号に電話をしたが、返ってきたのは無機質な機械音の、

「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」だった。

それでも何かの間違いではと、もう一度同じ番号に掛け直したが、返ってきたのはさっきと一言一句変わらないものだった。

"終わ、った?"

その不意に突きつけられた現実に、直後の弥一は打ちのめされていた。

だから、そんなに親しいわけでもない三雲を誘い、慣れない酒を煽ってまで気を紛らわせようとしたくらいだったのだが、自分が彼女に振られた直後、八重子の頼みだと言って咲希が現れた。

まるで祖母には、今日自分が誰かの手を借りなければならない状態になることが分かっていたかのような、測ったかのようなタイミングの良さであった。

だから人様に迷惑を掛けずに済むよう、事前に妹に報せておいて、こうして送りつけて来たのではないか?

つまり、八重子が彼女に圧をかけるなりして、自分に諦めさせるよう仕向けたのではないか?

その答えに至った弥一は、またしても心の中で"あのくそばばあ!"と罵ると、奥歯をギリギリと噛み締めた。

咲希はそんな弥一を一瞥し、

「いい歳して、いつまで現実から目を背ける気?今はまだホテルに泊まれてるからいいかもしれないけど、おばあさまが本気になったら、御子柴系列のホテルだけじゃなく、日本中でお兄が泊まれるホテルなんてなくなるんだからね?そうなった時は一体、毎日どこで夜を切り抜けるおつもりなんですかー?」

八重子の汚いやり口に苛立っている様子の弥一は、「好きにすればいいだろ?」と、投げやりな口調で返す。

そんな弥一に三雲は近くまで寄っていくと、小声で、

「おい、俺を置いてけぼりにするな。まさかと思うがこの美女、君の妹さんなのか?御子柴家って美男美女しか生まれないのか?」

と、言った。

彼の頭にはもう、この美女は一体誰なんだろうということしかなく、弥一の不機嫌さなど微塵も気にならなかった。

尋ねられた弥一は、眉間にしわを寄せると三雲とは反対の方へ顔を背け言った。

「うるさい。」

そう返された三雲は、弥一が酔っているのをいいことに、わざと拗ねたような態度になると、

「うるさいってことないだろ?飲みに誘っておきながら、自分だけ飲んで酔っ払って、俺はまだ一口も飲む食いしてないってのにお前の介抱してやったんだぞ?それなのに、うるさいだなんて…ひどいじゃないか。すごく傷付いた!」と、弥一の良心に訴えるように言った。

案の定、弥一は罰が悪そうな顔になると、次いでぼそりと、「ーつ下の妹だ。」と、言った。

妹!!

それを聞いた三雲はすぐさまちらりとそばに立っている咲希に視線を送った。

その視線に気づいた咲希は女神のような美しい笑顔を浮かべると、

「はじめまして、御子柴咲希と言います。クズなバカ兄が大変お世話になっております。」と言って、三雲に向かって軽く会釈をした。

三雲はその笑顔に、瞬時に顔を赤らめると、緊張のあまり咲希と目を合わせられず、目線を外したまま、

「いやいやいや、そんなお世話というほどのことは何も。あ、っと、僕は三雲って言います。三雲諭です。よろしくお願いします。」

と、しどろもどろに返す。

そんな三雲に咲希は、"照れちゃって可愛い♪"と、くすりと笑う。だが次の瞬間には厳しい目になり、その目を弥一に向けると、

「で、どうするの?近々終わりを迎えるホテル生活を今の内に満喫するのか、それともこれからは大人しく自分の家に帰るのか。どちらを選ばれます?」

まるで八重子の分身にでもなったかのように口うるさい咲希を前に、ついに弥一も堪忍袋の緒が切れた。

「どいつもこいつも御子柴家の女ときたら、なんでこうも皆ピーチクパーチクやかましいんだ?さてはお前ら、揃いも揃って前世は九官鳥かなんかだったんだろ?ホント、うるさいったらない。人の事情にとやかく口出してきて、暇なのか?余計なお世話なんだよ!俺のことはもうほっといてくれっ!」

そう叫ぶ弥一を、咲希は冷たい目で見下ろしながら、

「ほうっておくなんて無理よ。」

「なんでだよ?俺はもう22歳だぞ?社会人にだってなった!なのに何でお前らの監視下に置かれてないといけないんだよ!」

「お兄には女の見る目がないからよ!」

咲希は一切の躊躇なくそう言って弥一をバッサリと切った。

弥一は以前に八重子に言われたその言葉に、一瞬にして意気消沈すると、

「お前たちは彼女のことをよく知らないだろう?彼女は俺の運命の人だ。出会うべくして出会ったんだよ、俺たちは。彼女は俺をとても愛してくれたし、俺も彼女のことを愛してる。なぜこんな俺たちを引き離そうとするんだ?」

悲痛な面持ちでそう呟く弥一を前にしながら、咲希は場違いにも吹き出した。

信じられない、という目で彼は妹を見つめる。

「お前に人の心ってものはないのかよっ?」

咲希は必死に笑いを堪えながら、「いや、だって、お兄があまりにも可笑しいこと言うから。あんな性悪女が運命の相手だなんて!そうなったら、御子柴家の栄華もいよいよ終わるわね。」

そう言って心底可笑しそうに、お腹を抱えて笑った。

「咲希、お前!よく知りもしない人間を何でそんな風に言えるんだ?失礼にもほどがあるぞ!」

弥一の怒号に、咲希はその笑いを引っ込めると、

「ふーん、じゃあ。お兄の知ってる彼女ってどんな人なの?」

と、右手の人差し指に自身の髪の毛の先をくるくると巻きつけながら、さも生意気な態度で問いかける。

弥一はその態度にムッとしつつも、そこは深呼吸を一つ吐くことで心を落ち着かせてから、

「俺が出会った女性の中で、誰よりも愛らしくて優しい人だ。彼女ほど魅力的女性は他にいない。」と、真剣な表情でそう言い切った。

それを聞いた咲希は、顎に手を当てふむふむと頷くと、

「へ〜。そう、なるほどね。だからなのかしら?」

「なにがだよ?」

「いや?ただ…それほど魅力的な女性だからこそ、彼女はあちこちにその魅力を振りまいては男を食い漁ってるのかな、って。」

「は?」

「ああ、ごめんごめんごめん。なんでもない、失言だったわ。忘れて。」

咲希はわざと慌てふためくような素振りをして見せた。

もちろん弥一が見逃すはずもなく、

「一体、誰の話をしてるんだ?男を食い漁る?」

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