공유

5話

last update 게시일: 2026-04-15 22:07:18

三雲は、信じられないといった様子で弥一を見つめていた。

ウォッカとはいえ、弥一が口にしたのはほんの小さなグラスにたったの二杯である。

そんな量で泥酔って…

そもそも、そんなに酒が弱いならウォッカなんて頼むなよ!

しかもこっちはまだ一口も飲んでもいなければ食べてもいないってのに。独りよがりが過ぎるだろ!

と、一通り頭の中で喚き散らかしてから、はあ、とくたびれたように息を吐き出した。そして、仕方なしに弥一の介抱に取り掛かる。

彼は弥一の肩に手を掛けると、そのまま優しく揺さぶり起こそうとした。

弥一は嫌そうに「うーん。」と低く呻くだけで、目を開けようとさえしない。

三雲は苛立つ感情を何とか抑え、優しく声を掛ける。

「御子柴さん?起きてください、御子柴さん?家まで送ってあげますから。ね?」

すると、弥一は億劫そうにうっすら片目を開けた。

チャンス!と、思った三雲はそこに向かってもう一度、「御子柴さん?起きました?ほら、僕が家まで送り届けますから、ね?家の住所教えてください。」

しかし、弥一から帰ってきた言葉は、「俺は絶対に家にだけは帰らない!」だった。

面倒臭さが頂点に達していた三雲は敬語を使うことも忘れ、

「家に帰らない、って。じゃあお前はいつもどこに帰ってるんだよ!」

「…ホテル。」

「ホテル⁉︎お前、新婚だろ?何でホテルなんか…」

そう言って、ハッとした。今日の弥一はどこか元気がなかった上に、何かを忘れたいかのごとく酒を煽っていた。そしてそんな彼は、どうしても家に帰りたくないと言う。

さてはこいつ、奥さんと喧嘩したな。

その答えに行き着いた三雲は、急に弥一に親近感を覚えた。

なんだかんだ御曹司といっても、彼らだって人並みに自身の奥さんと揉めることもあれば、こうしてやけ酒を飲むことで気を紛らわせようともする。なんだ、彼らも結局は同じ人間ってことか、と。

そんな風に感じた三雲は、声色を変え、優しく諭すよう弥一に話しかける。

「御子柴。気持ちはわかるけど、帰る家があるってすごくありがたいことなんだぞ?何があったのかはわからないけど、ちゃんと相手と向き合うべきじゃないか。女の機嫌を取るのって俺たち男にとってはものすごい難題だけど、向き合った分の見返りは必ずあると思うぞ。」

三雲の言葉に弥一はしばらく黙っていたが、おもむろに口を開くと、

「向き合ったよ。離れてからの半年間ずーっと向き合い続けたよ。けど…彼女がもう耐えられないって。俺と離れてるこの状況に耐えられないんだって。だからもう、完全に終わりにしたいんだって…」

聞いていた三雲は掛ける言葉が見つからなかった。

と、いうのも、何の話かが理解できなかったからだ。

御子柴と離れてる状況?それが半年間?え、しかもなんか離婚する流れ?

いやいや、待て待て待て。

帰ればいくらでも会えるじゃないか。なのにさっきは家には帰りたくないって言ってたよな…一体どういう意味だ?

三雲の思考はまだ追いついていないのに、弥一の話は進んで行く。

「俺と一緒になるために彼女は海外へまで行ったのに…俺があまりに頼りない男だから。彼女の不安や悲しみを埋めてあげられなかったから。」

話しの意味はわからないが、そう言ってひどく落ち込んでいる弥一のあまりの悲壮感に、三雲はその肩を軽く叩いててなぐさめる。

すると、急に弥一の怒りスイッチが入ったのか、彼は声を荒げると、

「それもこれもおばあさまのせいだっ!あの権力ばばあ…あの人さえ反対しなければ、今頃俺は好きな人と結ばれて毎日幸せに暮らせてたのに。反対するだけならまだしも、あんなおばさん連れてきて結婚しろだとか、嫌がらせが過ぎる!孫がそんなに憎いのかよっ!」

そう言って、握った拳でソファを殴りつける。

三雲はビクッと身体を震わせると、八つ当たりされてはたまらないと思い弥一から少し距離を取った。そして、そんな三雲の頭の中はただただ"?"と好奇心でいっぱいだった。

ついには聞きたい衝動を抑えきれなくなり弥一に尋ねる。

「つまり君は、会長の言いつけで好きでもない人と結婚したっていうのか?」

「ああ、そうだよ。」と、弥一はしかめっ面を浮かべ、ぶっきらぼうに答える。それから急にその顔をフッと緩めると、

「まあ、結婚してから一度も家に帰ってやってないけどな。ざまあみろってんだ。」

「一度もか⁉︎」

「一度も、だよ。」そう言って、弥一は得意気に笑う。三雲は呆れたように頭を振った。

彼の話を聞く限り、おそらくそうすることだけが、そんな状況に追い込んだ会長への精一杯の反抗だったのだろう。

これが世に言う政略結婚というものなのだろうか。

一般人として生きている三雲にとって好きな人と結婚するなんて、相手さえいれば容易いことで、そんな簡単なことも己の意思だけではままならない弥一の立場に同情心が芽生えた。

しかも弥一の言い方からするに、相手は弥一よりもかなり年上のおばさんらしい。

"どうせ代わりを用意するのなら、ぐうの音も出ないほどの美人にしてあげたら良かったんじゃないか?御子柴家の人脈を駆使すれば、そんなこといとも簡単だろうに。"

そう考え、だから先程、弥一は会長が自分のことを憎いのかと言って声を荒げていたのか、と納得したのだった。自分の好みにすら当てはまらない女性を充てがわれたのだから、そう感じるのも無理はないだろう。

納得するのと同時に、さらなる好奇心が三雲の中に湧き上がる。

一体全体、この美青年はどんな女を娶らせられたのだろう。

おばさんと呼ぶくらいだからかなりの年上か?とはいえ最近の女性の多くは、おばさんと呼ぶには綺麗だったり若く見える人が多い。

てことは、年はそう変わらないけど、見た目がすごく老けてる人なのだろうか。うーん、気になる。

こんな状況に不謹慎だとは思いつつも、好奇心に駆られた三雲は、「なあ、君の奥さんってどんな人なんだ?」

と、尋ねた。

弥一は目を閉じ、ソファにだらしなく寄りかかると、心底どうでもよさそうに、

「どんなもこんなもない。ただのおばさんだ。そうとしか言えない。」

「どんなおばさんなんだよ?ブスなのか?太ってるのか?」

弥一は苛立ったように、

「だからー」

と、言いかけ、ふと初めて彼女と会った日のことを思い出す。

彼女はあきらかに自分よりも年上だとわかる見た目だった。

しかし、弥一と八重子が言い争いがヒートアップしかけた時の二人を見て笑う彼女は、一瞬でその場の空気を晴れさせ、かつ和ませた。

あの瞬間の彼女の笑顔はよく覚えている。目を三日月にし、少し鼻に皺が寄るようなクシャッとした笑い方は何だかとても可愛ー

「いいわけがないっ!!」

と言って、急に立ち上がったものだから、隣に居た三雲は心底びっくりさせられたのだった。

「何だよ、いきなり!びっくりしただろうが!」

弥一は三雲を見ることもなく、すぐさま「うっ。」と言って頭を抑えると、ソファにドサっと座り込んだ。

「バカだなあ。酔ってるんだからそんな急に動いたらそりゃあ気持ち悪くもなるだろ。大丈夫か?」

三雲の言葉が耳に入らないのか、弥一は一人ぼそぼそ、「ありえない。あんなおばさんが可愛いとか。」と呟く。

三雲は弥一の口元に耳を近づける素振りを見せながら、

「え?何て?てか、もうそんなんどうでもいいや。で、どうすんの?家帰るの?帰んないなら今日もホテルにでも泊まんの?」

弥一は答えない。

なので、暇を持て余した三雲は一人で喋り続けた。

「天下の御子柴グループ様につまらないこと聞いて申し訳ありませんねえ。世界中でいくつものホテルを経営する御子柴グループの御曹子様が、日本で一夜過ごすのに困るわけがありませんもんねー?それで、今日はどちらに泊まられます?ホテルMIKOSHIBAですか?それとも帝都ホテル?ああ、ザ・MK in東京ってのもありですね?」

三雲は御子柴グループ関連のホテルをつらつらと挙げ連ねる。

しかし、それでも弥一が黙ったままなことなのにさすがに痺れを切らして口を開きかけた、その時だった。

勢いよく部屋のドアが開けられると、

「見つけた!もう逃げられないからね?半年も家に帰らない様抜かして、こんなところで飲めもしないお酒飲んで…今のお兄、最高にダサいんですけどっ!」

이 작품을 무료로 읽으실 수 있습니다
QR 코드를 스캔하여 앱을 다운로드하세요

최신 챕터

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   94話

    猿渡と七瀬が去った後、その場に残った弥一とかすみはゆっくりとお互いに顔を合わせると、 「何の話しをしてたのかわからなくなっちゃったね?」 そう話しかける弥一に、かすみも「ハハっ」と小さく笑う。 ただ、雰囲気を替えてくれたあの二人に、内心彼らも感謝していた。 弥一は軽く咳払いしてから、 「喫茶店行ってみたいな。今からでも連れてってくれる?」 かすみはすぐさま、「はい!」と答えてから、「少し、歩くんですけど。」 「全然いいよ!行こう?」 かすみは微笑むと、「こちらです。」 そう言って、弥一を思い出の喫茶店に案内しようと先を歩いて行ったわけだったがー 「やってないみたいだね。」 10分ほど歩いて例の喫茶店に辿り着いた二人だったが、喫茶店の扉には"CLOSED"と書かれた札が下げられていた。 「営業日とか全然考えていませんでした。すみません。」 そう謝るかすみに、 弥一は何てことないといったように、 「仕方なくない?それより、これからどうしようか。正直、店を替えようにもここら辺のお店は詳しくないんだよね。」 その問いに、何か良い案はないかとかすみが思い悩む。 弥一はそんなかすみにチラリと視線をやってから、 「あー。かすみさんさえ良ければさ、これから一緒に本家に行かない?」 「え⁉︎」と、間髪入れずにかすみは反応し、 「いや、あの、それはちょっと…ご家族様との時間に私がお邪魔するわけにはー」 「かすみさんが嫌ならもちろん止めるよ?けど、実は早苗さんもいま本家にいるみたいでさ。」 「早苗さんが?」 「うん、あと咲希も。おばあさまは海外に行ってていないけど、かすみさんが顔を出してくれたら二人も喜ぶと思うんだ。もちろん、うちの両親もね。」 海老原市の家を出てからもちょくちょく二人とはやり取りはしているが、二人の顔を見られると聞いてかすみの心が揺れる。 弥一はそこを逃さず、 「早苗さんが料理を作ってくれてるみたいでさ、俺も帰ってくると思ってたみたいだから、二人増えたくらいで困るってことはないと思うんだ。だから、どうかな。これから一緒に行ってみない?」 先程の父親との電話のやり取りから、これからかすみを連れて帰ろうものなら父親がはしゃぎ倒すであろうことは目に見えていた。しかし、今日

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   93話

    弥一とかすみが、悪い人ではないものの扱いに困る酔っ払い男への対応に手を焼いていると、 「何してるんですか、社長!」と、金髪ショートの若い女性が少し離れたところから慌てて走ってくる。 「先に車に行っててくださいと言ったじゃないですか!余計なことはせずに、言われたことを守ってくださいよ!」 そう言って、酔っ払い男をがっしりと捕まえると、 「うちの猿渡(さるわたり)がご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ありませんでした。」そう言って素早く頭を下げる。 弥一と かすみはお互いに目を合わせた後、 「いえ、特に迷惑というほどのことは何もありません。むしろ、公共の場であることを忘れて、言い合いをしていた僕らの方こそ悪かったと思ってます。なので、どうか頭をお上げください。」 そう話す弥一の後ろで、かすみも頷いて同じ意であることを示す。 「それが若さってもんだ!君らは何も気にすることはない!」 そう弥一たちを弁護する猿渡に、金髪女は、 「社長は黙っててください。」と猿渡を叱責してから、その顔を遠慮がちに上げる。 と、その目が弥一を捉えた瞬間、 「なっ。ミコ様⁉︎」 と、素っ頓狂な声を出す。 それから金髪女は再度深々と頭を下げると、 「この度は誠に申し訳ありませんでしたっ!えと、実は我々こういったものでしてー」 そう言ってカバンから名刺入れを取り出すと、そこから一枚名刺を取り出し、弥一の前に差し出した。 それを見た弥一が自身も名刺を出そうとするのを、金髪女は、「もう十二分に存じ上げておりますので!」と言って制したので、弥一は途中でその動きを止めると、代わりに女が差し出した名刺を受け取る。 弥一が名刺を受け取ると、金髪女はかすみにも名刺を差し出し、 かすみはお辞儀をしながらそれを受け取った。 弥一は受け取った名刺を見ながら、 「週刊誌モンキークロス?」 「はい!改めまして、週刊誌モンキークロスの七瀬と申します!我々は吹けば飛ぶような子会社も子会社で、他の報道陣が見向きもしないような小さな事件から、世間から忘れ去られた未解決事件なんかを独自に追って記事にしてます。」 「大事件なんかはウチで追わなくても、金儲け目当ての他のメディアがいくらでも追うだろうさ。けど、他人から見て小さかろうが過去だろうが、それを

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   92話

    肩を掴まれたかすみは、自ずと弥一の顔を見つめる。 弥一も一心にその目を見つめ返すと、 「もう知ってると思うけど、俺には当時、結婚を考えるほど好きだった人がいた。なのに、家族全員から反対されるわ、それに加えて会ったことのない人との結婚を強制されるわで、最初はあなたを、あそこでの生活全てを俺は疎んじてた。」 当時を思い出したのだろう。罪悪感からか、はたまた苦い記憶からか、視線を下げようとするかすみに、 「ねえ、聞いて?」と、弥一は再度自分に注意を向けさせる。 眉根を下げ、揺れる瞳で自分を見つめるかすみに、 「けど、初めてあの家に帰った日から、かすみさんの作るご飯に、あなたの俺に対しての配慮に、徐々に俺の気持ちは変わっていった。あなたと生活を共にすればするほど、あなたという人物を知りたくなった。ただ、出会いが出会いだっただけに、変なプライドもあって、今さら態度を180度変えることなんてできなくて、その結果かすみさんとの距離は一向に縮まらないまま、あなたは突然姿を消した。」 弥一は唇を噛むと、 「正直言ってかなりショックだったよ。自分のことを棚上げして、俺に何の一言もなく出て行ったあなただけを悪者扱いして責めたりもした。けど、日が経てば経つほど、怒りとか悲しみとかそんなことよりただただー」 弥一はそこで一旦言葉を切ってから、 「あなたに会いたくて仕方がなかった。」 そう言われたかすみは、何と返したら良いのかわからず、瞳を揺らし、二度三度とまばたきをした。 「そんな俺が今日、あなたの姿を見つけた時どんな気持ちだったかわかる?」 弥一は今にも泣きそうになりながら、 「めちゃくちゃ嬉しかったんだよ?」 その弥一の顔に、かすみの胸が締め付けられる。 「歩道を渡るかすみさんの後ろ姿を見つけた時、それがあなただと確信した瞬間、たまらない気持ちになった。それなのに、あなたときたら俺の姿を見るなり逃げるんだもん。さすがにイラっときた。」 そう弥一は唇を尖らせたが、 「まあ、すぐに捕まえたけどね?」 そう言って少し笑った。 胸がいっぱいいっぱいなかすみは、「すみ、ません。」とだけ謝る。 「何度謝らないでって頼んでもダメみたいだね。」 「すみません。」弥一は少し間を置くと、 「会いに来ない方がよかった?」

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   91話

    電話を切った弥一はすぐさまかすみのほうに振り返ると、 「今の通話聞こえてた?」 かすみは申し訳なさそうに眉を下げ、 「すみません、所々聞こえてきていました。」 弥一はかすみにツカツカと歩み寄ると、 「例えばどの辺が?」 「え、あ。えと、電話のお相手が御子柴さんのお父さんだった、とか。あとは、御子柴さんが大事な用事があって帰って来られないのを残念がっていたのとかー」 "セーフ!!!" 一番聞かれたくない部分は聞かれてなかったみたいだと心底安心する弥一に、かすみが唐突に、 「御子柴さん、今日はお会いできて嬉しかったです。それから、罪悪感から御子柴さんを避けるような真似をしてしまっていたことは、本当に申し訳ありませんでした。」 そう言ってまた、彼女は頭を下げる。 弥一はまたしても謝られたことと、なぜか急に別れの前のやり取りみたいになっているこの状況に、 「もう謝らないでってば、お願いだから!それと、あれ?俺たちこれからかすみさんの行きたかった喫茶店に行くんじゃなかったっけ?」 かすみは驚いて頭を上げると、 「あれ?でも先程の電話で、御子柴さんはこれから大事な用事があるって仰ってませんでした?確かに、そう聞こえたと思ったのですが?」 「うん、言ったよ。だから、これから喫茶店に行くんだよね?」 かすみはしばし静止すると、 「あの、まさか御子柴さんのいう大事な用事って、私と喫茶店に行くことですか?」 信じられない、という表情のかすみに、弥一は当然というように、 「そうだよ?え、何で?」 久々に帰ってきたご両親の誘いを断ってまで、自分と一緒になんてことない喫茶店に行くことを大事な用事と捉えている弥一に、かすみは、 「喫茶店ならいつでも行けます。けど、御子柴さんのご両親って、海外に行ってらしててなかなかお会いできないんですよね?それなら、ご両親を優先されたほうがいいんじゃないですか?」 そう言われた弥一は、何も言い返さずにただかすみの顔をじっと見つめる。 そして、その視線にかすみがたじろいだのを見て取ると、 「両親には明日会いに行くつもりだよ。それと、確かに喫茶店にはいつでも行けるかもしれない。けど、かすみさんとは今日を逃したらいつ行けるって言うの?」 たった一週間ほど離れただけだっ

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   90話

    弥一は深くため息を吐いた後、 「ごめん、ちょっと待ってて。」 そう言ってかすみに断りを入れると電話に出る。 と、電話に出た直後、 「弥一〜!!!僕のsweet boy♡♡♡」 相手の音量を考えない声量に、弥一は思わず携帯電話から耳を離した。 次に、相手は電話ではなくビデオ通話に切り替えたらしく、弥一にもビデオ通話にするよう要求する。 それに対し弥一は「出先だから無理だよ。」と断ったが、相手のほうはそれでもビデオ通話を続けたいらしく、仕方なしに弥一は自分のカメラは切ったまま、さらには携帯電話のボリュームを下げるなどして対応にあたった。 それから、弥一は苦々しい顔を浮かべると、 「で、一体何の用なの、父さん?」 まさかの人物に、かすみは思わずその目を見開いて弥一の顔を見つめた。 迷惑そうにしている弥一の様子から、よっぽど面倒臭い相手なのだろうかと思っていたが、まさかのお父さんだったとは。 咲希から、二人の両親は仕事の都合で揃ってA国に行っていると聞いただけで、かすみは二人の両親には会ったことがなかった。 かすみは自分の姿が映らないよう、カメラの死角へと回るのだった。 さて。そんな弥一の不満気な物言いに、画面に映る弥一の父親であるジョンは、 「ひどいよ、弥一。久々に巴(ともえ)と一緒に日本に帰ってこられたから、真っ先に息子に知らせてあげようと思ってウキウキで電話したってのに。僕の心は今酷く傷つけられた。これはもう、愛する息子の顔を見ないと修復できないよ!」 弥一はそんな父親の訴えを無視して、 「え、二人とも日本に帰ってきたの?いつの間に・・・」 ジョンは嬉しそうに、 「あ、さてはマミーとパピーに会いたくなったんだね、弥一?僕もハニーも君に会いたくてたまらなかったよ〜。これこそ相思相愛ってやつだね!感激だなあ!」 弥一は無意識に寄ってしまう眉間のしわを指で揉み解しながら、 「悪いけど今大事な用事の最中なんだ。今日は会いには行けないけど、明日必ずそっちに顔を出すから。それでいいでしょ?」 「えぇ〜。弥一が来ると思って君の大好きな天ぷらを揚げたんだよ?早苗さんがわざわざ来てくれて腕を振るってくれたってのに、帰ってきてくれないの?僕ハートブレイクで倒れちゃいそうだよ。」 いかにも悲しそうな

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   89話

    弥一の顔が暗くなったことにかすみは心配になって、 「御子柴さん?」 弥一はかすみの目を真っ直ぐに見つめると、 「ごめん、最近過去の自分に腹が立ったり、悔やむことばっかりで。日々、逃した魚の大きさに打ちのめされてるよ。」 前に、咲希からの話で、弥一が想いを寄せる女性と破局したことを聞いていたかすみは、そのことを思い出して言っているんだなと思い、彼の胸の痛みに同調した。 そんかかすみはしばし黙って弥一の目を見つめ返していたが、 「御子柴さん、お腹空いてますか?」 そう、唐突に切り出す。 ”もしかして、今から何か作ってくれるのか?” 久々に彼女の手料理が食べられるのかと期待した弥一が顔を綻ばせると、 「この近くに思い出の喫茶店があるんです。今日はそこに行こうと思って、だからこっちに来たんですけど。」 期待が外れた弥一は、「ああ、そうだったんだ。」と、少し落ち込んだものの、かすみから食事に誘われた、ということに気づくと、すぐさま顔色が明るくなった。 それから、「もしかして、それが用事ってやつ?」 「え?」と、驚くかすみに、 「ル・ボヌールに行ったとき言われたんだ。かすみさんがいないかと尋ねたら、用事があるから帰ったと言われて。」 「行ったんですか、パーティーに。じゃあ、何で今ここに?」 「パーティーにははじめ、参加する気はなかったんだ。今日俺のほうでも、新商品の展示会があって、そっちを優先させたから。けど、その展示会で、ある人から・・・円城寺愛蘭さんからそのパーティーのスッタフとしてかすみさんが参加してるって聞いて。それで、お店に行ったら加島真琴さんがかすみさんが行った方向教えてくれて、なんやかんやあって、今ここにいるって感じかな。」 かすみは口をポカンと開け、 「二人に、会ったんですか?」 「あ、うん。ただ、初めて会ったのは先週なんだけどね。お二人が経営されているケーキ屋さんを尋ねたんだ。」 "あなたにケーキを食べさせたくて" だが、弥一はその言葉を飲み込むと、 「お二人に会うのはその時が初めてで、今日が二度目だったんだ。」"まあ、それよりも前から、二人には探偵を使って調べられたみたいだけど"とも、言わなかった。 「そう、だったんですね。私の仲の良い友人たちと御子柴さんが、まさ

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   22話

    弥一は彼女が座ったのを確認すると、自身も席に戻り座った。 そして、いつも通りその手を行儀良く合わせると、「いただきます。」と、言った。 それなのに、なぜか弥一は料理に手をつけようとしない。 彼に出した鯛茶漬けは、いつも出すものと寸分違わぬものだった。まあ、少々味や盛り付けの違いはあるかもしれない。とはいえ、あくまでも"少々"だ。そうなはずである。 何が彼の気に触ったのだろう、とかすみは弥一に出した料理の粗探しをする。しかし、何がダメなのかがさっぱりわからなかった。 おずおずと視線を上げたところで、それが弥一の視線とぶつかった。 弥一は、かすみのそのハの字になった眉に内

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   21話

    今度は弥一が慌てる番だった。 早苗に香水臭い上着を着ていることで冷たい目を向けられるのを避ける為に脱いだ上着だったが、脱いどいて正解だったと思った。 と、言うのもー かすみに他の女性の存在を気取られるのは避けたい、とそう思ったからだった。 たが、なぜそう思うのかは自分でもわからなかった。 きっと、早苗のような視線を彼女にも向けられるとなったら癪に障るからだろうと、そう思うことにした。 なので彼は頭をフル回転させると、「お酒のせいで身体が熱くなったんだ。だから脱いだ。」と、最もらしい意見を述べる。 かすみは「そうだったんですね。」と頷くと、「接待お疲れさまでした。いつ

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   18話

    そうやって突如始まった二人の生活は、順風満帆とは到底いかないまでも、かすみの行き届いた配慮のおかげで、割りかしスムーズに過ぎて行った。 彼女は弥一と顔を合わせることがないよう徹底していた。 最初は失礼がないよう、笑顔をモットーに丁寧に接することで少しでもこの生活が穏やかにいけばと思っていた。 しかし、初めて会ったときも、二度目に会った時も、彼の自身に対する拒絶反応はすさまじく、結局自分と会わないようにしてあげることが一番の解決策なのだと悟ったからだった。 そこに早苗が戻ってきて、二人の仲介役を買って出てくれたことで、さらに生活は安定していった。 食事はかすみが作り、出来上が

  • 君に触れたい〜逃した未来は大きかった〜   19話

    「おっ、かぼちゃだ!俺かぼちゃのサラダ好きなんだよね。マヨネーズとチーズと黒胡椒たっぷりのやつ。前作ってくれたでしょ?あれまた食べたいな。」 そう言ってから、「また作ってくれる?」と、かすみを見た。 かすみは、弥一が不快にならないよう、目が合う前に視線を逸らし、さらに俯くことで自身の横髪で顔が隠れるようにすると、「もちろんです。早速今夜の晩御飯にお作りしますね。」と、丁寧に答える。 少しの間、そのかすみの横髪をながめていた弥一だったが、顔を正面に向き直すと、 「これキッチンに運ぶの?」 「ああ、はい。そうですね。」 「ん。」 そう言って、弥一は少し立ち上がると、次

더보기
좋은 소설을 무료로 찾아 읽어보세요
GoodNovel 앱에서 수많은 인기 소설을 무료로 즐기세요! 마음에 드는 작품을 다운로드하고, 언제 어디서나 편하게 읽을 수 있습니다
앱에서 작품을 무료로 읽어보세요
앱에서 읽으려면 QR 코드를 스캔하세요.
DMCA.com Protection Status