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第4話

Auteur: 水央
保護者会の日、母はわざわざ新調したシフォンブラウスを着て学校に来た。

シワ一つないように綺麗にアイロンがけされたその服を着て、教室に入ってくるなり、母は私に向かって優しく微笑みかけてくれた。

だが突然、教室の入り口に現れた優奈の母親が、階全体に響き渡るような金切り声を上げた。

「お宅の清歌さん、うちの優奈の彼氏に毎日付きまとって、泥棒猫みたいな真似してるの、ご存知かしら?」

教室にいた保護者全員の視線が、最後列に座る母へと一斉に突き刺さる。

母は立ち上がり、血の気の引いた顔で聞き返した。

「……え?何を仰って……」

優奈の母親はさらに声を張り上げる。

「娘さんに聞いてみればいいじゃない?稔くんはうちの優奈と付き合ってるのに、お宅の娘が四六時中追い回してるのよ。本当に非常識にもほどがあるでしょ!

母親なら、少しはしつけたらどうなの!」

その隣に立っていた稔の母親も、呆れたようにため息をついて鼻で笑う。

「自分の身の程も弁えないで……娘さんをちゃんとしつけてくださいな。妙な噂を立てられて、うちの子の将来に傷がついたら困りますから」

母の唇が小刻みに震え、私を振り返って見つめた。

その目には、耐え難い羞恥心と、これが嘘だと言ってほしいという懇願の色が浮かんでいた。

そして全身を震わせながら、稔へと助けを求めるような視線を向けた。

母は以前、私の家までわざわざ花を届けに来てくれた彼に、手作りのおにぎりをこっそり渡し、「清歌をよろしくね」と頼んだことがあった。あの時の優しかった彼なら、何か言ってくれると信じていたのだろう。

だが、稔はこちらを冷ややかな目で一瞥しただけで、すぐに苛立ったように視線を逸らすと、そのまま背を向けて立ち去った。

その瞬間、母の中で何かが音を立てて崩れ落ちるのが、私にもはっきりと聞こえた気がした。

彼女は顔がさらに青ざめ、めまいを起こしたようにグラリと体を揺らすと、そのまま崩れ落ちた。

「お母さん!」

救急車が母を病院へと運んでいく。

医師によれば、精神的ショックによる血圧の急激な変動でめまいと失神を起こしたとのことで、そのまま入院して経過観察することになった。

意識を取り戻した母は、ベッドの上で背中を震わせながら泣きじゃくった。

「清歌……うちにお金も後ろ盾もないことくらい、あなたもわかってるでしょう……もうこれ以上、人様に後ろ指を差されるようなことだけは、させないで……」

……

母が退院した後、私は一度学校へと戻った。

そして、担任の松田先生のいる職員室のドアを叩いた。

「先生、私……転校します」

先生は私を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。

「鴻上、本当にそれでいいのか?」

「はい。決心しました」

長い沈黙の後、先生はゆっくりと頷いた。

「……分かった。だがな、鴻上……」

先生は私の目をまっすぐに見据える。

「T大の合格通知書、絶対に見せてくれよ」

私は力強く頷いた。

「必ず、お見せします」

学校を去る前、私は録音データが入ったUSBメモリと一通の手紙を、咲に渡した。

手紙にはすべての真実を書き記し、然るべき時が来たら、このUSBメモリを稔に渡してほしいと頼んでおいた。

泥水をかけられ、ひどい落書きをされた制服のブレザーを脱ぎ捨てる。

最後に、私は自分の机の中に、一枚のメモを残した。

【あなたたちの望み通り、消えてあげる】

すべてを片付けた後、私と母は10年住み慣れた古いアパートからひっそりと引っ越した。

噂好きの同級生たちが嗅ぎ回りに来た時のために、母は大家さんにだけ「娘が亡くなったので、実家に帰ります」と嘘を告げてアパートを引き払った。

学校ではきっと、一人の生徒がいじめと悪評に耐えかねて命を絶ったという噂だけが一人歩きするだろう。

惨めで卑屈だった鴻上清歌は、この場所で「死んだ」ことにしてしまえばいい。

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