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ヒミツ②

Auteur: 緋村燐
last update Dernière mise à jour: 2025-06-26 17:31:33

「日高くんは何を秘密にして欲しいの? 不良だってこと?」

 お互いに秘密にして欲しい事があるなら、それを交換条件にすれば良い。

 あたしのメイク好きを秘密にする代わりに、日高くんの知られたく無い事も秘密にする。

 だから日高くんが秘密にしたい事もちゃんと把握しておきたい。

「まあ、そうなんだけどな……。より具体的に言うと、中学の頃の俺が火燕(かえん)って言う暴走族の総長だったって事を黙っててくれ」

「……は?」

「だから、火燕の元総長だってのを黙っててくれっつってんだよ」

 信じられなくて聞き返したら、同じ言葉が返って来た。

 ただの不良じゃ無くて?

「暴走族の総長?」

「ああ」

 更に確認の様に聞くと、肯定の返事。

 聞き間違いじゃ無いのか。

 ただの不良じゃ無くて暴走族。

 しかも中学生で総長とか。

 火燕って名前は聞いた事がない。

 まあ、暴走族だとか自分には関係無いと思っていたから気にした事も無いんだけど。

 でも聞いたことが無いからって嘘だとも思えない。

 秘密にして欲しいっていうのに、わざわざ嘘をつく必要性を感じない。

 何より、さっきはかなりケンカ慣れしている様に見えた。

「……うん、分かった。とりあえずそれを黙ってていればいいのね」

「ああ」

 話がついてホッと安堵する日高くん。

 そんな彼にあたしは続けて聞いた。

「じゃあ、どうして地味な格好してるの?」

「……え?」

 実はあたしにとってはこっちの方が重要だった。

「火燕なんて聞いたことないくらいだから、この辺のグループじゃ無いんでしょう? バレないためにわざわざ離れた高校に入学したんじゃ無いの? それなら別に地味な格好までしなくていいんじゃ無いの?」

 予測を含めて立て続けに聞く。

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