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第 264 話

Author: 一笠
5日後は大晦日。輝は北都へ戻ったが、聖天は相変わらず凛の傍にいた。

凛は一日中眠り続け、目を覚ますと、病室には薄暗い明かりが灯っているだけで、窓の外は深い夜だった。

急に不安に襲われ、凛は「霧島さん......」と何度か呼んだ。

聖天ではなく、二人の黒服の男が現れた。

凛の表情が曇った。「あなたたちは誰?」

「夏目さん、恐れることはありません。私たちは雪様に頼まれて、あなたを病院から連れ出すために来ました」

男の一人が車椅子を押しながら言った。「時間がないので、すぐに一緒に出発しましょう」

「霧島さんは?」凛は思わず尋ねた。

「雪様が聖天様を引き止めていますが、いつまで持ちこたえられるかわかり
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