息子から無理やり「飴」を取り上げるなんて、そんなことできるわけない。いろいろ考えた末、雪はふっと笑った。まあいいか。息子が幸せなら、それが一番だ。それに、凛もそんなに悪い子には見えないし。嫁としては、まあまあ合格点かな。......その夜、凛はずっと笑顔だった。お風呂から上がり、頭もスッキリした凛は、ベッドに座ってじっくりと指輪を眺めた。光がダイヤモンドに反射し、写真で見るよりもずっとキラキラと輝いている。「綺麗でしょ?ねじれたアームのデザインは、『永遠の愛』を意味しているんだわ」木瀬夫人がペアリングについて説明してくれた言葉を思い出した。「永遠の愛......」凛は何度も
驚きすぎて、凛の声が思わず大きくなり、センサーライトが再び点灯した。優しい笑みを浮かべた切れ長の瞳が、まるで言葉を話すかのように、全てを物語っていた。凛は完全に呆然としてしまった。あの時、雪に計画を手伝ってもらって姿を消したのは、全てを完璧に隠し、海外で安心して治療と療養に専念するためだった。しかし、その全ては聖天の手のひらの上で起こっていたことなのだ。自分の気持ちを汲み取って、望み通りに、自ら自分を送り出したのだ。生死の境を彷徨う自分に指輪をはめ、生涯の伴侶と決めた......そう思うと、さっき自分が言った言葉は、あまりにも傲慢だったと気づいた。自分の好きという気持ちは、聖天の
凛は一瞬、何が起きたのか理解できず、「あなたは......」「待っていた」聖天は凛に近づき、抑えた低い声で、まるで沸き立つ感情を抑え込むように言った。聖天が目の前に来ると、凛は反射的に一歩後退りした。そして、自然と小声になりながら言った。「待っていたなら、どうして会場を出てしまったんですか?一緒に......」「祝賀会会場は人が多すぎた」言葉が終わると同時に、人感センサーライトが消えた。そして、強烈なオーラとアルコールの香りが、凛を包み込んだ。暗闇の中、聖天は凛を強く抱き寄せ、壁に押し付けた。驚きの声が漏れる間もなく、唇を塞がれた。凛は驚きで両手を聖天の胸に当てた。シャツ越し
「先日の夜、翔さんがあなたと連絡が取れなくなって、霧島さんに助けを求めたそうなんですが、何かあったんですか?」あの夜の後、聖天は急遽出張に出かけたんだ。しかも、わざわざ映画の撮影現場にも顔を出した。凛は直感的に、あの夜のできごとはただのことではないと感じていた。翠は眉をひそめ、少し困った顔をした。「聖天は何も説明してくれなかったのですか?」「住所を間違えただけだって言ってたけど、そんなはずないと思います」凛は確信に満ちた口調で言い、なおもためらう翠に真剣な表情で付け加えた。「きっと霧島さんは翠さんに、何も言わないようにって口止めしたんでしょうね」でも、これは彼一人だけで解決できる問
「凛さんの噂はたくさん聞いてきました。いつかお会いしたいと思っていました」編集長は満面の笑みで言った。「初めて取材させていただいた時、凛さんはスタジオを立ち上げたばかりでしたね。それから半年も経たないうちに、目覚ましい成果を上げられました。いつか、凛さんの特集を組ませていただけたら嬉しいです。成功の秘訣を伺って、多くの働く女性に勇気を与えていただけたらと思っています......」「とんでもないです」凛は静かに口を開いた。「成功の秘訣なんてありません。ただの幸運です。だから、翠さんの取材はお断りしたんです。自信と実力がついた時、喜んで取材をお受けします。その時は、翠さん、よろしくお願い
30分後。聖天が一階に戻ると、凛が慌てて駆け寄ってきた。「あの人って、『Q』組織の人間ですか?」「今後は、あまりあの人に近づかない方がいい」聖天は低い声で警告し、その口調にはわずかながら苛立ちが滲んでいた。「やっぱり、私の勘違いじゃなかったのですね」凛は目を細めた。「優奈の背後にいる人が、ようやく尻尾を出してきました。これで......」「夏目さん!」聖天は怒鳴ると、凛の手首を強く掴んだ。「俺の言うことを聞き流すな」凛は、激しい感情が渦巻く聖天の目を見つめた。「霧島さん、私を子供扱いしないでください。あなたに四六時中守ってもらう必要なんてないです。おじい様の死の真相は、自分で