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第 778 話

作者: 一笠
「先日の夜、翔さんがあなたと連絡が取れなくなって、霧島さんに助けを求めたそうなんですが、何かあったんですか?」

あの夜の後、聖天は急遽出張に出かけたんだ。しかも、わざわざ映画の撮影現場にも顔を出した。

凛は直感的に、あの夜のできごとはただのことではないと感じていた。

翠は眉をひそめ、少し困った顔をした。「聖天は何も説明してくれなかったのですか?」

「住所を間違えただけだって言ってたけど、そんなはずないと思います」

凛は確信に満ちた口調で言い、なおもためらう翠に真剣な表情で付け加えた。「きっと霧島さんは翠さんに、何も言わないようにって口止めしたんでしょうね」

でも、これは彼一人だけで解決できる問
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