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第3話

Author: あめちゃん大好き
夜、静香がカーテンを閉めようとしたとき、ふと下の庭に二つの影が見えた。

その手がぴたりと止まった。

それは他ではなく、颯真と静乃だった。

二人は笑い合いながら話しており、突然、静乃が頭を傾けたかと思うと、二人はそのまま、抱き合っていた。

静香はすぐにスマホを取り出し、その場面を写真に収めた。

そして颯真にその写真を送りつけ、こう書き添えた。

【霍見さん、ご自重ください。ここは白川家だよ】

実は二人がいた場所は邸宅の北側で、家中で北向きの部屋は彼女の部屋だけ。執事も使用人も全員南向きの部屋に住んでいるため、見えるのは静香だけだった。

下にいた颯真は、スマホを確認したあと、すぐに彼女の部屋の方向を見上げてきた。

視線が交わり、颯真の目には、ばつの悪さと怒りが浮かんでいた。

静香はすぐにカーテンを閉めた。

その後、スマホを開き、颯真に関するすべての記録――写真、トーク履歴、メモ帳までも、全部跡形もなく削除した。

そして部屋の中にある、颯真が贈ってくれたものをすべて焼いた。

火に包まれる二人の写真を見つめながら、心がふっと軽くなるのを感じた。彼女は、安堵の笑みを浮かべた。

深夜。静香は突然目を覚まされた。

逞しい男の身体が彼女の上に覆いかぶさり、片手は手首を掴み、もう片方の手で口を塞いでいる。

彼女は目を見開き、激しく抵抗した。

すぐ目の前に颯真の顔――彼は耳元に唇を寄せ、優しく囁いた。

「静香ちゃん、いい子にして。叫ばなければ、すぐに手を離すよ」

静香が抵抗をやめ、少し落ち着いたと見て、颯真は手を離した。

静香は怒りを込めて睨みつけた。

「頭おかしいの!?ここ私の家なのよ、お父さんはすぐ上の階にいるの!」

颯真は指先を彼女の頬に這わせ、首筋、鎖骨へと下ろしていった。

そして話を逸らすように聞いた。

「静香ちゃん、嫉妬してるの?」

静香は顔をそらした。

「してない」

颯真は笑いながら、彼女の顔をそっと手で戻した。

「枕の下にあった俺たちの写真、全部なくなったけど?それで嫉妬してないなんて、嘘でしょ?

妹さんに謝りに行っただけだよ。すべては君のためさ。職場で気まずくならないようにと思ったからね」

仕事の話になると、静香は思わず問い詰めた。

「なんで勝手に彼女を会社に入れたの?」

颯真の目にまだ笑みは残っていたが、その笑みは氷のように冷たかった。

次に発した言葉には、怒気が混じっていた。

「静香、いい加減にしろ。『ご自重ください』って?じゃあ、今夜はその『自重』ってやつ、しっかり見せてやる」

そう言い終えると、彼は激しく彼女の唇を奪った。狂おしく、貪るように、まるで彼女を食い尽くすような口づけだった。

静香は叫ぶこともできず、拳で彼の背中を叩き、足で蹴って抵抗した。

けれど、どれも意味を成さなかった。

心が引き裂かれるような屈辱だった。彼女は、まるで屠殺場に連れてこられた子羊のようだった。

そして、耐えきれずに涙が流れた。

呼吸ができなくなる寸前で、颯真はようやくその罰の意味を込めたキスを終わらせた。

その目が、濡れた彼女の瞳を見て、一瞬、悲しみに染まった。

「……ごめん、静香ちゃん、さっきは……俺、ちょっと我を忘れてた」

彼は慌てて彼女の涙を拭い、額にキスを落とした。

静香は力なく彼を押しのけ、かすれた声で言った。

「出て行って」

だが颯真は、逆に彼女を強く抱きしめてきた。

「嫌だ。君が望まないことはもうしないよ。ただ、こうして抱いているだけでいい。明日の朝一番で客室に戻るから」

その口調は一見優しいが、拒否を許さぬ圧があった。

そして彼はそっと補足した。

「大丈夫、誰にもバレないよ」

静香は、彼の性格を知っていた。これ以上拒めば、面倒なことになる。

彼女は黙り込んだ。

颯真は急に顔を上げ、辺りの匂いを嗅いだ。

「何の匂い?……もしかして、部屋で何か燃やした?」

「いらないものを、たくさん燃やしただけよ」

彼女は淡々と答えた。まるで何も感じていないように。

颯真は彼女の首に顔を埋め、熱い吐息を耳元に吹きかけながら言った。

「燃やしたならまた買えばいいさ、君に必要なものは全部、俺がまた揃えてやる」

ほどなくして、彼の呼吸は穏やかになり、眠りに落ちた。

だが静香は、眠れなかった。

やがて、彼が寝言を呟いた。

「……静乃、愛してるよ……」

その瞬間、静香は激しい衝撃を受けたかのように、目を見開いた。

涙が次から次へと、止めどなく溢れてきた。

泣かないって決めたのに。

もう分かっていたことじゃない?

泣くなんて、バカみたい。

そう自分に言い聞かせて、手で涙を拭おうとした。

しかし不思議なことに、拭っても拭っても、涙は止まらなかった。
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