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5.幻想と現実

last update Dernière mise à jour: 2025-10-14 20:33:21

重い頭を抱え、私はぼんやりとしながら、会社までの道を歩いていた。

昨日感じた世羅の温もりだけが肌に残っているような気がしたが、現実は甘くなく、陸からの耳を塞ぎたくなるような大音量の罵倒ですぐさま引き戻された。

「昨日はなんで俺が呼んだのに来なかったんだ!」

「ごめんなさい。体調が優れなくて休んでいたの」

「体調が優れないというのは、どの程度を言っている?動けないほど悪かったのか。そうじゃなかったら俺の言うことを優先するんだな」

陸は、私の心配をすることなく冷たく吐き捨てるように言った。この人にとって私はただの『モノ』でしかない。

(モノが壊れたり調子が悪かったりしたら叩くように、私も叩けば直るとでも思っているのだろうか―――)

陸の罵倒は、もう聞き慣れた。多少言葉は変えているが、一本調子で同じことしか言えない陸に対して嫌気がさして呆れていた。この男は、ただ自分の家系というバックにあるものに甘んじて、自分が偉いと勘違いしているだけに過ぎない。

しかし、そんな勘違い男が婚約者で、その婚約者に言い返すことも、何か結果で見返すことも出来ない自分自身にも嫌気がさしていた。

デスクで考え事をしていると、無意識に肘をつくと指が唇に当たる。唇に肌の感触を感じた時、私は昨夜の世羅とのひと時を思い出してい

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