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第8話

Author: リィワイ
ステージの上の女の子の歌声は、素人にしてはなかなか綺麗だった。

けれど、よほど緊張しているのか、所々で音が外れてしまっている。

彼女の熱を帯びた視線は、ずっと私の隣に向けられていた。

そう、彼女が言う「ずっと片思いしている本命の相手」とは、私の隣に座っているこの男――渉のことだったのだ。

渉は静かに、ただ彼女の歌声に耳を傾けているように見えた。

指輪をはめた手で、膝の上でトントンと軽くリズムを取っている。

やがて曲の終盤に差し掛かった時。

渉がふいに顔を向け、私を真っ直ぐに見つめてきた。

そして、まるで昨日の出来事の続きでも話すかのように、真剣な声でこう尋ねたのだ。

「今のアレンジ、あの二小節だけ音が違うよな。……お前もそう思うだろ?」

私は一瞬、息を呑んだ。

遅れて、ようやく思い出した。

――この曲だ。

彼がサークルのステージで、私に愛を告白してくれた時に歌った曲。

彼が私のために作った、オリジナルのラブソング。

あの時一度だけ歌って、その後音源化されることもなく、どこにも発表されなかった幻の曲。

だから私は、あの日のたった一度しか、この曲を聴いたこと
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    ステージの上の女の子の歌声は、素人にしてはなかなか綺麗だった。けれど、よほど緊張しているのか、所々で音が外れてしまっている。彼女の熱を帯びた視線は、ずっと私の隣に向けられていた。そう、彼女が言う「ずっと片思いしている本命の相手」とは、私の隣に座っているこの男――渉のことだったのだ。渉は静かに、ただ彼女の歌声に耳を傾けているように見えた。指輪をはめた手で、膝の上でトントンと軽くリズムを取っている。やがて曲の終盤に差し掛かった時。渉がふいに顔を向け、私を真っ直ぐに見つめてきた。そして、まるで昨日の出来事の続きでも話すかのように、真剣な声でこう尋ねたのだ。「今のアレンジ、あの二小節だけ音が違うよな。……お前もそう思うだろ?」私は一瞬、息を呑んだ。遅れて、ようやく思い出した。――この曲だ。彼がサークルのステージで、私に愛を告白してくれた時に歌った曲。彼が私のために作った、オリジナルのラブソング。あの時一度だけ歌って、その後音源化されることもなく、どこにも発表されなかった幻の曲。だから私は、あの日のたった一度しか、この曲を聴いたことがない。もし、あのロマンチックだった告白の記憶が私の中に強く刻み込まれていなければ。きっと、本当にこの曲が何だったかなんて、思い出せなかっただろう。渉は私をじっと見つめ、自嘲するように小さく笑った。「……分かってる。お前はもう、とっくに忘れてるよな」そう言い残し、彼は静かに立ち上がった。翻ったコートの裾が、私の視界をふわりと遮る。それが晴れた時、彼はもうステージの上に立っていた。ステージ上の女の子は、ガチガチに緊張して声も出せないようだった。彼女はマイクを両手でぎゅっと握りしめ、目を瞑って一気に想いをぶつけた。「渉さん、好きです!私より13歳も年上だとか、そんなの関係ありません!渉さんの心の中に、ずっと忘れられない人がいるって分かってても……それでもいいんです!初めて会った時から、私ずっと……っ」その必死な告白は、途中で唐突に断ち切られた。ステージに上がった渉が、彼女の手からマイクをすっと奪い取ったからだ。「……違う。今の曲、そんなアレンジじゃない」そう短く告げると、彼は丸椅子を引き寄せて腰を下ろす。マイクスタンド

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