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対価は身体で!?④

Auteur: 当麻月菜
last update Dernière mise à jour: 2025-10-17 22:09:25

「あ、そっか。肉体が無いから、足音はしないんだ」

 これが取引先の社屋にある鳥居をくぐった美亜の最初の感想だった。

 明かり一つないのに、しっかりと周囲が見えるのも、きっと肉体が無いからだろう。

 人は暗闇を恐れる。逆を言えば、暗いと感じなければ、さほど怖くは無い。夜の人気ひとけのない神社なんて、肝試しでしかないはずなのに、美亜はそこそこ冷静さを保って歩くことができている。

「……それにしても、禍体って何?」

 屋上の本殿に到着した美亜は首を傾げる。きっと読んで字のごとく、禍々しいものなののはずだ。

 名前からして出会いたくないものだが、それを想像しようとしても、あんな短い説明だけで、頭の中で形を描くことなんてできるわけがない。

「見ればわかるって言ってたけど、せめて物なのか人なのか動物なのか聞いておけばよかった。ぜんぜんわかんな……って──っ!!」

 ブツブツ呟いていた美亜は、境内の端っこにいた··を見つけて固まった。

「ギ……ギ……シネ、ニクイ……キエロ、コロス……ギギ、ギ……ユルサナイ、キエロ……クルシメ……ギギ……ギ」

 老若男女が入り混じった声で負のワードを紡いだそれは、おおよそ人とは呼べない生き物だった。

「……なに、これ」

 一言で言い表すならば肉の塊。もう少し言葉を付け足すと、たくさんの顔がくっ付いた禍々しい肉塊。

 憎悪を滾らせる男。悔し気に涙を流すお爺ちゃん。それから鬼女としか思えないロングヘアーの女性に、全てを諦めたような老婆。

 しかも顔と顔の隙間には片目だけとか、口だけとか、醜く歪んだ顔のパーツがドット柄のようにへばりついている。

 喜怒哀楽の怒哀だけをピックアップした顔達にも、当然口があって各々が好き勝手に呪詛を紡いでいる。

「ちょ……ま、まさか」

 ──これが禍体っていうやつなの!?

 無意識に呟いた途端、ギロっと幾つもの目が美亜に向いた。

「ひぃ……!」

 声にならない悲鳴を上げた美亜は、腰を抜かした。ガクガクと自分の意思とは無関係に、身体が震える。

「オマエ……ナカマニスル……オマエモ、ニクイ……コロス、クウ、タベル、ナカマダ、コロス、イッショ、オイデ、シネ、ナカマ、オナジ、クルシメ……オイデ」

 物騒なのかフレンドリーなのかよくわからない言葉を吐きながら、肉の塊はにょきっと足を出して、ゆっくりとこちらに向かってくる
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