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第1155話

Penulis: 夜月 アヤメ
若子はドアの前で立ち止まり、修が赤ん坊をあやす姿を見つめていた。

修はすぐに子どもを落ち着かせることができた。

泣き止んだ赤ん坊を見て、修はふっと柔らかな笑みを浮かべる。

「もうすぐ帰るから、うるさくしないよ。お母さんとゆっくりおやすみ」

そう言って、そっと赤ん坊をベッドに寝かせた......が、手を離した瞬間、再び赤ん坊が泣き出した。

修はあわててもう一度抱き上げ、優しくあやす。

「どうした?怖かったのかな?」

胸の中でしばらく揺らしていると、赤ん坊は少しずつ落ち着き、ついにはくすくすと笑い始めた。

「暁、もうおやすみの時間だよ」

そのとき、若子がそっと声をかける。

「修」

修はその声に我に返り、自分がどこまで踏み込んでいたのかに気づく。

「ごめん。泣き声が聞こえて、思わず......勝手に入っちゃって......渡すね」

自分でも理由はよく分からなかった。

ただ、あの泣き声を聞いた瞬間、心が締めつけられた。自然に体が動いていた。あやしたくて、抱きしめたくてたまらなかった。

まるで、それが自分の役目であるかのように。

修は静かに赤ん坊を若子へ差し出す。

若子はそれを受け取り、優しく抱きかかえた。

「......ありがとう。もう遅いから帰って。運転、気をつけて」

修は最後に、若子の腕に抱かれる赤ん坊をじっと見つめる。

別れがたい思いがこみ上げる。

だが、そのとき―

赤ん坊がまた泣き出した。

小さな手を必死に空中で振り回し、何かを掴もうとするように。口を大きく開けて、涙が次から次へとこぼれ落ちていく。

「暁......大丈夫、ママはここだよ。ね、泣かないで。ママがそばにいるから、怖くないよ」

若子はやさしく声をかけながら、子どもをベッドに寝かせ、そっとオムツを外した。

すると、濡れていた。

急いで新しいオムツを取り出し、手慣れた様子で取り替える。

オムツを替えれば泣き止むと思っていた。

けれど、暁は泣き続けていた。

若子は再び赤ん坊を抱き上げ、やさしくあやす。

「どうしたの、暁......どこか痛いの?」

修がそっと近づいてきた。

「お腹空いてるんじゃないか?」

「さっき授乳したばかりなの。普段は静かに寝てくれるのに、今日はどうしちゃったんだろう......」

「俺にもう一回、抱かせてもらってもいい
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Komen (2)
goodnovel comment avatar
barairose88
修、若子に対して誠実です。 千景だって救います。 以前とはまったく違いますね。 言葉の端々に若子を慮る気持ちに溢れています。 侑子への嫌悪感から、離脱も考えましたが… 修、そして若子と暁ちゃん、この心温まる展開に、まだ少し読み続けようかな〜と、本日も課金です。
goodnovel comment avatar
シマエナガlove
子供はわかってるんだよ 修が父親だって 離れたくないから泣く 若子が抱っこして泣くのは 母親と認識してないから ずっと子育てしてなかったから当たり前だし いずれ父親の元で育ってくね 若子は恋愛したい思ってるんだから 子供修に渡して 好きなだけいろんな男と恋愛したらいい 修が侑子とやった原因 若子にあるのに 西也と結婚して子供できてたら 修が他にいっても仕方ないのでは 真実語らず嘘ばっかり言ってたのは 全部スルーとかやり方汚い
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